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新生活
職人登場
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「重量があって危ないので、少し離れていてください」
「はい!」
イイコに鉄次郎から離れたルルを確認してから、鉄佳に意識を向けた。
──吸収……吸収か。草花から力をもらう。しかし、今は戦闘じゃないから鉄佳に力を入れてしまっては意味が無い。鉄佳を通して私に力を取り込まなくては。
目を閉じ、集中する。周りの空気を読み、自分に集まってくるようイメージする。少しずつ体が温まるのを感じた。
「……うむ。試してみよう」
鉄佳を戻し、近くにあった木材を両手で持ち上げる。最低でも大人二人いないと無理であろう太さの木だ。
「おおおお!」
それはあっという間に頭上まで上がった。調子に乗って片手で木材を支えてみる。それでもまだ余裕がある。【吸収】が上手くいったのだ。三人から歓声が上がる。
「成功だ!」
「これで魔王が倒せますね!」
「素晴らしいです、鉄次郎様!」
「魔王はいないですから」
一人おかしなことを言っているが、とりあえず成功してほっとした。
「職人さんはどうしましょう?」
「力仕事はなんとかなりそうですが、建築の知識が乏しいので、専門家の方が二、三人いらっしゃると助かります」
「オッケーです! お父様に伝えておきますね」
シルアが軽く了承する。あの皇帝なら何十人と用意してくれそうなので、シルアにはしっかり少人数と伝えてもらわなければ。
「よし、このまま私は作業を進めよう」
「ルルも手伝う」
「私も」
「シルア様はそろそろ戻りますよ」
キリに言い返したいが、残念ながらシルアにその権利は無い。今日も今日とて勉強を放ってきている。
「うう……私……あとで見に来ます……」
「お待ちしていますよ」
後ろ髪を引かれながら去っていくシルアに手を振る。ルルが鉄次郎の周りをクルクルと回った。
「ルルも運ぶ」
「では、こちらの木材をお願いいたします」
鉄次郎が木材の端にあった細いものを手で指し示す。これなら少女の力でも問題ないだろう。ルルは喜々として両手でそれを持ち上げた。
デザイン図を元に必要な木を運んでいく。そうしているうちに頼んでいた専門家がやってきた。伝えた通り三人だったのでほっとする。
「お待たせいたしました。さっそく始めさせていただきます」
年配の男が若い二人に指示を出す。鉄次郎たちが近くに置いた木材をテキパキと積み始める。鉄次郎が追加の木材を素手で持ってくるので、三人は感心した表情をさせた。
「異能力をお持ちをお伺いしておりましたが、素晴らしいですね」
聞くに、職人たちは強化魔法が施された手袋をしており、重い物や熱い物を持ち上げられるようになっているそうだ。
「はい!」
イイコに鉄次郎から離れたルルを確認してから、鉄佳に意識を向けた。
──吸収……吸収か。草花から力をもらう。しかし、今は戦闘じゃないから鉄佳に力を入れてしまっては意味が無い。鉄佳を通して私に力を取り込まなくては。
目を閉じ、集中する。周りの空気を読み、自分に集まってくるようイメージする。少しずつ体が温まるのを感じた。
「……うむ。試してみよう」
鉄佳を戻し、近くにあった木材を両手で持ち上げる。最低でも大人二人いないと無理であろう太さの木だ。
「おおおお!」
それはあっという間に頭上まで上がった。調子に乗って片手で木材を支えてみる。それでもまだ余裕がある。【吸収】が上手くいったのだ。三人から歓声が上がる。
「成功だ!」
「これで魔王が倒せますね!」
「素晴らしいです、鉄次郎様!」
「魔王はいないですから」
一人おかしなことを言っているが、とりあえず成功してほっとした。
「職人さんはどうしましょう?」
「力仕事はなんとかなりそうですが、建築の知識が乏しいので、専門家の方が二、三人いらっしゃると助かります」
「オッケーです! お父様に伝えておきますね」
シルアが軽く了承する。あの皇帝なら何十人と用意してくれそうなので、シルアにはしっかり少人数と伝えてもらわなければ。
「よし、このまま私は作業を進めよう」
「ルルも手伝う」
「私も」
「シルア様はそろそろ戻りますよ」
キリに言い返したいが、残念ながらシルアにその権利は無い。今日も今日とて勉強を放ってきている。
「うう……私……あとで見に来ます……」
「お待ちしていますよ」
後ろ髪を引かれながら去っていくシルアに手を振る。ルルが鉄次郎の周りをクルクルと回った。
「ルルも運ぶ」
「では、こちらの木材をお願いいたします」
鉄次郎が木材の端にあった細いものを手で指し示す。これなら少女の力でも問題ないだろう。ルルは喜々として両手でそれを持ち上げた。
デザイン図を元に必要な木を運んでいく。そうしているうちに頼んでいた専門家がやってきた。伝えた通り三人だったのでほっとする。
「お待たせいたしました。さっそく始めさせていただきます」
年配の男が若い二人に指示を出す。鉄次郎たちが近くに置いた木材をテキパキと積み始める。鉄次郎が追加の木材を素手で持ってくるので、三人は感心した表情をさせた。
「異能力をお持ちをお伺いしておりましたが、素晴らしいですね」
聞くに、職人たちは強化魔法が施された手袋をしており、重い物や熱い物を持ち上げられるようになっているそうだ。
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