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かげらの子
落ち穂拾い的な 五センチ!
しおりを挟むゴソゴソとしずるとセキは二人で瀬能の部屋の片付けをしていた。
瀬能と言う男は、気付けばどこからともなく出所不明の資料を大量に持ち込む事があり、定期的にこうやって誰かが片付けないと部屋がごちゃごちゃととんでもない状態になってしまう。
ふと、しずるがデジタルカメラを取り上げて思い出した事を口にした。
「そう言えば、なんで湖の底の骨がアルファとオメガの物だって分かったんですか?」
「ああ、それ?」
「それっぽい見た目とかならわかるんですけど……骨だけで分かるものなんですか?」
「うん、分かるよ」
そう言うと瀬能はタブレットを弄って一つの古い新聞の記事をしずるに見せて寄越した。
「出てきた骨の量が量だったから小さいけど記事になったんだよ」
そう言うとタブレットをしずるに手渡して、自分は机上の冊子を手に取る。
「まず、アルファは大柄、オメガは小柄な傾向があるよ、それからオメガだと判断できるのは骨盤の形だね。女型オメガの人はあまり違いはないんだけど、男型オメガの場合は普通の男性よりも広く浅い横長型なんだよ、これは妊娠が関係するんだけどね」
示したページには図解で骨盤の形の違いが説明されており、瀬能の言葉だけでなく目で見て理解できるので分かりやすい。
「セキくんがトイレの窓に刺さったのもこれのせいだよ」
「お前何やってんだよ」
「えー……若気の至り?」
明後日の方を向いてえへへ と笑って見せる。
「んじゃあアルファのは……」
「見つかった頭蓋骨に残っていた歯がね、薄かったから」
そんなに見て分かる物なのか……と瀬能の言葉に相槌を打ちながらしずるは記事を読み進める。すると「αの歯の幾つかは生前や死後に引き抜かれた痕跡があり」との一文を見つけて背筋を震わせた。
「アルファの歯は噛みつきやすいように鋭いんだよ。健康な人間の皮膚って言うのは意外と弾力があって、歯型が付く程噛むのは大変でね、だからそこを補う為の進化だろうね」
「……この見つかったアルファ達の歯って、どうして引き抜かれていたんでしょうか……」
「さぁー?歯って食事をする、つまり生きて行く為に必要な物で、神聖な物とする文化も多いからね。象牙とか狼の牙とか、お守りにしたりするでしょ?」
ぴ と口元を指差され、しずるは反射的に口元を覆って後ずさる。
そして日記の中に「お守り」と言う言葉が出て来た事を思い出し、続けてそれに触れた際に「何かに噛み千切られたかのような感覚」がしたとあったのを思い出して血の気が下がる。
宇賀が腰につけていた巾着の中身は推測するしかないが……もしそうなら と、しずるはざわざわとする肌を宥めるように腕を強く擦った。
「 って事は、骨の方がアルファとオメガの区別がつきやすいって事ですか?」
「一概にそうとは言えないけど、まぁ男型オメガの人は……」
そう言うと瀬能はなんの躊躇もない動きでセキのシャツを捲り上げた。
「ぎゃっ!」
「臍の位置がくびれより下にある」
「何するんですか!」
「男の臍はくびれより上にある」
そう言ってしずるの方に手を伸ばしたが一瞬早くしずるは飛び退いており、瀬能の手は空を切る。すかっと手応えのなかった手を残念そうに眺めて、瀬能は何事もないように続けた。
「これも妊娠の関係だよ」
「えっと あの、オメガはどこに赤ちゃんが出来るんですか?」
ちょっと顔を赤くしてそうセキが尋ねる。
「子宮の対として男型オメガに使われるのは胎宮って言葉なんだけど、胎宮は前立腺と精嚢の間辺りにあるよ」
「随分……窮屈じゃないですか?」
「だから、十月十日保てないんだよ、アルファとオメガは未熟児で生まれてくる理由の一つだと言われているね。位置的には浅い箇所だから、相手のナニが五センチあれば妊娠可能だよ」
「「五センチ」」
思わず二人が親指と人差し指でサイズを確認するのを微笑ましく見ながら、瀬能はぱたんと冊子を閉じる。
「今は昔よりは助かるようになったけど、昔なんかは産まれてすぐ死ぬ子達が多くてね、アルファとオメガの数が少ないのはそれが原因じゃないかと言われてるよ。近年の医療の進歩でだいぶ救えるようになったけど、無性やベータに比べたら死亡率が高いのは否めないねぇ、特に男型オメガなんて元々産めるように出来ていない体に取ってつけたような機能だから、母体自体もあまりねぇ……」
と、説明しているのにセキとしずるはお互いの作った五センチに視線を落としたまま、聞いていないように見える。
「大事な話してるけど聞いてるー?ねー?聞いてるー?」
瀬能はそう声を掛けたけれど、二人は聞いてなさそうだった。
END.
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