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人生は山と谷ばっかり
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しおりを挟むのしのしと二人の方に老人が進んでいく度に、商人が怯えて後ずさる。
「なに な、 っ」
木枝の折れる音がして商人の体が倒れ込む。
先ほどの態度とは打って変わって真っ青な顔をして老人を見上げる姿は、ざまぁとしか言いようがなかった。
「貴様、何をしている?」
木の根元まで承認を追い詰め、老人はのしかかるようにして身を乗り出し、聞いているこっちがぞっとするような低い声で尋ねる。
老人の影にすっぽりと入ってしまった商人はぶるぶると震えながら、言葉にならないような言い訳をもごもごと口の中で繰り返した。
オレやルーに対していたのとは正反対の態度は、指をさして笑ってやりたいほどだったがそれと同時に商人の気持ちもよくわかる。
背中から漂う気配がすでに違う。
オレはその老人の生まれ育ちなんてこれっぽっちも知らなかったが、それでもこの老人が纏う怒気だけで人を圧倒できるような人生を歩んできたのだろうと感じた。
「わしには貴様があの娘を手籠めようとしているように見えたが?」
「そん、な、わけ、 な、な 」
ガタガタと震えながら言い訳を言おうとしている男と、通勤ラッシュでもみくちゃにされたように髪をもつれさせて呆然と座り込んでいるルーを見比べ、老人は何も言わないまま問いかけるように首を傾げる。
それは、どんな問いかけよりも雄弁だ。
「 だ、だ、 あ、あいつ、が 」
「あの男が?」
「だ、だ、っそ 」
急に話を振られ、老人の目がこちらに向く。
親しみやすい黒い瞳だと言うのにその目力に今度はオレが怖気づく番だった。
「 っ! オ、オレは……」
ねめつけるように見つめられて、やっと藪から転がり出たオレは飛び上がりたい心持で首を振る。
「その男が! 脱走しようとするから! だから俺は懲らしめて 」
「ではその懲らしめる先がどうしてこの娘なのか、話してもらおうか?」
ひぃ と息を吸い込みそびれたような音を喉から漏らしながら、冷や汗を垂らして商人は懸命に首を振った。
「あ、ああ、……あんたらはっもう貴族様でもなければ人間でもない奴隷なんだ! 人間である俺がどうしようと咎められることでもない!」
「そうか、ああ、そうだったな? わしらは確かに奴隷落ちしている」
老人はどうしてだか商人の言葉を肯定しながら一歩後ずさり、ふぅー……と深い溜息を吐くと天を仰ぐように視線を外してしまう。
「そうだな、わしらには人としての扱いは不要だったな」
「だか らっ あんたも黙ってろ! 以前のようにまた何十人もしょ け ────っ」
ゴン と鈍い音がしたのは調子に乗った商人が立ち上がろうとした瞬間だった。
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