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サイテハの洞窟へ
LV33 宴会にて
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トレームグレイグからサイテハの洞窟へ向け北上し始めた一行は、休憩を挟みながら四時間ほどかけようやくトーレムグレイグ周辺に広がる草原地帯を抜けだした。
さすがに大人数による遠征は、統制が取れにくく進行速度が遅くなってしまう。なかなか進まない馬車の中でフミヤとモコは暇を持て余してした。
「フミヤさん暇ですね~」
「うん、暇だ」
「最前列の方の馬車はモンスターが出てたびに、降りて討伐してるらしいですよ」
「俺らは黙って馬車に乗ってるだけだもんね」
「だったらもっと前の馬車に乗せてもらいましょうよー」
ジンは呆れた顔で二人に言う。
「前線は城の兵士で固めてるんだ。お前らに出番なんてねえよ」
「オーナー、でも暇じゃありません? どうせなら、現地集合ってことにしてくれたらいいのに」
ジンは頭を掻きながらため息をつく。
「たぶんお前ら、この精鋭の中じゃ最弱だぞ!」
「えぇー、でも私、魔法使えるよー!」
「はぁ~。とりあえず、おとなしくしておけ。じきに忙しくなる」
フミヤとモコが文句を言い続けて半日弱経過した後、一行は休憩地点である『アクランの町』に到着した。
城兵のマルク隊長が皆を集める。
「今日はとりあえずここで夜を越し、明日にクオ平原へ入る予定だ」
「クオ平原を抜けタカチーホ渓谷を超えれば、いよいよサイテハの洞窟だ。今日は皆しっかり休んでくれ!」
「おお‼」
夜になり『アクランの町』の広場では盛大な宴が開かれようとしていた。今回の遠征費用は全てトーレムグレイグ王が国費で賄《まかな》ってくれるらしい。
大部隊による遠征の際には宴を開く事が風習となっている。冒険者達は、食料や酒類を現地調達し、大金を町に落としていく。遠征の経由に選ばれた町は、冒険者達によって潤うため町人達は手厚く迎えてくれる。さらに国費ともなると上限に歯止めなく、町人達の接客にも力が入る。
「カンパーイ‼」
掛け声と共に始まる宴。
「ジンさん 始まる前から飲んでますよね?」
(モコするどいツッコみ)
フミヤもジンに付き合わされ、町に着くや否やビアを飲まされている。
「オーナーもう10杯目ですよ。明日に響きますよ」
「馬鹿野郎! こんな量、飲んでる内に入らねえよ」
「は、はあ」
「あっ! それとモコには飲ますなよ。あいつ、酒に弱いうえに酒癖悪いからよ」
「え⁉ オーナーの隣で、もう横でビア飲んでますよ」
「はっ?」
*モコは酔っている。
「えへへ。花火上げる?」
*モコはファイアーボールを唱えた。
*モコはファイアーボールを唱えた。
*モコはファイアーボールを唱えた。
*モコはファイアーボールを唱えた。
夜空に高々と火の玉が飛んでいく。そして、どこかで人の悲鳴が聞こえた。
「ば、馬鹿……モコ、止めるんだ! フミヤー、早くモコの杖を奪え」
必死に止めるジンとフミヤ。
「はははー」
モコは笑っていた。
それぞれが羽目を外して騒いでいるため、モコの行動はさほど気にされなかった。
「フミヤさーん。珍しくカバン持ってますね?」
「いろいろ持ってくるものがあってね。調味料とか包丁とか……」
ジンはあきれた顔をする。
「おまえは、料理大会にでも行くつもりなのか?」
「いや、一応あった方がいいかなと。それに落ち着くでしょ」
ジンとの会話に気を取られているフミヤの隙をつき、モコは横に置いてあった、フミヤのカバンを開けようしていた。
「あっ、返せ、モコ!」
「わっ、眩しい」
カバンから輝かしい光が一瞬漏れたが、それを隠すようにフミヤは慌ててカバンの口を閉じた。
「今の光なに? よく見えなかったんですけど」
モコは目をこする。
「お前は何を持ってきたんだ?」
ジンも漏れた光を見て 気になっているようだ。
「えっと、ペット、ペットです。置いて行ったら可哀そうかなって」
「見せてみろ」
「見たいー! 私も見たーい」
(今はまずい、絶対大騒ぎになる)
「ここではちょっと……後で宿に帰ったら見せるから」
それ以降、フミヤは大事そうにカバンを抱え離さなかった。
「いいじゃん、見せてよーー」
「駄目だってば」
騒いでいるフミヤ達の背後から聞き覚えのある声がする。
「ここにいたのか? フミヤ、探したぞ」
フミヤが瞬時に声の主を悟り、振り向きながら返事をする。
「ドレン、久しぶりドレン。ようやく合流できたみたいだね」
偉大なる探検家ベンの弟子、アルベーノ・ドレンである。
「お前が言っていた『案』って、そういう事か……」
「まだ、ベンさんにはかないませんが、出来る限り頑張ってみせます」
ジンはドレンと握手し、フミヤ・ジン・ドレンは三人で改めて酒を酌み交す。
*モコは眠っている。
*モコは目を覚まさない。
*モコは眠っている。
酒豪のジンに捕まった二人は朝方まで酒を付き合わされたのだった。
*フミヤは二日酔いになった。
*フミヤは18のダメージを受けた。
*ドレンは二日酔いになった。
*ドレンは15のダメージを受けた。
――――――――――――――――――――――――――――――
ダストン・ジン 元A級冒険者(現モンペロオーナー)
モコ 元C級冒険者(現モンペロウェイトレス)
アルベーノ・ドレン B級冒険者(秘境ハンター)
フミヤ 等級非認定、未登録のため。(ただのシェフ)
さすがに大人数による遠征は、統制が取れにくく進行速度が遅くなってしまう。なかなか進まない馬車の中でフミヤとモコは暇を持て余してした。
「フミヤさん暇ですね~」
「うん、暇だ」
「最前列の方の馬車はモンスターが出てたびに、降りて討伐してるらしいですよ」
「俺らは黙って馬車に乗ってるだけだもんね」
「だったらもっと前の馬車に乗せてもらいましょうよー」
ジンは呆れた顔で二人に言う。
「前線は城の兵士で固めてるんだ。お前らに出番なんてねえよ」
「オーナー、でも暇じゃありません? どうせなら、現地集合ってことにしてくれたらいいのに」
ジンは頭を掻きながらため息をつく。
「たぶんお前ら、この精鋭の中じゃ最弱だぞ!」
「えぇー、でも私、魔法使えるよー!」
「はぁ~。とりあえず、おとなしくしておけ。じきに忙しくなる」
フミヤとモコが文句を言い続けて半日弱経過した後、一行は休憩地点である『アクランの町』に到着した。
城兵のマルク隊長が皆を集める。
「今日はとりあえずここで夜を越し、明日にクオ平原へ入る予定だ」
「クオ平原を抜けタカチーホ渓谷を超えれば、いよいよサイテハの洞窟だ。今日は皆しっかり休んでくれ!」
「おお‼」
夜になり『アクランの町』の広場では盛大な宴が開かれようとしていた。今回の遠征費用は全てトーレムグレイグ王が国費で賄《まかな》ってくれるらしい。
大部隊による遠征の際には宴を開く事が風習となっている。冒険者達は、食料や酒類を現地調達し、大金を町に落としていく。遠征の経由に選ばれた町は、冒険者達によって潤うため町人達は手厚く迎えてくれる。さらに国費ともなると上限に歯止めなく、町人達の接客にも力が入る。
「カンパーイ‼」
掛け声と共に始まる宴。
「ジンさん 始まる前から飲んでますよね?」
(モコするどいツッコみ)
フミヤもジンに付き合わされ、町に着くや否やビアを飲まされている。
「オーナーもう10杯目ですよ。明日に響きますよ」
「馬鹿野郎! こんな量、飲んでる内に入らねえよ」
「は、はあ」
「あっ! それとモコには飲ますなよ。あいつ、酒に弱いうえに酒癖悪いからよ」
「え⁉ オーナーの隣で、もう横でビア飲んでますよ」
「はっ?」
*モコは酔っている。
「えへへ。花火上げる?」
*モコはファイアーボールを唱えた。
*モコはファイアーボールを唱えた。
*モコはファイアーボールを唱えた。
*モコはファイアーボールを唱えた。
夜空に高々と火の玉が飛んでいく。そして、どこかで人の悲鳴が聞こえた。
「ば、馬鹿……モコ、止めるんだ! フミヤー、早くモコの杖を奪え」
必死に止めるジンとフミヤ。
「はははー」
モコは笑っていた。
それぞれが羽目を外して騒いでいるため、モコの行動はさほど気にされなかった。
「フミヤさーん。珍しくカバン持ってますね?」
「いろいろ持ってくるものがあってね。調味料とか包丁とか……」
ジンはあきれた顔をする。
「おまえは、料理大会にでも行くつもりなのか?」
「いや、一応あった方がいいかなと。それに落ち着くでしょ」
ジンとの会話に気を取られているフミヤの隙をつき、モコは横に置いてあった、フミヤのカバンを開けようしていた。
「あっ、返せ、モコ!」
「わっ、眩しい」
カバンから輝かしい光が一瞬漏れたが、それを隠すようにフミヤは慌ててカバンの口を閉じた。
「今の光なに? よく見えなかったんですけど」
モコは目をこする。
「お前は何を持ってきたんだ?」
ジンも漏れた光を見て 気になっているようだ。
「えっと、ペット、ペットです。置いて行ったら可哀そうかなって」
「見せてみろ」
「見たいー! 私も見たーい」
(今はまずい、絶対大騒ぎになる)
「ここではちょっと……後で宿に帰ったら見せるから」
それ以降、フミヤは大事そうにカバンを抱え離さなかった。
「いいじゃん、見せてよーー」
「駄目だってば」
騒いでいるフミヤ達の背後から聞き覚えのある声がする。
「ここにいたのか? フミヤ、探したぞ」
フミヤが瞬時に声の主を悟り、振り向きながら返事をする。
「ドレン、久しぶりドレン。ようやく合流できたみたいだね」
偉大なる探検家ベンの弟子、アルベーノ・ドレンである。
「お前が言っていた『案』って、そういう事か……」
「まだ、ベンさんにはかないませんが、出来る限り頑張ってみせます」
ジンはドレンと握手し、フミヤ・ジン・ドレンは三人で改めて酒を酌み交す。
*モコは眠っている。
*モコは目を覚まさない。
*モコは眠っている。
酒豪のジンに捕まった二人は朝方まで酒を付き合わされたのだった。
*フミヤは二日酔いになった。
*フミヤは18のダメージを受けた。
*ドレンは二日酔いになった。
*ドレンは15のダメージを受けた。
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ダストン・ジン 元A級冒険者(現モンペロオーナー)
モコ 元C級冒険者(現モンペロウェイトレス)
アルベーノ・ドレン B級冒険者(秘境ハンター)
フミヤ 等級非認定、未登録のため。(ただのシェフ)
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