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前途遼遠

LV257 側近タナカ

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「おい、タナカ。勇者をここへ連れて来い!」

 タナカとは、ブリズエラの一番の側近で、蛙の魔物である。知性が高く人語の扱いにおいては特に秀でた者である。

「ここへ? 私がですか?」

「ああ、そうだ。戦うにしても城の中でここが一番広い。それにお前が一番まともに人間と話ができるだろ?」

「でも、怖いですよ」

「俺様より、勇者の方が怖いと?」

「いえ、そんな訳では……」

「じゃあ、つべこべ言わずに行って来い!」

「はいー‼」

 タナカは城の中腹部へ向かう。そして、ブリズエラは最上部の自身の部屋で玉座に座しタケルを待つ。

「おい、ブリズエラ。トーレムグレイグ王に椅子を譲れ」

「断る」

「は?」

「かまわぬよ、レイモンド。ここは、ブリズエラの城だ」

「そうですか……」

 
 その頃、城の中腹部では魔物達とタケルによる戦いが繰り広げられていた。

「こっちにいるぞーー」

「グオオオ」

「つえぇー」

「ギエェェェ」

 強くなったタケルにブリズエラの配下では到底かなわず、瞬く間に中腹部はタケルに倒された魔物で埋め尽くされていく。

「タケルとやら!」

 タナカは「はぁはぁ」と息を切らせながら、タケルに話しかける。

「蛙ごときが僕を止める?」

 タケルの手に魔力を集まっていく。

「うおおーー、待て待て! 私は案内役である。ブリズエラ様は城の最上部へいらっしゃるのだ」

「最上部?」

「そうだ! だから、ブリズエラ様は『呼んで来い』と、私に使いを言い渡されたのだ」

「なるほど……僕に最上部へ来いと?」

「その通り。私が城の最上部へは私が案内しよう。こちらだ!」
 そう言うと、タナカはタケルに背を向け歩き出した。


 タナカはなかなか戻って来ない。

「遅い! アイツは何をしているんだ」
 ブリズエラはあきらかに苛つき始めていた。

「何やら城も静かになったし、こちらへ向かっているのだろう」

 静かに『ブリズエラの間』も扉が開く。

「タナカーー!」

 *ブリズエラは叫んだ。

 ふらふらと覚束《おぼつか》ない足取りで入ってきたのは、タケルによりボコボコにされたタナカだった。

「何があったんだよ」
 レイモンドが心配そうにタナカに歩み寄る。

「勇者タケルにやられました」

「――して、そのタケルはどうしたのじゃ?」

 すると、タナカはブリズエラの方を向き言い放った。

「何故僕が、わざわざそこまで行かないといけないんだ。来るならお前が来い! 以前の場所で待つ――だそうです」

「あの野郎……」                   ……つづく
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