乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由

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第1章 初恋の彼は、私の運命の人じゃなかった

Ep.27 忌み子と学者と魔法の珠

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「ところで、それは何?」

 ガイアが手のひらで転がしているビー玉くらいのサイズのそれを指差して聞いてみる。キラリと光る三つの赤い珠はさっきキラービーを倒した時に急に現れた物だ。 

「あぁ。これは魔法玉と言って強力な魔力が凝縮され固形化したものだ」

「じゃあこれはさっきのキラービー達の魔力なの?」

「まあな。魔物を倒した時には大体出てくるんだよ、その魔物の特性に応じた力を秘めた魔法玉が」

 言わばエネルギーの塊である魔法玉は、武器や道具に魔力をいれて強化したり、はたまたそう簡単には解毒出来ない魔力を帯びた薬の材料になったり……と、さまざまな場面で求められる珍しいものなのだと説明してくれた。

「ただのビー玉みたいなのにすごい石なんだね、これ」

「そうだな、元になった魔物によっては宝玉の名も変わるし。滅多にお目にかかりやしないが、竜から出た魔法玉は竜玉《オーブ》と呼ばれかつては戦争の火種にまでなったとか」

 竜玉《オーブ》か、前世のアプリゲームではガチャの課金アイテムとかにされてたけど、現実にこう言うものが存在しちゃうとやっぱ悪用とかされて危ないんだなー。と納得していると、ガイアが魔法玉を地面に落として剣の柄で思い切り叩いた。
 カァンッと弾かれ転がった傷ひとつない魔法玉にガイアが舌を鳴らす。

「あー、やっぱり固いな……」

「いやいやいや!いきなり何してるの!?」

「何って破壊するのさ。今説明したろ?悪用されたら危険な物だって。キラービーの魔力からは、強力な毒物と媚毒が抽出出来るから尚更な」

 『毒はもちろんだが、あの変態野郎の手に強力な魅了の効果があるキラービーの媚毒なんて渡ろう物なら……!』と、私を見て何とか呟いたガイアが、苛立ちを叩きつけるように再び魔法玉を思い切り剣で殴りつける。何怒ってるんだろう?
 三つの内一番小さかった石に、少しだけヒビが入った。
 如何にも効率が悪そうなその作業に首を傾げる。

「さっきキラービーと戦ってた時にも思ったんだけど……ガイアは魔力が使えるんでしょう?なら、魔法でバーンっと攻撃しちゃった方が効率いいんじゃないの?」

「嫌だよ、魔法の発動には毎回出したい威力に応じてポエム染みた長ったらしい詠唱が必要になるんだぞ?19にもなってそんな醜態さらしてられるか!だから俺は、矜持を捨ててでも本当に使わざるを得ないよっっっぽどの事態にならない限り魔力は使わないんだ」

「あー、な、なるほど……」

 歪んだその表情から、詠唱が心底嫌な気持ちが伝わってくる。ポエムチックに紡がれる魔法詠唱はファンタジー世界のお約束だものねー。これはねだっても魔法使う姿は絶対見せてくれないだろうな、ちょーっと残念。

(でも、本人が嫌がってるのを無理強いは出来ないもんね)

「それに、さっきのこいつらはまだ雑魚のレベルだったからな。魔力を使う間でも無かったんだよ」

「ーっ!!?嘘でしょ、一撃で大岩を粉々にしたり毒針のひと突きで地面をあんなに抉ってたあのキラービーが弱い方なの!!?」

 さっきのキラービー対ガイアの戦いの場にある3メートルくらいがっつり抉られた地面を指差して叫ぶ私に、魔法玉を砕く手は止めないままガイアが苦笑した。

「キラービーってのは、必ずすべての働きキラービーを統率する女王の立場にある“マザー”と呼ばれる個体が居る。そいつはさっきの三匹なんかより桁違いに強いと思うぜ」

 ひぃぃぃぃっ、そんなの居るんだ!怖いな……。

「そのマザーが居る限りいくら退治を続けてもキラービーは増え続けるだろう。だからこそ、魔力を流すと魔物が術者の使い魔として復活しちまう要になる魔法玉は尚更破壊して置かないとな!」 

「……っ、危ない!!」

 勢いよく再びガイアが剣を振り上げたとき、勢いよく飛んできた何かがいきなり彼の頭に向かって体当りしてきたのに気づいた。このままじゃ危ない!
 咄嗟に抱きついて二人で地面に倒れ込む。ガイアに辺り損なったそれは、代わりに彼の剣を思い切り遠くまで弾き飛ばした。


 目の前に居たのは、燃えるような怒りをまとって狂暴そうになった一匹のキラービーだった。しかもさっきのより二倍くらい大きい……!

「ーっ!?まだ近くに居たのか!……っ、しまった、剣が……!」

 いち早く体勢を立て直して私を下がらせたガイアがハッとなる。弾き飛ばされた剣はかなり離れた岩場の隙間に突きたっていたのだ。ガイアはさっきの戦いで疲れてるだろうし、更に武器もないんじゃ戦力的に不利だわ!もうお水もないし、どうしたら……!

「おやおや、中々お戻りになられないから様子を見に来てみれば、恩を売るよいタイミングだったようですねぇ」

 と困り果てていたその時だ。今正にドリルのような毒針で襲いかかって来ようとした巨大キラービーの体がいきなり業火に包まれたのは。

(誰の声!?そもそも、今どうやって火をつけたの!!?)  

 煙の向こう側でカランと転がった魔法玉を拾い上げた相手の姿をよく見ようと目を凝らす。徐々に薄まってく煙の先で、涼やかな銀縁メガネと白衣が眩しく光を反射した。煙から出るように、男が一歩前へ踏み出す。

「今のは炎の魔術だな。あんた……、研究者じゃなく魔導師だったのか?」

 咳ひとつせず涼しい顔で現れたサフィールさんを睨み付け、ガイアが静かに問いかける。
 白銀の髪を揺らしたサフィールさんの口角がゆっくり上がった。

   ~Ep.27 忌み子と学者と魔法の珠~

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