550 / 801
かげらの子
落ち穂拾い的な 偶然
しおりを挟む「痣が遺伝するってあるんですか?」
騒がしい食堂の隅に陣取った瀬能としずると、タイミングの合ったセキが日替わり定食を突いていた。
「良くあるじゃないですか、この痣は〇〇家の人間の証拠だ!とか赤ん坊の頃に誘拐された××には母親と同じ痣が……とか」
「うんうん、あるねぇ推理モノとかに多いよね、あとは怪談話」
そう言われて、自分で話を振った筈なのにしずるは顔を青くして俯く。
「うーん……どうだろうか?ない訳じゃないだろうけど、少なくとも僕はないと思ってるよ。どうしたの?突然」
「や、この間の……産まれた子供に同じ痣がって……」
「あー……遺伝する病気でもなさそうだし、不思議だよねー」
そう言って瀬能は味噌汁を啜る。
「軽くないですか?」
「軽いも何も、分からない物をずっと考えていても埒が明かないよ」
「そう言うもんですか」
「謎が解けるに越した事はないと思うけどね」
何かすっきりとした返事をして貰えるものかと思っていたしずるは肩透かしを食らった気分で魚を突いた。
「顔に痣 って、消えるんですかね?」
「消そうと思えば美容整形も化粧も日々進化しているんだから問題ないと思うよ」
「顔に痣とか傷があると、ちょっと視線に困るよね」
最後に残ったトマトと格闘していたセキがそう話に入ってくる。
「分かるー!クソジジィの連れにいてさぁ、どうしても目が行っちゃうし、でもあんまじろじろ見るのは行儀が悪いし失礼だしな」
「うちも母親の恋人がそうだった!昔やんちゃした痕だよって言ってケラケラしてたけど、やっぱねぇ……」
そう呻きながらセキはしずるの皿にぽい!とトマトを放り込んだ。
「知ってるかい?帽子を被っていたり絆創膏を貼ったりすると、そっちに気が行って顔の印象が薄まるって話」
トマトをセキの皿に戻しつつ、しずるは「?」と首を傾げた。
「強盗とかする時に、そう言ったものがあると、似顔絵が作りにくくなるそうだよ」
「ああ、でも確かに顔を思い出すより傷の印象が強くてそっち思い出すかも」
「うーん……言われてみれば……」
そう言ってセキはトマトを再びしずるに譲る。
「「左の目の上のさぁ」」
そう言葉が被ってしずるとセキは目を瞬かせ、お互いにきょとんと顔を見た。
指先で、こんな風な と互いに示してみて傷跡の一致に「おおー」と面白そうに声を上げる。
「鈴木さんって人だったんだけど」
「あ、じゃあ違うや、田中って人だったもん」
流石にそこまで一致はしないかぁとお互いに笑い合う二人の間で行き来するトマトを取り上げ、瀬能はぱくりと頬張る。
「食べ物で遊ぶんじゃないよ。罰として後で二人とも部屋に来なさい、ちょうど片付けて貰わなきゃいけなくなってたんだよ」
珍しく厳しい表情でそう言うと、瀬能はトレーを持って立ち上がった。
END.
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。


組長と俺の話
性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話
え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある?
( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい
1日1話かけたらいいな〜(他人事)
面白かったら、是非コメントをお願いします!

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる