精霊の愛の歌

黄金 

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14 ジオーネルの苦難

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 ーーーあああああぁーーーー

 僕は今日は礼拝の日でただ当番で出て来ただけだった。
 今日の白巫女装束はいつもの制約の掛かった巫女服ではない。
 ただの白い司祭服。
 精霊殿の使用人達は役職で様々な司祭服を着ている。
 白の巫女も精霊殿所属なのでよく駆り出される。
 ただ白巫女装束は精霊王に関わる時だけ着るので、普通の業務は白の司祭服になる。
 顔を隠してるのは何となく慣わしの様になってしまっているだけで、歌舞音曲を披露する訳ではないから、必ず隠す必要はない。
 礼拝を終えた人達に聖水を渡して聖木の枝を一枝渡す。
 それだけの仕事をしに来ただけだ。

 長いベールに白手袋、中の白の巫女が誰か分からない仕様は一緒だ。
 服がサラサラの軽い生地の重ね着ではなく、刺繍入りの重厚な服になるだけ。
 制約無いから声は出せるが、ジオーネルの人気はあまり良く無いので声出し無し顔見せ無しでいつも枝を渡してたのが悪かったのか。
 
 終わってやれやれ今日も一仕事したよ~と部屋に戻ろうとした。
 
「待ってくれ!」

 聞き覚えのある声にドキリとする。
 金の泰子だった。
 でも、いつもと雰囲気が違う。ジオーネルに対する冷たいものではなく、銀玲に対する好意が見え隠れする。
 
 やばい………。

 中の巫女がジオーネルではなく銀玲だと思われてる……。
 たらりと汗が流れた。
 どうする?直ぐにベールを取ってジオーネルだと言って誤解を解くべきか、走って逃げるか……。
 私は後者を取った。だってジオーネルの時の冷たい目が怖いんだもの!
 綺麗な顔が温度の無い顔で冷たく見て来るのだ。怖い……。
 
 身を翻し急いで控えの間を目指す。
 
「待ってくれ!逃げないで!」

 ヒィィィィィ……!?
 追いかけてこないで!!
 あと少し!
 扉を開いて閉めようとしたら、ガンッという音と共に無理矢理開かれる!!
 たいした距離では無いのにお互い息が乱れていた。
 ハァハァと息を吐きながら、金の泰子は扉を閉めた。
 やばい、そもそもこの部屋銀玲の部屋…………。墓穴を掘った自分に泣きたくなった。
 今からベールを取ってジオーネルですとは言い難い。
 声も出せない。だってジオーネルの声って高めの鼻にかかった声で特徴が有り過ぎるのだ。
 喋ったらアウト………!
 口を塞いで後ずさったら、此方の意思に気付いたのだろう、泰子は少し悲しそうな顔をした。

「すまない、この前の事を謝罪しようと思って………。」

 いや、いいです。いいんです!
 こくこくと頷いて、扉を指差す。
 出て行ってくれないかなって。

「感情が止まらず、申し訳ない。」

 そう言いながら近づいて来る金の泰子。
 更に後ずさると備え付けの一人掛けソファに躓いた。
 ホスンと座ってしまう。
 ああ、やばい。
 金の精霊王の眼が興奮しているのか炎が爆ぜる様に明滅している。
 金の泰子の腕が伸び、両手が肘掛けの両側に乗る。
 閉じ込められた格好になり、逃げ出せない。

「顔を晒したく無いのか?」

 両手で顔に掛かるベールを抑えていると、金の泰子が不機嫌そうに聞いてきた。
 このベールは薄いので近距離は不味いと手で覆う。

「君は………、………!」

 精霊名を言ったのかも知れない。君は、銀玲か、と。
 ハクハクと金の泰子の口が動いたが、言葉が出ていなかった。
 そこに精霊王の制約が動くなら、金の泰子の行動にも制約をかけて欲しい。

 金の泰子はハァと溜息を出して、徐に私の司祭服をたくし上げた。

「!?」

 足が露わになり、一気に履いていたズボンが脱がされる。下半身に空気が触れ、心許なさにブルリと震えた。

 何を……!?

「はぁ、良く鍛えているのだな。小柄で細身だがしっかりとした筋肉だ。」
 
 金の泰子は私の腹筋の溝を丁寧になぞった。
 横腹を撫で上げ、骨盤をなぞる。足の付け根を揉み解すように両手で擦り上げられ、その感触にゾワゾワと震えた。
 何も纏わない下半身を見つめられ、どうしていいか分からず固まっていると、足を広げられ間に座られてしまった。
 あまりの恥ずかしさにお尻を後ろにずらして逃げようとしたが、両膝の裏を持ち上げられ引っ張られる。

「…………!?」

 怖い!
 いくら好きな人でも、この意味の分からない行動に恐怖を覚えた。
 だって私のち、ち、ち、ちんこが!
 この前の金の泰子から行動が分からなくなってきた!

「こうすると良いと聞いたんだ………。」

 誰に?何を?
 疑問が頭を過ったが、金の泰子の行動に全身が凍りついた。

「!!!」
 
 丸見えだったちんこをペロリと舐められてしまった。
 ふーんという顔で落ちて来た金の髪を掻き上げる。
 
「この前は布越しだったからな……。一人一人違うとは本当か。」

 へえぇえ!?ちんこの形の事!?
 前世の弓弦の記憶から何故そんな当たり前のことを、と思ったが、天霊花綾の住人は性欲が薄い。性別も人であった頃の名残という意識しかないから、人のちんこの形なんて気にしないのだった!
 でも何で舐めた!!
 金の泰子は私のちんこをまじまじと見た後、亀頭を何の躊躇いもなく咥えた。
 舌でカリ首をなぞられ、快感に首をのけ反らせる。
 私の反応に気を良くしたのか、私のちんこを根元まで咥え込んだ。
 前世では清い交際を続けていたのだ。こんな経験など無く、自慰だって好きな蒼矢を思って扱いてただけ。
 それが、大好きな金の泰子に咥えられる日が来ようとは!
 いやその前に、この前の事もおかしい!誰だ!こんな事、金の泰子に教えてるのは!?

 生暖かい感触と蠢く舌に、縮み上がっていた筈の陰茎があっという間に育ってガチガチに固くなる。
 小柄な体型に合わせた様に、私のは小さめだ。
 金の泰子は余裕で根元まで口に含んでしまい、舌で裏筋を舐め上げ、ジュウと吸った。
 足に力が入り金の泰子の身体を挟んでしまう。

「んっんっんっ!」
 
 我慢できずに声が漏れてしまう。

 あああああぁ~~~!
 ダメダメ!!!

 力が入りもう少しで出てしまう!というところで金の泰子はジュルっと口から出した。
 手を伸ばして私の引いていた顎を掴んで持ち上げる。

「目を開けるんだ。」

 静かな命令に恐る恐る薄目を開けた。

 目に飛び込んできたのは金の光。
 視線が混じり合い、金の眼が笑った。

「やっぱり………。」

 金の泰子はただ銀玲だと確信が欲しかっただけ。答えてくれないなら無理矢理答えを出させるだけ。
 銀の光を確かめて、彼に近付きたい。

「緑の泰子に聞いたんだ……。」

 アイツかーーー!!!
 この寸止めの仕方も習ったのか!?
 
 金の泰子がもう一度咥えてきた。
 今度は眼を見て閉じるなと言葉に出さずに圧力をかけられて、眼を逸らす事も出来ずに見つめ返す。
 ベールで顔は隠れてるはず。
 だけど銀の光が漏れているのだろう。
 泰子の金の瞳が真っ直ぐに眼を貫いて来る。
 必死に片手で口を、片手は眼を覆う。
 指の隙間から覗く金の瞳が怖い。
 
 ジュポジュポと上下に扱かれて、ハッハッと息が上がっていく。

 ーーあぁ…!だめだめだめだめ!ーー

 頭が真っ白になった。
 ドピュという感覚に、ああ金の泰子の口に出してしまったという罪悪感に興奮する。
 全身に力が入り、足がピンと伸びる。
 背中も太腿も吐き出す度にブルブルと震えた。
 最後の最後まで吸われて一気に力が抜けていく。
 立ち上がった金の泰子が上から見下ろしてきて、喉がゴクリとなった。

 ああ、うそ、飲んだ……。
 信じられない。金の泰子のお腹の中に入っていった。

「苦いな…、青臭いとは本当か。」

 何言ってるの、この人。
 漸く金の泰子と眼を離すことが出来た。
 何気なく前方に眼をやると、泰子の股間も膨らんでる……?
 泰子達が着る服も和服と中華が混じった様なダボっとした服が多いが、それでも分かってしまうくらいに膨らんでいた。
 どうしよう。どうしたらいい?
 もうどうしたら良いか分からない。
 精霊王のせいだ。
 顔は隠せというのに下を隠してくれない精霊王が悪い。
 言葉を出せない様にしてるのが巫女服だけにしてる精霊王が悪い。
 なんかもう精霊王が悪い!
 普段感謝の歌を歌ってる相手に対して悪態をつく。


 ドスン


 視界が反転し見知った部屋に背中から落ちた。
 ここは、招霊門の大広間?
 眼をぱちくりさせると覗き込んでくる人影。
 サラサラと鮮やかな緑の髪が顔に掛かり、緑の瞳とかちあった。

「緑の精霊王様?」

「おー無茶苦茶悪態つかれて気付いたんだが……。金がほっとけと言うけど、流石に可哀想かと思って助けたぞ?」

 少年の姿をした緑の精霊王は腰に手を置いて同情的だ。

「あそこから面白くなるのではないか。」
 
 よく聞く声は金の精霊王。
 近くにいるのだろうが、助ける気が無かったのは理解出来た。
 
「個人の特定を禁止って言う制約は辞めた方が良く無いか?色合わせにこだわり過ぎるのは確かに良くねーけど。」

「そうかのう?いいアクセントになっておると思ったがのう~。ワクワクドキドキするでは無いか。」

 見てる側には面白いかも知れないが、当事者はたまったものでは無い。
 漫画やドラマ見てるんじゃ無いんだから!
 後、助けてくれるならもっと早く助けて欲しかった……。
 ジオーネルはさめざめと泣いた。

「やっぱ双方の同意はないとダメじゃねー?」

 なかなか立ち上がらないジオーネルに金の精霊王は言う。

「制約は掛けておるが、破るのが罪とはしていないのだぞ?どうにかして己が銀玲だと教えてみれば良いではないか。さすれば天霊花綾に残るのはお前じゃ。」

 分かっている。

「分かっております。でも、ジオーネルとしての私の誤解を解いてから明かしたいのです。」

 だって嫌いなジオーネルが銀玲だと知れば、銀玲としても嫌われかねないじゃないか。

「そんな呑気に構えてれば、選霊の儀は終わっちまうぞ?」

 緑の精霊王としてはジオーネルに頑張って貰いたい。
 黒の巫女は人特有の負の感情が強い様に感じるからだ。
 この天霊花綾に住まわせるには不安が残る。
 元々のジオーネルは気性が荒く妬みが強い性格で銀の泰子を産むには不適切と考えた。だから金の精霊王の言う通り黒の巫女の召喚に同意した。
 しかし、ジオーネルは向こうの記憶が蘇ると、気性が変わり穏やかになった。
 それならそれで、天霊花綾生まれのジオーネルの方が相応しい。
 そう緑の精霊王は考えていた。
 問題は金の精霊王がこの状況を楽しんでいる事だ。
 いや、こいつの事だ……。何か隠してる事があってもおかしくない。
 逃げた青と赤の精霊王が恨めしい。

 緑の精霊王は金の泰子が精霊殿から出たのを確認してから、ジオーネルを元の部屋に送ってあげた。

















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