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「ママ、本当に悲しくて泣いてたんじゃないの??嘘じゃない?」
電話を切った後、何度も何度もそう聞いてくる優に大丈夫だと抱きしめる。誕生日前日なのに俺の心配をさせてしまったな。
「ほら優、夕飯行こう?旅館の中にある料亭でご飯だよ。誕生日前日のお祝いしよう?な?」
まだちょっと心配が残っているような顔をしながらも、手をつないで一緒に料亭に向かってくれた。
「ねえママ、僕っておなかの中でどんな感じだった?」
「んー、そうだな。優はよくおなか蹴ってたし、元気だったから男の子かなって予想してたんだ。俺も初めての妊娠だったから分からないことも多かったけどさ、おなかが大きくなっていく野が不思議でたまらなかったのを覚えてる。産まれる前にはこのくらいおなかが大きくなってたんだぞ。」
俺はそんなに体格に恵まれた方じゃないから平均身長よりも低いし、体重も軽めだと思う。自分でも薄いなと思っていたおなかの中にいた子がこんなに大きくなって今では俺の手を握ってくれるし、俺が泣きそうになったら抱きしめてくれるし俺を支えてくれる。
「僕が産まれた時ってどう思った?」
「嬉しくて嬉しくてたまらなかった。産声ってこんなに大きいんだってちょっとびっくりもした。」
「・・・・・・」
黙ってしまった優は手をつないだまま、歩きながらも涙をポロポロと泣いていた。
「さっきまでと逆だな。優、産まれてきてくれてありがとう。俺の初めての家族になってくれてありがとう。」
言葉にならないようでうん、うんと何度も何度もうなずく優が愛おしくてたまらなかった。
「ほら、料亭つくぞ。泣き止む泣き止む、な?」
「うんっ、ご飯楽しみっ!」
目を赤くしながらも美味しい美味しいと頬張って食べる優はかわいくて俺の分もあげたいのにママはちゃんと食べないとだめって拒否されてしまった。本当に、しっかりしてるというかしすぎているというか・・
「お腹いっぱいだ・・・」
理玖さんが伝えてくれていたようで俺の分は少なめに出してくれたみたいだった。優より食べれないのか、俺。とも思ったが優は成長期なんだって自分に言い聞かせることにした。
「こちら、よろしければお部屋でお召し上がりください。お子様が明日お誕生日とお伺いしましたのでデザートはバースデーケーキをご用意しました。大切な時間を当旅館でお過ごしいただき光栄でございます。」
料亭を出る時に小さな箱を渡してくれた。明日の夜も優と食べようとは思っていたけどここでももらえるなんて思わなかった。
優はしっかりお礼を言っていたから部屋に戻ったらうんと甘やかして褒めてやろうと2人でまた手を繋いで部屋に戻った。
「わ!いちごのケーキだ!ママ!食べようっ!」
旅館が用意してくれたケーキはカットケーキ2つ分くらいの小さなホールケーキでシンプルながらおいしそうでいちごがたくさんのっている。せっかくだからって2人で携帯のタイマー機能を使ってケーキを一緒に持って写真を撮った。優がもう一枚もう一枚と言うから2人で何枚も何枚も撮った。その中でたまたまとれていた優と俺が写真用の笑顔じゃなくて思いっきり笑っている写真があって、俺はそれがすごく好きで優に頼んですぐにロック画面をこの画像にしてもらった。
理玖さんにも送ろうと思ってメッセージを開くと、食事をしていた間にメッセージが来ていた。
---優と楽しい時間を過ごしてね。来年は5人でお祝いしよう。
優にも見せるとかなり喜んでいて2人で一緒に返事を考えて遠くの理玖さんに届くよう祈って送信ボタンを押した。
「ねえママ、理玖おじさんは僕がママを助けてっていったらちゃんと助けてくれたよ。」
「うん、そうだな。」
急にどうしたんだ。そんなこと言い出すなんて・・
「ママに会わせてくれたし、ママと一緒に暮らせるようにしてくれた。」
「優?どうしたんだ?」
「ママのことすごい大事にしてくれてるよ。ママのためにたくさん頑張ってくれた。だから、だからね、お父さんとは違うよ。お父さんみたいにママにひどいことしない。きっとママを幸せにしてくれるよ。」
優・・・
「ママと2人の時間も大好きだし、これからもその時間はなくしたくないけど僕はママが理玖おじさんと幸せになるのもすっごく嬉しい。ママと2人家族でも僕は幸せだけど理玖おじさんや日和や陽介と5人家族になってもすっごい幸せだと思うんだ!!」
「うん、そうだな。俺、理玖さんと家族になりたいって思った。優と2人家族もすっごい幸せだ。その幸せの中に理玖さんがいたらいいなって思ったんだ。」
優は本当に優しいんだ。俺の幸せをすごく大事にしてくれている。俺にとっての結婚がだまされた偽りのものでその状況で苦しんで絶望していた俺を知っているから。
「優、ありがとう。俺、優と理玖さんと日和と陽介と5人で幸せになるから。でもな、もうすでにあの頃の事なんて忘れるくらい幸せなんだからな。それに、今から2人でお風呂入るんだからな。もっともっと今日楽しんでもっと幸せになるんだからな。」
「うん!ママ大好き!!!」
「俺も!」
明日は11年前に俺の大切な家族が産まれた日。
電話を切った後、何度も何度もそう聞いてくる優に大丈夫だと抱きしめる。誕生日前日なのに俺の心配をさせてしまったな。
「ほら優、夕飯行こう?旅館の中にある料亭でご飯だよ。誕生日前日のお祝いしよう?な?」
まだちょっと心配が残っているような顔をしながらも、手をつないで一緒に料亭に向かってくれた。
「ねえママ、僕っておなかの中でどんな感じだった?」
「んー、そうだな。優はよくおなか蹴ってたし、元気だったから男の子かなって予想してたんだ。俺も初めての妊娠だったから分からないことも多かったけどさ、おなかが大きくなっていく野が不思議でたまらなかったのを覚えてる。産まれる前にはこのくらいおなかが大きくなってたんだぞ。」
俺はそんなに体格に恵まれた方じゃないから平均身長よりも低いし、体重も軽めだと思う。自分でも薄いなと思っていたおなかの中にいた子がこんなに大きくなって今では俺の手を握ってくれるし、俺が泣きそうになったら抱きしめてくれるし俺を支えてくれる。
「僕が産まれた時ってどう思った?」
「嬉しくて嬉しくてたまらなかった。産声ってこんなに大きいんだってちょっとびっくりもした。」
「・・・・・・」
黙ってしまった優は手をつないだまま、歩きながらも涙をポロポロと泣いていた。
「さっきまでと逆だな。優、産まれてきてくれてありがとう。俺の初めての家族になってくれてありがとう。」
言葉にならないようでうん、うんと何度も何度もうなずく優が愛おしくてたまらなかった。
「ほら、料亭つくぞ。泣き止む泣き止む、な?」
「うんっ、ご飯楽しみっ!」
目を赤くしながらも美味しい美味しいと頬張って食べる優はかわいくて俺の分もあげたいのにママはちゃんと食べないとだめって拒否されてしまった。本当に、しっかりしてるというかしすぎているというか・・
「お腹いっぱいだ・・・」
理玖さんが伝えてくれていたようで俺の分は少なめに出してくれたみたいだった。優より食べれないのか、俺。とも思ったが優は成長期なんだって自分に言い聞かせることにした。
「こちら、よろしければお部屋でお召し上がりください。お子様が明日お誕生日とお伺いしましたのでデザートはバースデーケーキをご用意しました。大切な時間を当旅館でお過ごしいただき光栄でございます。」
料亭を出る時に小さな箱を渡してくれた。明日の夜も優と食べようとは思っていたけどここでももらえるなんて思わなかった。
優はしっかりお礼を言っていたから部屋に戻ったらうんと甘やかして褒めてやろうと2人でまた手を繋いで部屋に戻った。
「わ!いちごのケーキだ!ママ!食べようっ!」
旅館が用意してくれたケーキはカットケーキ2つ分くらいの小さなホールケーキでシンプルながらおいしそうでいちごがたくさんのっている。せっかくだからって2人で携帯のタイマー機能を使ってケーキを一緒に持って写真を撮った。優がもう一枚もう一枚と言うから2人で何枚も何枚も撮った。その中でたまたまとれていた優と俺が写真用の笑顔じゃなくて思いっきり笑っている写真があって、俺はそれがすごく好きで優に頼んですぐにロック画面をこの画像にしてもらった。
理玖さんにも送ろうと思ってメッセージを開くと、食事をしていた間にメッセージが来ていた。
---優と楽しい時間を過ごしてね。来年は5人でお祝いしよう。
優にも見せるとかなり喜んでいて2人で一緒に返事を考えて遠くの理玖さんに届くよう祈って送信ボタンを押した。
「ねえママ、理玖おじさんは僕がママを助けてっていったらちゃんと助けてくれたよ。」
「うん、そうだな。」
急にどうしたんだ。そんなこと言い出すなんて・・
「ママに会わせてくれたし、ママと一緒に暮らせるようにしてくれた。」
「優?どうしたんだ?」
「ママのことすごい大事にしてくれてるよ。ママのためにたくさん頑張ってくれた。だから、だからね、お父さんとは違うよ。お父さんみたいにママにひどいことしない。きっとママを幸せにしてくれるよ。」
優・・・
「ママと2人の時間も大好きだし、これからもその時間はなくしたくないけど僕はママが理玖おじさんと幸せになるのもすっごく嬉しい。ママと2人家族でも僕は幸せだけど理玖おじさんや日和や陽介と5人家族になってもすっごい幸せだと思うんだ!!」
「うん、そうだな。俺、理玖さんと家族になりたいって思った。優と2人家族もすっごい幸せだ。その幸せの中に理玖さんがいたらいいなって思ったんだ。」
優は本当に優しいんだ。俺の幸せをすごく大事にしてくれている。俺にとっての結婚がだまされた偽りのものでその状況で苦しんで絶望していた俺を知っているから。
「優、ありがとう。俺、優と理玖さんと日和と陽介と5人で幸せになるから。でもな、もうすでにあの頃の事なんて忘れるくらい幸せなんだからな。それに、今から2人でお風呂入るんだからな。もっともっと今日楽しんでもっと幸せになるんだからな。」
「うん!ママ大好き!!!」
「俺も!」
明日は11年前に俺の大切な家族が産まれた日。
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