OMEGA-TUKATARU

Kokonuca.

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雪虫

雪虫 落ち穂拾い的な 5

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「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い   」

 リビングにまで聞こえてくるしずるの声と、ケタケタと笑うセキの声に二人の会話が止まった。

「せいしゅーん!」
「あいつらは  なにを   」

 ギリギリっと大神さんの奥歯が鳴り、鋭い目が台所の方を睨んだ。残念ながら座っている場所から中が見えないため、台所の二人には睨んでいることはバレず、「可愛い可愛い」は続いていた。

「しずる君のお相手は二階の子だと思ってたんだけどー?」
「    会ったのか?」
「んーん。でもいつもカーテンの向こうから睨まれてるよ」
「カーテンは開けるなと言っておいたんだが」
「気配でわかるでしょ?」

 なんてことないように言うけれど、そうだ、この人はこう言う人だった。

 大神さんが唯一、敵に回すなと絶対命令を出した人物。

 こうやって目の前で実物を見て、大神さん的面白くない冗談だったのだと思っていたけれど……

「  周りの見張りも全部見つけてあるよー?」
「     」

 ピースをして見せるこの人物は  本当に侮れない。

「ナニをそんなに警戒してるのさ」

 時折、ピリっと感じるこの鋭さが本当の彼なのか……俺には測ることができなくて、大神さんに倣って最大限に好意を示して敵にならないようにするしかない。

「お前がいてくれていたら、こんなに見張りは要らないんだが」
「やめてよー僕忙しいんだから!」
「   ああ」

 そこで思い出したのか、大神さんは俺に合図を出した。

 頼まれていたことだろうと、スーツの内ポケットから折り畳んだメモを手渡す。

「頼まれていた物だ」
「え!マージーで?早くない?さすがー!」
「珍しい名前だったからな。年齢も一致している。まずそいつだろう」

 大きな目を輝かせてメモを奪うように引ったくり、中に書かれた文字を目で追って、一瞬きょとんとしてからこれ以上ないほど顔を輝かせる。

「    ねぇわんこくん」
「なんだ?」
「運命ってねぇ、ホントにあるんだと思うよ」

 ピラピラとメモを振り、満面の笑みを浮かべて立ち上がる。

「魂で惹かれ合うって」

 ちゅっと一つ、大神さんに投げキスをして、踊っているように見える足取りで玄関へと歩いて行く。

「今日は帰るねー!ジュースごちそうさまーばいばーい」

 セーラーのスカートの裾を翻して、軽やかな足はそのまま飛んでいきそうだった。






END.
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