そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない

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新生活

ウッチ採集

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 植物採集はEランクの中でも特に初心者向けらしい。冒険者二日目の鉄次郎には好仕事だ。

 服を新調したおかげで草むらに入っても痛くない。

「さて、探す植物は──ウッチ。なになに、鎮痛薬の作用がある草か」

 聞き覚えのない名前だが、毎日聞き覚えのないことばかりなので、知らないということにも慣れてきた。

 ウッチは陽の当たる場所にあり、ひょろりと細長いらしい。特徴的な見た目なので、素人目にも分かりやすそうだ。

 最初にいた草原以外知らないので、とりあえずそこに向かいウッチ探しを始めた。

「無いなぁ」

 簡単に見つかると思っていたが、それらしきものは見当たらない。今日は諦めようか。しかし、服を購入したため懐が心許ない。

「日が暮れるまではやってみよう」

 今日までの中でウッチを見かけてはいないだろうか。朧げな記憶を辿ってみる。

「……ゴブリンのところに細長いのがあったような無かったような」

 あそこは少々時間がかかるので、ゴブリンのところに無かったら明日改めるしかなくなる。しかし、あそこ以外候補も無い。鉄次郎はゴブリン村へと歩き出した。

「ゴブリンたちがまた怒りだしたらどうしようか」

 まだ友好的な交流が出来ておらず少しの不安があるものの、もう向かっているので気にしないことにした。

 間もなくゴブリン村というところで、ウッチに似た植物がいくつか確認できた。

「これだ」

 見本と突き合わせ、ウッチを選んで用意された布袋に入れていく。これ一杯に入れることで成功とみなされるため、鉄次郎は一生懸命詰め続けた。

「おや」

 途中、木の陰からゴブリンの子どもがこちらを覗いていた。手招きをしてみたが、走り去ってしまった。仲良くなるにはもう少し時間が必要そうだ。

「さて、そろそろ日が暮れる」

 袋を縛り、背負って山を下りる。ゴブリンが住んでいるからか、他のモンスターは見かけなかった。

 街に戻り、ギルドでウッチを提出する。メイが驚いた表情を見せた。

「こんなに、すごいですね」
「袋一杯と書かれていたので、沢山採ってきました」
「袋の中ギチギチ……とても素晴らしいです。有難う御座います」

 どうやら多すぎたらしいが、多くて困ることはないだろう。メイから報酬を受け取る。これで数日働かなくとも生活ができる。

 本来ならば毎日働いた方が安定していいのだろうが、老体ということを自覚しているので、休息も大事な仕事のうちなのだ。
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