【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

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お風呂に入った後、セドが紅茶とクッキーを持って訪ねてきた。

大事な話がある。

そう言われたら身構えてしまう。いつも微笑んでいるセドがなんだか難しそうに口を結びなかなか話そうとしないのも何に対してというわけではないが不安という気持ちが生まれる。

「・・・聞かれたくないことなら、そう言って欲しい。もう2度とこの話題を口にしないようにする。もちろん、それでルイのことをどう思うとかはない。大好きなルイのことだから知っておきたいっていうだけだから。」

「う、うん、、?」

まだ話の内容も知らないのにそう言うってことは相当なことなんだろうか。
セドがそこまで言いづらいことってなんなんだろうか。

それに、今日話すことに意味があるのかとも思う。3日間アンナたちは滞在する。ラフマ国一同が帰国してからではなく、今話すというのに少し引っかかるんだ。

「・・・ルカ。」

ドキッとした。

今セドはルカと言った。はっきり、ルカと。

このことを知っているのはアンナだけだ。セドには話していない。僕の中にいるもう1人の僕のことを。

「なん、で、、」

「気づいていた。ルイの中に別の誰かがいることを。それで、先ほどアンナさんに聞きに行ったんだ。だから彼女がバラした訳ではない。」

気づいていた、、、?

小さい頃にアンナでさえ気づかなかったのに。

「ルカは、僕の中の僕。あ、今はルイだよ?」

「分かってる。公爵家に初めて面会した時と誘拐された時はルカだっただろう?」

「うん、正解。すごいね。」

絶対にバレない自信があった。セドにだってみんなにだってバレない自信があった。

ルカもバレないから言わなくていいって言ってた。だから言わずに僕らは2人で1人として生きていこうってそう思ってたのに。

「・・・。」

「もし、このことに触れない方がいいなら最初に言ったようにもう話題には出さないようにする。僕はルイとルカ2人を愛して幸せにするから。」

「本当に?ルカのこと、認めてくれるの?」

いつだっただろうか。自分の中にもう1人自分がいることが普通じゃないと分かったのは。いや、最初から分かってた。
打ち明けた時のアンナの反応を見て、あぁ、これって普通じゃないのか。そう思った。

人は普通1人の人を愛するものだ。だからセドからはどちらかしか愛されない。

でも僕たちは名前は違うけど心はこの体を通して繋がっている。だからセドのことが好きな気持ちはルイのものでありルカのものでもある。

怖いとか悲しいとか辛いとかそんな感情も2人で分け合ってるし、嬉しいとか楽しいとか幸せって感情も2人で分け合ってる。

全部半分こしてるんだから。

「ルイもルカも好きって言ったらルイやルカは嫌?これが二股って言うならそれでもいいよ。僕は、ルイの無邪気なところが可愛くて好きだしルカの怖いのを隠そうとするのも守ってあげたくなるくらい好きだよ。」

「・・・うん、っ、、嬉しっ。ルカもね!セドのこと大好きなんだよ?僕たち、自分たちで自由に表に出ることができなくて、その、いつルカになるか分からないけどっ、ルカにも同じこと言ってあげて欲しい。」

「ルカがいたからルイはあんなに辛いところで頑張れたんだね。ルカもルイがいたから頑張れたんだね。」

「うん、ルカがね大丈夫、僕がいるっていっぱい言ってくれたからっ、、でもルカは自分のこと認めてくれないんだっ。初めてお父様たちに会った時も、最初に僕が会っちゃってごめんって言うんだ。2人で1人なのにっ」

ルカはいつもそうだ。僕が表の日にエビが出ると謝る、ルカが表の日にいいことがあると謝る。

僕らは2人で1人なのに。

でも、セドならそんなルカのことも包み込んでくれる。そう思える。

だって、今セドにドキドキしてるのは僕だけじゃないのがわかるから。
このドキドキは僕とルカのものだ。いつもはなんでも半分こなのにこの胸の鼓動は2人で2倍になっている気がする。

「それにさ、僕だって怒った時とかちょっと乱暴な言葉遣いになるだろ?そういう風に誰でも二面性は持ってる。ルイはそこに自我が付いてくれた。ただそれだけの違いだよ。ルイは僕が荒々しい言葉使うのも好きだって言ってくれたでしょ?それと同じだ、僕もルイの全てが好き。ルカの全てが好き。」

そんな風に言ってくれるなんて、僕たちは幸せ者だね?ね、ルカ。

「ねぇセド?きっと明日はルカが出てくるよ。」

「本当?自分たちじゃコントロールできないんでしょう?」

「そうだけど、分かるの!なんとなく!」

これまでは僕とルカの2人の世界だった。でももう2人だけの世界に篭らなくていいんだ。みんなのいるところに僕もルカも歩み寄っていいんだ。

セドはなんでも分かってしまう。
本当に僕たちの違いを分かってるんだ。僕たちですら違うところを探すのが大変なのに。


いつもはミルクもレモンも用意されているのに今日の紅茶は最初からミルクのたっぷり入ったミルクティーだった。

ルカ、明日は出ておいでよ。久しぶりにアンナに会えるしセドと直接話せるよ。


「ルイ、おやすみ。ルカ、おやすみ。」

この日から夜寝る前のキスはルイとルカそれぞれに一回ずつ、計2回してくれるようになった。


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