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転移

お出迎え

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 二人に詰め寄られ、鉄次郎は両手を振った。

「いや、すぐ死ぬとかはないから。ちょっと肝臓を壊していて、医者からは長くないと言われているだけで」
「十分問題じゃないですか!」
「いつからこんなことに……そうです、お医者様に診て頂きましょう」
「そうだそうだ!」
「病院には定期的に行ってますし」

 と言いつつ、異世界に来たとなると、かかりつけの病院は作っておいた方がいいかもしれない。もうすぐ妻の元へ旅立つという覚悟は出来ているものの、今すぐ死にたいわけではない。

「ね、行きましょ? 知り合った早々お見送りすることになったら泣いちゃいます」
「ううん……分かった。行きます」
「よし!」

 孫みたいな子から頼まれたら断るなんて無理。鉄次郎の受診が決定した。ソルトもうんうん頷いている。とりあえず丸く収まりそうだ。




「と、いうわけでもないのか」

 異能力が判明し、病院行きも決定したが、受信結果が出るまでは安心出来ないことに気が付いた。しかし、どのような結果になるのかはある程度想像がつく。あとは、以前より悪くなっているかどうかだ。なんとなく腹を擦ってみる。
 教会から城までは近く、あっという間に帰ってきた。

「そういえば、病院はどこにあるのかな?」
「王族付きの医師団がいるの。部屋で診てもらえるよう言っておきますね」
「おお、ありがとう」

 門番に挨拶をしながら王宮に入る。皇帝と皇后が立っていた。ひっくり返るかと思った。

「鉄次郎さん、そろそろ帰宅するかと思い待ってました」
「お出迎え頂き恐縮です。ただいま戻りました」
「おかえりなさい。で、結果を聞いてもいいですか」

 やはり結果が知りたくて待っていたか。公務など放っておいて大丈夫なのだろうか。後ろの方で皇帝に付いていた男性がそわそわしている。多分大丈夫ではない。

「はい。異能力は【吸収】でした」
「やはり異能力を持っていましたか! 素晴らしい! 救世主!」
「おめでとう御座います。鉄次郎さん!」

 皇帝と皇后が手を叩くものだから、釣られて周りの人間たちも拍手をし出した。鉄次郎はぺこぺこ全員に照れながらお辞儀をする。とんだ羞恥プレイだ。

「ん? 待ってください。今、【吸収】とおっしゃいましたね?」
「はい」
「サロ! 図書館に行くぞ」
「承知致しました」

 急にフォルドが真面目な顔をして、後ろの男─サロ─に指示をした。何の事だか分からず付いていく。
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