そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない

文字の大きさ
上 下
30 / 43
新生活

冒険者とは

しおりを挟む
「しばらくはゆっくりしたいですが、それにはお金を稼がねばなりません」

 縁側に三人揃って座り、のんびり空を見上げながら世間話をする。

「なんで? 鉄ちゃんならパパに言えばいっぱいもらえるよ」

 ルルの提案に鉄次郎が両手を振る。

「いえ、いつまでもお世話になるわけにはいきません。家を与えてくださったのに、これ以上は。なので、一人で生活できるよう仕事を探そうと思っています」

 七十の体では少々不安があるものの、吸収を上手く使用すればある程度の肉体労働も可能だろう。

──早いところ見つけないと、お酒が飲めなくなってしまう。

「老体の私を雇ってくださるところがあるといいですが」

 すると、シルアが手をパンと叩いた。

「うちのお城で働くとか! あとは国を出ない冒険者とか」
「お城ですか。それに冒険者とは」
「冒険者鉄ちゃん、絶対カッコイイ」

 ルルが拍手をして鉄次郎を見上げる。鉄次郎は頷いた。

「冒険者について詳しく教えていただいてもよろしいですか?」
「任せてください!」

 シルアは丁寧に冒険者について説明を始めた。

 冒険者とは、文字通り冒険しながら依頼された仕事をこなす職業である。

 冒険者になるにはギルドで証明書をもらうことが必要で、それが身分証明書にもなる。国境を越える際は証明書を提示することが義務付けられている。

 国内にも沢山の依頼があるため、国内のみで活動する冒険者も多数いる。仕事はピンキリで、植物採集などの簡単なものからモンスター退治の難しいものまである。

 鉄次郎は元の世界とは異なる職業に興味深く聞き入った。

「面白そうです。仕事内容もいろいろな種類があるようですから、私にもできるものがあるかもしれません」

 どうにか一人で生活できそうな道が現れてほっとする。

──日本に帰る方法が見つからない今、ここで自立して迷惑をかけずに生活をしたい。

 ここで三人で食べている菓子も、城からもらったものだ。鉄次郎は手元を見つめ、さっそく明日から活動を開始することにした。

「シルアさん、ギルドの場所を教えていただいてもよろしいですか?」
「OKです。地図を描きますね」

 サラサラとシルアが描き進めるが、段々とその顔が暗くなっていった。

「す、すみません。私、絵が苦手なこと忘れていました……」

 出来上がったそれは、文字は読めるものの、その横にはペンで描かれた無数の何かが紙を這っていた。鉄次郎が注意深くそれらを眺める。シルアは顔を耳まで赤くさせた。

「これは……動物でしょうか」
「公園です」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

処理中です...