そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない

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新生活

新しい服

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 翌日、ルルの電撃訪問を受けつつ午前中を過ごした鉄次郎は、午後になってから町へと繰り出した。目的はもちろんギルドだ。

 ギルドに入ると、受付のメイが気付いて手を振ってきた。

「こんにちは。鉄次郎さん、昨日は有難う御座いました」
「いえ、こちらこそギルドについて詳しく教えてくださり助かりました」

 深々お辞儀すると、メイが慌てて両手を振った。

「私は何もしていません。それより、今日はクエストを見にいらっしゃったんですか?」
「はい。いくつか拝見させていただきます」
「ごゆっくりどうぞ」

 他の冒険者に混ざって壁の張り紙を見る。何とはなしに横の人物を見遣れば、冒険者らしい装備を身に着けていた。

 一方鉄次郎は私服に装備は鉄佳のみ。しかも服は甚平なので防御力は皆無と言えよう。

──次の報酬が手に入ったら服を買うか。いや……今日買ってからクエストに向かおう。

 鉄次郎が一枚の紙を取る。植物採集のものだ。草むらに長時間いることになるかもしれないので、膝下が素足の甚平はかなり不利だ。おかしな虫にでもくわれて腫れたら病院行きになってしまう。

「メイさん、こちらをお願いします」
「Eランク、植物採集ですね。承りました。終わりましたら、受付でギルドカードをご提示ください」

 メイがギルドカードとクエスト用紙をスキャンする。これで誰が何を挑戦中なのか把握できるらしい。便利なシステムだ。

「分かりました」

 カードを受け取ってギルドを出る。採集に向かう前に服屋へ向かった。

 店の中は服で埋め尽くされていた。元いた世界の服屋とは違い、平積みで並んでいるものはなく、全てハンガーにかかっていた。とにかく枚数が多くてギチギチに仕舞われている。

 普段服を買うことがなく、またこの世界の流行りが分からないので、店員に動きやすい服装でおすすめを教えてもらった。

「冒険者様ですね。ですと、こちらなら動きやすくていいと思います」

 女性店員が黒の長袖シャツとグレーのズボンを持ってきた。シャツはTシャツのような素材で着やすく、ズボンはカーゴパンツに似ている。試着してみると、サイズもちょうどよかった。

「ではこちらにします。おいくらですか」
「四千ビッツです」

 残っていた金で支払いを済ませ、その場でタグを切ってもらい新しい服で店を後にする。

 今の支払いで金は三千ビッツとなった。これではさすがに心許ないので、できれば今日報酬をもらっておきたい。

「よし、行こう」

 鉄次郎は歩き出した。
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