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狼の枷
落ち穂拾い的な 名前
しおりを挟む「じゃあ新しい名前どうしようか」
「なんでも」
「なんでもが一番困るよねー珍名にする?」
「それはちょっと……」
「 あか あかと……」
「うん?」
「……いえ。では セキでどうでしょう」
「赤だからですか?」
「君ねぇ、人のネーミングセンス云々言えないよ?」
「あまり突飛な物よりは良いでしょう」
あかはちょっと考えるふりをして顔を赤らめた。
「大神さんに一番最初に呼んで欲しいので、セキにします」
「そんなのでいいのかい?」
「酷い言われようですね」
「画数とかいいの?」
「気にしないです。でも 」
「でも?」
「いざなくなると ちょっと切ないかな、と。変な名前とか適当につけて とか思ってたんだけど」
母から由来を聞いた時、怒りや呆れよりも寂しさを覚えた名前を、ずっと疎ましく思っていた筈だった。けれど、いざ名前が変わってしまうと思うと……
親子の縁が切れるようで……
ぐい と大神の大きな手があかの頭を撫でた。
「赤は 中心にあって大切な、と言う意味もある」
「え?」
「まぁ 覚えておくといい」
自分の名前の知らなかった意味を聞いて、少し耳がくすぐったい気がした。
「『あかあかと そは恋、せきせきと そは 」
ぐっと大神が咳き込んだ。
「なかなかロマンチックだねぇ」
「先生」
「なんだい」
「美味い物でも食べに行きましょう」
「ぼくがそんな物で釣られるとでも?」
「……欲しいと言っていた機材がありましたね」
「そうだね!」
「ではその話を詰めましょうか」
「どうしたの大神くーん、スゴイ顔してるけど?何か良い事あったのかい?」
にやにやと笑う瀬能に、大神は「そうですね」と仏頂面で返した。
END.
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