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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟むでも、オレを見て困る理由がわからないよ……
ちら とリビングの方を見てみると電気はついたままで、ガラスを通してテーブルに座ったまま動かないお父さんの影が見える。
仕事と、育児と、家事と、ずっとそればっかりで……お父さんが自分の趣味を楽しんでいるところなんて見たことがないし、趣味が何かも知らない。だから、ちょっとでも力になれたらって思っていたんだけど、そう言うのはおせっかいで、本当はお父さんを困らせているだけなのかもしれないなって思ってしまう。
ぷくーと癖で頬を膨らませて見せるけど、残念ながらここにはほっぺをつついてくれる人はいなくて、仕方なく自分でぺちんと潰した。
「んんんー……」
いやいや、ダメダメ!オレのこれは被害妄想だ!
しっかりしろ!と頬を押さえる手に力を込めた。
お父さんは困ったような顔はするけど、正面切って「迷惑だ」と言ったわけじゃないし、銀花は可愛いけどオレは可愛くない なんて言ったこともない。
仁達に睨まれて、銀花にあっち行ってって言われて、お父さんと言い争いしちゃって、だからこんな暗い考えになっちゃってるんだって、そうなんだって無理矢理思い込ませて立ち上がった。
昨日の夜からいろいろあって、睡眠が足りてないからきっとよくない方向に考えが行っちゃうんだって自分に言い聞かせて、とりあえずもう寝ようって拳を突き上げる。
気合い入れてぐっすり寝たらちょっと気分も上がって、なんだか良くわからないままの銀花達の問題も解決するような気がしてくるから。
そうしたら、この悲しい気分もちょっと良くなってるはず……
「……とは言え、寝床がないんだけどさー」
潰したはずのほっぺたがまた膨れてしまうのは仕方がない。
お父さんに声をかけたらすぐに解決してくれることなんだろうけど、さっきまで言い争ってたせいかそう言うのはちょっと、オレの張らなくてもいい意地とかそう言うのが邪魔をする。
しかたなくウォークインクローゼット代わりにしている部屋に入って、きちんとハンガーに吊るされている服から少しでも厚手の服を選んで床に並べた。
「もういい!これでいい!大丈夫!一晩位ならこれで寝れるもん!」
幾ら綺麗に敷いても服は服なせいで真っ平にならずボコボコしていて、寝転ぶと体が痛くなりそうだったけど仕方ない。
もちろん掛布団とかもないから、やっぱり服を何枚もかけて包まった。色んな服に包まってもこもこになっていると寒くはないけど、なんだかΩの巣作りのようで……ちょっと気恥ずかしい気がするけど、仕方ない仕方ないって繰り返す。
自分の匂いと、銀花の匂いと、お父さんの匂いと、ごちゃまぜになった香りがふわふわふわふわ鼻の先を横切って、小さい頃は三人で川の字で寝てたのになってことを思い出しながら眠りについた。
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