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しおりを挟む優と楓君が対面を果たしたと同時刻にテレビでもネットでも1つのニュースが大きな話題を呼んでいた。
"柊グループΩ男性に出産を強要!?無理やり番に!!!"
そんなタイトルでどの局も速報として大きく取り上げていた。俺の携帯も着信やメッセージの受信が止まらない。兄さんたちは今頃大阪で記者に囲まれていることだろう。柊の家も。
俺の会社にも取材は来るだろうが、会社の受付に記者は通すなと言ってある。業務に支障が出そうになればまた手を考えるが今は様子見だな。
さっきからやたらと長く電話をかけてくる奴がいるな。まあ大体の予想はついている。今回の告発は加害者弟からの告発って公表させたから兄さんか父さんがかけてきてるんだろう。
はぁ、、とるか。
「もしもし?父さん?」
「理玖、、、。柊が嫌いか?」
「好きではないよ。でも今回は柊が嫌でしたんじゃない。兄さんのしたことは許されることじゃない。」
「まあ、そうだな。」
「父さんも黙認してたんでしょ?気づいてないわけないよね、父さんがさ。それでもいいって思ってた?Ωの男が1人犠牲になればそれでいいって?それほどに柊が大事?柊を守るためになら何をしたっていいの?俺はそんなの間違ってると思うんだ。」
「・・・理玖、俺は知らなかった。」
「信じられない。同じ敷地内にいて気づかないなんてことある?それに前に俺に意味ふかなこと言ってきたよね?」
「・・・Ωを囲ってることは知っていた。だが、子供を産ませていたことは知らなかった。だが、知らぬは罪。結弦の父として、柊の当主としてΩの彼には何か償いをしたいとは思っている。」
「具体的なことは弁護士を通して書面でしてくれ。あと、優は一旦俺が引き取るってことにしておいて。優も含め3人の子供たちらいずれは楓君と一緒に暮らせるようにしたいって思ってるから。」
「私ができることはなんでもしよう。結弦は当分は出てこれないだろうからな。」
父さんが言っていることはどこまで本当なのか分からない。柊グループの会長だ。小さい頃から何を考えているのかよく分からない人だったし俺も兄さんも父さんには逆らわない深掘りしないっていうのが小さい頃から身に染み付いていたから親子としてはあまり成り立って無かったのかもしれない。俺と父さんも、兄さんと父さんも。
ただ、俺を当主にしたいのだけは伝わってきていた。適齢の年齢になりキャリアを積んだ兄さんにいつまで経っても重役を与えずに俺には本社の専務にって話が来たぐらいだから。兄さんが後継を欲しがったのはそれもあるんだと思う。なんて、兄さんがあんなことをした理由を見つけたところで楓君が苦しんだ事実は変わらない。
病室の中から聞こえてくる2人の泣き声が耳に入るたびに胸の内に兄さんへの怒りが湧いた。
ん?また着信だ。
あ・・・・・・
「もしもし」
「お前何考えてんだ!!!なんてことをしたんだ!!!」
「・・・兄さん。なんてことをしたはこっちのセリフなんだけど?分からないのか?一生かかっても償いきれないほどのことを楓君にしたんだぞ?もう警察にも被害届を出してある。牢に入るのも時間の問題だよ。」
「んなっ!!お前っ!!!俺からの恩を忘れたのかっ!!」
「兄さんのことは尊敬してたよ!!俺にとっては自慢の兄さんだった!!感謝だってしてた!!!でも!大きな罪を犯してる兄さんは尊敬してない。軽蔑してる。こっちは証拠も揃えてる。兄さんは終わりなんだ、罪を償ってくれ。楓君にも優にも日和にも陽介にも謝ってくれよ。」
そう言って電話を切った。俺と兄さんが電話で話すなんてこれが最後だろうから。
次話すとしたら裁判所か、牢の中の兄さんとガラス越しに話すかのどちらかだろうから。
・・・大好きだったよ、兄さん。感謝もしてた。尊敬してた。憧れの兄だった。
さよならだ。
少し胸のモヤつきを抱えながら病室の前に戻ると園長先生が涙を流していた。
中で何かあったのかと耳を澄ますと2人して泣いている声が聞こえた。優がママ、ママと泣きながら楓君のことを呼んでいて、あぁ、優はようやく夢の中や眠っている楓君にじゃなくちゃんと本人を前にしてママと言えたんだと嬉しくなった。
何十分も経って夕飯の時間になりそうだったので中に入ると優は涙の跡を残しながらも幸せそうにママの腕の中で眠っていた。優は今日ここに泊まることになりすごく幸せそうに笑う顔はお母さんに甘える子供そのものだった。優はこんな子だったのか。楓君のことを知ってから何度こう思ったのか分からない。優の本物の笑顔を引き出せるのも優が心のうちをさらけ出せるのも楓君だけなんだという事実に俺は嬉しくなった。
帰り際、優をよろしくと言いかけてやめた。
優の母親は楓君だから、楓君は優を預かる立場じゃない。俺がよろしくなんていうのは間違っている。優は俺にバイバイと言いながらも体の方向は楓君の方を向いていて今あいつの頭の中は100%ママで占められてる。優にとって最高に幸せな時間なんだな。
そう思い扉を閉めた。
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