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62 アンナside
しおりを挟むルカ様のことをこの方にはきちんと話さなければならない。
私が初めてルカ様とお会いしたのはルイ様が6歳になってすぐの頃。
「ルイ様、本日は天気がいいので窓の近くでお勉強しましょう。」
「・・・アンナ、僕ルイじゃないよ。ルカだよ?」
当たり前のようにそう言われた。
「・・・え?」
そこでルカ様から教えていただいたのは、ルカ様という人格が芽生えたのは5歳のころからだという。
別の人格ではあるがお互いを認識しているみたいだ。
ルイ様に聞いてみると、
「うん、頭の中にね誰かいる感じはしてたんだ。」
初めはうっすら認識しているだけだったがどんどん認識の度合いは大きくなり、ルイ様は1人の時にときおりルカ様と話しているようだった。
「話してくれる時もあれば話してくれない時もあるんだ。」
ルカ様という存在はルイ様を支えているのだと確信が持てるほどお互いを大切に思っているようだった。
本来であれば医者に見せた方がいいのだろう。だが、国王の命でルイ様を医者に見せることができない。
私自身ルイ様に何かがあった時のためにと医学の勉強はしているが、このような症状を診れるほどの知識は私にはなかった。
ルイ様もルカ様もこの国のせいで苦しんでいる。この国はおかしい。そう声を大にしたかった。でも、ルーチェ教に侵されたこの国ではそんなこと無駄なのだろう。初子が男であれば不幸、そんなの誰が言い始めたんだろうか。どんな根拠があってそんなふざけた教えを広めたのだろう。
平民ですらその迷信を信じ、自分の子に冷たく当たる者も少なくない。貴族は初子の男を別の家の養子に出してしまうこともよくある話だという。
私自身も前まではそれが当たり前だった。でも、ルイ様と過ごしているとなんで当たり前に思っていたのか疑問しか湧かない。
こんな仕打ちに耐えられるそんなルイ様は本当にお強いと、そう思っていた。
私は、ルイ様をちゃんと支えられてなかったんだろうか。ルイ様はまだ6歳だ。耐えられるわけがないのに、、、。
もう1人の人格の存在を私はどうしていいのかわからなかった。どう接していいのかも分からなかった。私が支えきれなかったからルカ様という存在が生まれたのだと自分を責めた。
そんな私の頭の中など賢いルイ様はお見通しだったんだろう。私から今どなたですかと聞かない限りルカ様が名乗ってくれることはなかった。
ルカ様が名乗ったのはルイ様を守って欲しかったからだ。ルカ様がアレルギーのことを教えてくれなければルイ様は亡くなってしまったかもしれない。
私が一緒にいられる時間は限られている。1人の時間にルイ様を支えているのはルカ様だ。
だからあの日、10冊の本を買った。ルイ様が好きな幸せな物語を5冊とルイ様から聞いたルカ様の好む謎解きの要素のある物語。
渡すことは叶わなかったけど。
「ですので、私自身知っていることは多くないのです。申し訳ありません、セドリック様。」
「そんな、謝らないでください。ルカという名前を知れたことが何より嬉しいのですから。」
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