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お可愛いΩ お可哀想なα
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しおりを挟む「銀花、いい加減に出てきなさい」
低い声はお父さんも苛立ってるんだなってわかって……取り持てないかと思ってもう一度銀花に「出ておいでよ」って声をかけるけど、やっぱりまた何かを投げつけられた。
「……壊すか」
「お父さんっ!」
慌てて止めるために縋りつくと、オレを見下ろすお父さんの目が複雑そうな色を浮かべる。
オレを見ようとして見れない、そんなふうに視線を逸らしてから気まずそうに言葉を詰まらせると、「食事にするから風呂に入ってきなさい」って言ってぷいと背中を向けてしまった。
全然事情がわからないままバタバタしてるど、久しぶりにやっと帰って来た日くらいはちょっとこっちを見て欲しいな と、思ったりもするんだけど結局何も言えなくて……
いつも通りの調子でいつも通りの格好で食卓に着くと、夕飯を並べようとした父さんがつるりと皿を取り落としそうになった。慌てて掴み直したから少し中身のシチューが零れてしまっただけで済んだけど、鍋から入れたばかりのシチューだから手に掛かれば火傷したかもしれない。
「あっ危ないよ!」
「あ……うん、大丈夫だから。拭いておくからその間に服を着てきなさい」
「へ?」
改めて風呂上がりの自分を見下ろしてみるけれど、別段どうって事のないぺったりとした凹凸のない体があるばかりだ。
もうちょっと筋肉とかあればカッコイイのかもしれないけど、直線的でちっとも面白みがない。
「でもパンツは履いてるよ?」
下着は洗面所の棚に片付けてあったからお風呂には入れたけど、服は部屋に片付けてある。銀花が立てこもっているから着替えの服がないんだけど、まぁ……普段から裸族だから問題はないんだよね。
「パン っ ~~~っ体を冷やすのは良くないから、服を着なさい!」
「ええー!でも今、部屋に入れないし……」
って言うと、お父さんはしかめっ面をしてから自分のカーディガンを脱いで肩にかけて来た。
「とりあえずそれを着ておきなさい。それより……仁達の前でもその格好なのか?」
「え?そうだよ、あいつらずっとここに居るんだもん」
あ、とか、う、とか、なんだかそんなことをごにょごにょと呟いてから、お父さんはがっくりと肩を落としてしまう。
人前でパンツ一枚って言うのが良くなかったのかな?
でも仁と義は一緒にお風呂にも入ってたくらいの仲だから、今更な話だし……
「あっ!この格好で外には出てないよ!」
「当たり前だ!」
「えっ!伸びたパンツは履かないようにしてるよ!」
「そうじゃなくて!」
カーディガンのボタンを上から下までしっかり止めながら、はぁ……と深い溜息を吐かれてしまうと……
「んー……ボクサータイプだからぽろりもないよ?」
オレにはもうそれくらいしか思い浮かばなくて……泣きそうな気分で言って見たけど、お父さんは更に泣きそうな顔をしている。
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