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「あの・・・嬉しいって思うの変ですか?」

「え?」

俺がおかしいのかな、、、嬉しいって思っちゃうのは変なのかな。

理由は分からないし、普通は、一般的には嫉妬って嫌なのかもしれないけれど。

俺は理玖さんが嫉妬してくれたことに対してなんとも言いがたい高揚感を感じているし、素直に、単純に嬉しいってそう思った。それが変なことなのかもしれないけれど、この間理玖さんと何でも言い合うって約束したのもあって隠したくなかった。

「嬉しいって思ってくれたその何倍も俺は嬉しい。楓君のことが好きで好きでたまらないから嫌われたくない。それでも、好きだからこそ楓君が他人の目に入るのすら嫌なんだ。すぐ近くにいないしね。」

そう言われて俺も少し考えてみた。理玖さんは今、俺の知らない場所にいて知らない人と時間を共にしている。そこまで考えただけで嫉妬なのかは分からないがずるいと思った。嫉妬なのかは微妙だけれども。

「あの、俺は嫉妬がよく分からなくて・・その、俺は嫉妬してもらえて嬉しいけれど、俺は嫉妬をお返しすることが出来ないんですけど、その、、理玖さんが知らない人と今は過ごしているって考えたらずるいって思います。俺だって理玖さんと一緒に過ごしたいのにって。」

「ふはっ!嫉妬のお返しなんて初めて聞いたよっ、、」

電話口で理玖さんが笑っているのが聞こえる。馬鹿にされてる感じはあるが、理玖さんがこんなに笑っているのをそんなに見たことないから俺もつられて笑ってしまった。

「ずるいって思ってくれてるんだ。俺も、優にずるいって思ってるよ。だって俺だって楓君と旅行行きたいのにさ。なんてね、2人が親子として楽しんでるのも嬉しいんだけどね。」

俺も、俺も思っていたことなんだ。優と2人の旅行もすごく楽しい。でも、楽しいことがあったり美味しいものを食べたり見たことないものをみたり、そんなふとしたときに理玖さんの顔が浮かぶようになった。

逆に理玖さんと話しているときに聞いたオーストラリアでの話とか、食べたものの話とか、俺の知らないこと驚くようなことを教えてもらったときには優に教えたくなる。
俺はこれが家族なのかなって最近思ったんだ。

「理玖さん、俺いつか理玖さんとちゃんと家族になりたい。」

「楓君、それって・・」

「俺、理玖さんと家族になりたいっ、、」

突如として溢れた気持ちが止まらなかった。小さい頃から憧れていた、自分の家族はどんな家族になるのかなって描いていた絵がビリビリに破られて汚されて燃やされたようなそんな感覚だったんだ。でも、優が家族になってくれて日和や陽介とも家族になれそうで、そんな中で俺はわがままになってしまった。その中に理玖さんもいて欲しいってそう思ってしまったんだ。

叫ぶように伝えた言葉と共に涙がボロボロとこぼれ落ちる。

「楓君、俺も家族になりたいよ。ごめん、今すぐ抱きしめたいのに近くにいなくてごめん。」

理玖さんのことを待っているって言ったのは俺なのに理玖さんに謝らせてしまった。仕事でオーストラリアに行っているのに。その仕事をして今回の旅行のお金だってたくさん出してくれたのにっ、、

「ごめんなさい、わがまま言ってしまってごめんなさい。」

「楓君、違うよ。俺嬉しいんだよ。家族になりたいって思っていてもどうしても兄のことがネックになって言って良いのかわからなかったんだ。だから、楓君がそういう風に言ってくれて本当に嬉しいんだ。

その言葉にまた涙が出た。

---ギュッ

「ママ、なんで泣いてるの?電話、理玖おじさん?」

「っ、優、、」

「おじさん!約束したじゃんか!」

いつの間にか起きていた優が俺を横から抱きしめたままで電話に向かってそう叫んだ。

優が怒ったようにそう言ったから約束の内容は分からないけれど、理玖さんに怒っているなら止めなきゃと思って優に必死に言い訳をした。

「優、違うんだ、嬉しくて泣いてるんだ。大丈夫だから。ね?」

「本当?悲しいわけじゃない??苦しいんじゃない?」

「うん、大丈夫。」

優はそう言うと納得してくれたが、ぎゅっと抱きついたままで離れない。抱きしめている優の手をぎゅっと握ったまま、もう一度ちゃんと伝える。

「理玖さん、大好きなんです。いつか理玖さんと家族になりたいです。」

「楓君、俺も君と家族になりたい。君と一緒にいつも笑って過ごしたい。ちゃんと直接君にプロポーズさせて欲しい。」

「はい、待ってます。ずっと、ずっと待ってます。」

こんなに感情が上がったり下がったりなんてすごく幸せなことなんだと思う。理玖さんが帰ってくるまであと10ヶ月あるけど、今日の電話を思い出して待ってられると思う。

会いたいけど。
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