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狼の枷
落ち穂拾い的な 破れ鍋に綴じ蓋理論
しおりを挟む時間通りにやって来た瀬能を事務所に通し、大神が休んでいる部屋の扉をノックした。
「瀬能先生がいらっしゃいました」
ごと ごと と音が聞こえ、大神の声が返る。
「今行くと伝え っ、こら、」
「やぁ やぁだぁ」
「いい加減擦り切れ っ、ぅ」
「っぷは、 やだやだ 」
「おい!そこを掴むなっ」
「コレだけっコレだけ置いてってーっ!」
「無茶を言うな」
ゴトゴトとまた音の響き始めた部屋に向かい、直江は「こちらで処理しておきます」と告げて振り返った。
「申し訳ありませんが、大神は手が離せないようなので、私が」
「熱烈だね」
「 ええ」
「彼のアレについて行けるってスゴイね!破れ鍋に綴じ蓋理論かな」
αとΩの在り方で良くそう言われる説がある。
お互いがお互いを補うためにあると言うバース性を表した話だが……
「もうちょっと言い方ありませんか?」
「じゃあヘルマプロディートスへの求愛、もしくはアンドロギュノスの悲劇」
にこにこと害のなさそうな笑顔の裏を考えて、直江は肩を落とした。
かつてαとΩは一人の人だった。
それが引き裂かれ別個の人となり、自分の運命を見つけたものは融けて混ざって無性となり、隙間があっても寄り添いあった二人はβとなった。
そして運命を見つけられなかった者たちがαとΩとなった。
故にαもΩも半身を求めて彷徨い続けるのだそうだ。
「多少隙間があっても、それをお互い埋めながら歩んで行くってのも幸せの在り方だと思うけどね」
お互いにピタリと息の合った、お互いがお互いの為に生まれて来たと思える関係も素晴らしいのだろうけれど、瀬能はそうは思えなかった。
約束された花咲くような調和の運命ではなく、試行錯誤で泥だらけでもいい、自分達で掴み取った恋人と手を取り合って行きたいと思っている。
「オメガやアルファの人に言っても、微妙な顔されるんだけどね。君もそうかな?」
はは と笑う瀬能の声を掻き消すように、セキの嬌声が上がる。
「 ────ぁ、ぁー……らめ、奥っおくの、ダメなとこまでキテる!おーがみしゃ 、の、つぶつぶの、きもちぃ改造◯ンチン!しゅきぃっしゅき!ナカでっいっぱい種付けしてえぇっ!んぁぁぁっ‼︎つぶ れ、雌チクビ、お乳出ちゃあ っああーっ‼︎」
二人の視線が自然と扉の方へと向いた。
「…………」
「激しいね」
「はい……」
その後も小さな喘ぎが聞こえるせいか、どちらともなく立ち上がって「近所の喫茶店にでも行きましょう」と言う提案が出た。
END.
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