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道具

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「ありがとうございました。またぜひお願いします。」

そう言って榊さんを見送ると僕はその足で家に帰る。行きは見てくれが大事な父様は車を用意してくれるが帰りは顧客も帰ったあとのためそんなもの用意されない。

車で15分ほどかかったからかなり歩かなければならない。
早く帰って仕事しないといけない。
トトとココに餌もあげなきゃ。

体力もあんまりない僕にとっては苦痛な時だ。

どうにかして家に着くと、もう昼近かった。


「今日は仕事が終わっていないので昼食は抜きです。」

そんな。仕事してきたからこの時間になったのに。

まあそうか。僕がこんな仕事しているだなんて使用人の人たちは知らない。
朝ごはんが食べれてよかった。
帰ってすぐに猫たちには餌をあげたし、僕は明日の昼まで我慢できる。

今日は洗濯の量もゴミの量も多くて夕方まで時間がかかってしまった。

どうにか仕事を終わらせて小屋に戻ろうとすると

「おい。今日も仕事だ。早くしろ。」

「え、昨日、も、、」

ドカッ

「口答えするな!!」

お腹を蹴られてしまった。口を挟んでしまったからだ。しかもいいところに入った。痛い。

「今日は短時間だ。」

泊まりの時と短時間の時がある。短時間の時は行為が終わったらすぐに出なければいけないからお風呂もご飯もないんだ。




「おっさんに抱かれた体で敷地内の小屋に入るなよ。風呂に入ってから小屋に帰るんだ。」

仕事が終わって帰宅した僕に悪魔はそう告げた。
この寒い中、水で風呂には入れって?

「はい。わかりました。」

ガタガタ震えながら水浴びをする。指先の感覚もないし、寒過ぎて何も考えられない。

早く暖まりたい。その一心で素早く浴びて寝床に潜った。

トトもココも今日はいっぱい遊べなくてごめんな。
明日は遊んでやるからな。


当たり前のことだが、次の日熱を出した。でも仕事はある。
熱で頭が回らない中、ゴミ出しに洗濯を済ませる。熱のせいかいつもより上手く体が動かない。

こう言う時によくないことって起こるもんなんだ。


洗濯をしていると背中に衝撃が走った。


ドカッ!!

剛さんだ。

「イライラするんだ!殴らせろ!」

地面に倒れ込んでしまった僕を殴って蹴って、ほんの数分だったんだろうけど、何時間にも感じた。

痛い。痛い。

熱も上がってきていて何も考えられない。

ただこの時間が過ぎるのを待つ。
早く、早く終われ。

シーツが地面に落ちてしまったから洗い直さなくちゃいけない。
あぁ、今日も昼には間に合わない。

今日もご飯は食べられない。
残りわずかのあのお金を使うか?
でも、今後のためにもとっておきたい。
我慢できる。大丈夫だ。


気づいたときには剛さんはいなくなっていた。

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