伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜

にゃーつ

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あの後、俺は結局泣き止むことができないまま日和と陽介と手を振った。

もう夕飯の時間になるからと理玖さんと共に帰って行った。誕生日会はまた来週の週末に改めてするそうだ。理玖さんから日和と陽介のことはこれからゆっくり考えていこうと言ってもらえたから理玖さんや優と話しながら決めていこうと思う。

「ママ、もう大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ優。今日は抱っこしてる途中だったのに日和と陽介に譲ってくれてありがとうな。」

「俺はこれまでママ独り占めできてたし、夜は2人だからいいんだ。この時間があるから譲っただけだから俺ありがとうって言われるほど優しくない・・・。」

「優、そんなことないよ。優は優しいよ、俺のこといつも心配してくれるし、このあいだ日和に久しぶりに会った時も日和のこと気づかってただろ。それに俺は忘れないよ?理玖さんに俺のこと助けてっていってくれたの優だろ?」

「それは、俺がママに会いたかったから。」

「そのおかげで俺は今ここにいるよ。でも、優はもっともっとわがままになってもいいんだよ。」

「・・・ねえ、ママ来週には退院なんでしょ?1日でもいいからママと2人で暮らしたい。いい?」

「優、俺の今の考え言ってもいい?」

「うん。」

「陽介はまだ小さくて分からないと思うけど日和はある程度のことは理解できる。だからこそ今すごく混乱してると思うんだ。だから、ちょっとずつ会う頻度を増やして俺に慣れてもらおうと思ってる。2人が週末だけ泊まりに来たり一緒に出かけたりして俺に慣れてくれたら一緒に暮らそうと思ってるんだ。4人で暮らすのはそれからだよ。早くて年明けだと思うから少なくとも年内は俺と優の2人で暮らそうって思ってるんだ。」

「本当?まだママと2人の時間ある?」

優は俺と2人の時間を大切にしてくれている。俺自身も、これからも優との2人きりの時間ってのを大切にしたいと思ってる。

なら、

「あるよ。お前がいいならなんだけどさ退院したら毎月俺と2人でデートしようか。」

「ママと?デート?する!!するする!!ずっと?ずっとしてくれる?」

さっきまでの目をキョロキョロさせて不安そうにしていた顔がデートを提案すると嬉しそうな顔になるのをみると提案して良かったと思う。

「うん、日和や陽介と暮らすようになってからもデートしよう。」

「いいの?」

「うん、俺がしたいんだ。いい?」

「うん!するよ!ママデートする!!俺もデートしたい!!」

「じゃあ約束な。」

優がデートをいつまでしてくれるかはわからない。反抗期も来るだろうし中学生高校生になったら親と2人で出かけるなんて嫌になっちゃうだろうし。でも、優が嫌って言うまでは優と2人の時間を大切にしようってそう決めた。

「・・・ママ、今日のこと教えてくれるって約束でしょ?」

デートの話したから忘れてるかなって思ってたけどさすが優・・・

少し気が引けるけど、話すしかないか。

俺は覚悟を決めて今日起きたことを全て優に話した。奥さんに言われた言葉たちは話さなかった。出来るだけ俺の感情は入れないように客観的に話せるように努力はしたが優にはどう伝わっただろうか。

「ママが無事だったから、冷静でいられるけど・・・俺許せないよ、お母さんのこと。ただここに来ただけじゃないでしょ?なんか言われたんでしょ?そんなのママが隠したって分かるよ。それに怪我までしたんだから。ママはなんで怒らないの?」

「んー、なんでだろうな。優たちに酷いことされたら怒ると思うけど、自分のことだと怒ることないかな・・・」

自分のことで怒ったことってこれまでにあったっけ。思い出せないからたぶんないんだと思うんだよな。

「なら余計に俺は許さないよ。ママの分まで俺が怒る。」

「でもさ、俺の人生に幸せな時と辛い時があったみたいに優たちのお母さんにもそれがあって、きっと子供達との生活が幸せでその幸せを取り戻したいだけなんじゃないのかなってそう思うんだよ。だって俺も今の幸せを誰かに奪われたら全力で取り返そうとすると思うんだ。」

「ママは俺のことを優しいって言うけど、俺の優しさは絶対にママの遺伝だと思うな。」

「俺の遺伝?そんなことないと思うけどな~。」

「いや、これは自信ある!!絶対にママの遺伝だ!!!」

優のいいところが俺の遺伝だと言ってくれるのが嬉しくて思わず優のことを思いっきり抱きしめた。

優は痛い~と嬉しそうに言っていたから俺は抱きしめるのをやめはしなかった。

「ママ、俺この写真たちに入ってる写真大好きなんだ。」

優がベッド横のサイドテーブルに置いてある写真を見てそう言った。

不格好に立っている俺と優の写真。

「うん、俺も大好き。」

「俺来年のママの誕生日に新しい写真立てプレゼントする。そこにさ、4人で撮った家族写真入れよう?」

「・・・それ、最高のアイデアだな。うん、そうしたい。俺そうしたい。」

「その頃にはきっと4人で暮らしてるよ。だから、家族写真撮って飾ろう?今度は病院じゃなくて俺たちの家に。」

この子はどれだけ俺を喜ばせてくれるんだろう。

退院まで後1週間だ。


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