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鈍すぎて、やっと点と点が繋がった俺はユズルに確認する。
「俺にマーキングって魔法をかけたか?」
電話の向こうでユズルの笑う音が聞こえた。
『ああ。マーキングのことを調べてくれたのか』
俺の心臓がバクバクと鳴る。
「よーし、マーキングについて正直に喋れ。全部だ。全部だぞ」
『うん』
ユズルの素直な態度が逆に怖い。
電話をスピーカーにして、おっさんも聞こえるようにした。
「えーっとまずだな。これをつけたのはいつだ」
『俺が学校をサボった日だ。初めてユウヘイを抱きしめてキスした日だ』
「あれな。ほっぺにチューだろ」
今なら分かるぞ。ユズルがマーキングしたから俺は翌日に熱を出してしまったんだ。
『うん。キスしても何も無かったし、後から成功すると思わなかったけど』
「で、これをつけた理由はなんだ」
『ユウヘイのことが好きだから。マークは薔薇にしたんだ。愛の花だから』
おっさんがヒュウと口笛を鳴らした。
俺は頭を抱えた。両思いなのは嬉しい。だけど、告白を先にしてくれ。
これは重い。相手の気持ちを確認する前に、独占欲全開にするってヤバいだろ
「ユズル。なんで告白する前にこれを俺につけたんだ」
『俺が大人になる前に誰かに取られたくないから』
「今、告白したら振られると思ったのか」
『うん』
俺はぬるくなったコーヒーを口にした。
振るわけない。むしろ隅々まで喰い付くしてしまいたい。
だけど14歳で大人と付き合って育った今の俺がさ、本能の手を引っ張って止めるんだよ。
「ユズル。俺もお前が好きだ。魔法なんて俺は使えないけどな、お前が途中で誰かと付き合ったとしても、ユズルが大人になるのを待って、告白しようと思ってたんだ」
『本当か?』
「本当だ。好きって気持ちは押し付けたくなるが、本気で好きなら相手のこと幸せにすること考えるだろ。ユズルが青春して、友だちや恋人を作って大人になるのを潰したくないからな。辛い時の逃げ場所の一つになってやって、一緒に飯を食べたり出来れば幸せなんだよ。なのにお前は、勝手にマーキングして、知らないふりしてニヤニヤしやがって。紳士になれ。紳士はそんなことしないぞ」
俺はユズルに説教をした。
俺の話を黙って聞いていたユズルが口を開いた。
『だって……俺のにおいが好きだって言うから、走ってユウヘイの所へ行っても何もしてこないし』
「あのな!俺がどれだけ我慢したか分かるか?良いニオイがするし、でかいのに可愛いし、抱きつきたいのを毎回我慢してたんだぞ。俺の隣は安全な場所じゃなくなったって、ユズルに避けられるのが一番怖かったし」
『……ユウヘイ』
「ユズル。俺は大人になるまで待つから、マーキングも外せ。魔法に頼らなくても俺の心は変わらない」
『嫌だ』
ぶほっ。
おっさんが吹き出し笑いをしたが、俺はそれどころじゃない。
「なんでだよ!まだ俺の気持ち伝わってないのか?!」
『違う。それは俺の恋人だって証だから消さない。ユウヘイが誰かに取られないよう、マーキングをもっと強くする』
「はあ?!」
なんでそうなる。
おっさんがニヤニヤしながら俺の肩をポンと叩いた。
「兄ちゃん、諦めろ。そいつの愛は重いぞ」
「愛は受け止めますよ。このマーキングをいつまでも絆創膏で隠せないんで。マーキングを知らない同僚や先輩達にも言われたんですけど、タトゥーにしか見えないんですよ。取引先にタトゥーしてるって思われたら、営業職の俺にはまずいんです」
「あー、それは問題だな。会社員がタトゥーしてると厳しいとこはクビかもな。魔法のマーキングですって説明されてもなあ。恋愛方面で信用がない奴は、仕事も信用できないぞって思われるだろうし。どっちにしても社会人として困るぞ」
「そうなんですよ」
スピーカーにしてるから、おっさんが俺を援護する声が聞こえているはず。
『そばにいるのは誰だ?』
そっちかよ!
「俺か?俺は魔法にちょっと詳しい、兄ちゃんのパチンコ仲間だ」
『……』
本当におっさんって何者だ。魔法を使えるし、実はどっかの偉い人なのか?
「ちなみに母ちゃんと娘がいるぞ。昔はボインだった母ちゃんが今も好きだ。ワハハッ!惚気さすなよ!」
『ふーん』
「ユズル。まあ、そんなわけだから、日曜はこのマーキングを消してくれ」
『考えておく』
電話が切られてしまった。
「まあ頑張れよ。男の方が単純だしよ。まずはご機嫌取りだな。うちの母ちゃんみたいに、ご機嫌取りにケーキ買ってやったら喜ぶぞ」
「ケーキ、ケーキで喜びますかね」
「甘いのが嫌いなら肉はどうだ」
焼き肉の方が良いって言われたら、バイキングに行こう。食べ放題でないと絶対に財布が悲鳴を上げちまう。
「もしくは寿司かもな。回らないお寿司たべたーいって」
「会社の接待以外で回らない寿司行ったことないと言って、回る寿司に連れて行きます」
「ハッハッハ!ここは奢ってやるから頑張れよ」
おっさんが注文票を手にして立ち上がった。
「あ、ありがとうございました」
俺は頭を下げてお見送りをした。
ユズルは愛が重い。勝手にマーキングなんてしてしまう。
あの整った顔立ちと大きな体なのに14歳。年下のいじらしさが可愛くて、許せてしまうんだ。
日曜は何を食べようか。やっぱり奮発して焼き肉バイキングがいいか。
おっさんについては謎が深まったが、ユズルとのことに光が見えた俺は家路についた。
「俺にマーキングって魔法をかけたか?」
電話の向こうでユズルの笑う音が聞こえた。
『ああ。マーキングのことを調べてくれたのか』
俺の心臓がバクバクと鳴る。
「よーし、マーキングについて正直に喋れ。全部だ。全部だぞ」
『うん』
ユズルの素直な態度が逆に怖い。
電話をスピーカーにして、おっさんも聞こえるようにした。
「えーっとまずだな。これをつけたのはいつだ」
『俺が学校をサボった日だ。初めてユウヘイを抱きしめてキスした日だ』
「あれな。ほっぺにチューだろ」
今なら分かるぞ。ユズルがマーキングしたから俺は翌日に熱を出してしまったんだ。
『うん。キスしても何も無かったし、後から成功すると思わなかったけど』
「で、これをつけた理由はなんだ」
『ユウヘイのことが好きだから。マークは薔薇にしたんだ。愛の花だから』
おっさんがヒュウと口笛を鳴らした。
俺は頭を抱えた。両思いなのは嬉しい。だけど、告白を先にしてくれ。
これは重い。相手の気持ちを確認する前に、独占欲全開にするってヤバいだろ
「ユズル。なんで告白する前にこれを俺につけたんだ」
『俺が大人になる前に誰かに取られたくないから』
「今、告白したら振られると思ったのか」
『うん』
俺はぬるくなったコーヒーを口にした。
振るわけない。むしろ隅々まで喰い付くしてしまいたい。
だけど14歳で大人と付き合って育った今の俺がさ、本能の手を引っ張って止めるんだよ。
「ユズル。俺もお前が好きだ。魔法なんて俺は使えないけどな、お前が途中で誰かと付き合ったとしても、ユズルが大人になるのを待って、告白しようと思ってたんだ」
『本当か?』
「本当だ。好きって気持ちは押し付けたくなるが、本気で好きなら相手のこと幸せにすること考えるだろ。ユズルが青春して、友だちや恋人を作って大人になるのを潰したくないからな。辛い時の逃げ場所の一つになってやって、一緒に飯を食べたり出来れば幸せなんだよ。なのにお前は、勝手にマーキングして、知らないふりしてニヤニヤしやがって。紳士になれ。紳士はそんなことしないぞ」
俺はユズルに説教をした。
俺の話を黙って聞いていたユズルが口を開いた。
『だって……俺のにおいが好きだって言うから、走ってユウヘイの所へ行っても何もしてこないし』
「あのな!俺がどれだけ我慢したか分かるか?良いニオイがするし、でかいのに可愛いし、抱きつきたいのを毎回我慢してたんだぞ。俺の隣は安全な場所じゃなくなったって、ユズルに避けられるのが一番怖かったし」
『……ユウヘイ』
「ユズル。俺は大人になるまで待つから、マーキングも外せ。魔法に頼らなくても俺の心は変わらない」
『嫌だ』
ぶほっ。
おっさんが吹き出し笑いをしたが、俺はそれどころじゃない。
「なんでだよ!まだ俺の気持ち伝わってないのか?!」
『違う。それは俺の恋人だって証だから消さない。ユウヘイが誰かに取られないよう、マーキングをもっと強くする』
「はあ?!」
なんでそうなる。
おっさんがニヤニヤしながら俺の肩をポンと叩いた。
「兄ちゃん、諦めろ。そいつの愛は重いぞ」
「愛は受け止めますよ。このマーキングをいつまでも絆創膏で隠せないんで。マーキングを知らない同僚や先輩達にも言われたんですけど、タトゥーにしか見えないんですよ。取引先にタトゥーしてるって思われたら、営業職の俺にはまずいんです」
「あー、それは問題だな。会社員がタトゥーしてると厳しいとこはクビかもな。魔法のマーキングですって説明されてもなあ。恋愛方面で信用がない奴は、仕事も信用できないぞって思われるだろうし。どっちにしても社会人として困るぞ」
「そうなんですよ」
スピーカーにしてるから、おっさんが俺を援護する声が聞こえているはず。
『そばにいるのは誰だ?』
そっちかよ!
「俺か?俺は魔法にちょっと詳しい、兄ちゃんのパチンコ仲間だ」
『……』
本当におっさんって何者だ。魔法を使えるし、実はどっかの偉い人なのか?
「ちなみに母ちゃんと娘がいるぞ。昔はボインだった母ちゃんが今も好きだ。ワハハッ!惚気さすなよ!」
『ふーん』
「ユズル。まあ、そんなわけだから、日曜はこのマーキングを消してくれ」
『考えておく』
電話が切られてしまった。
「まあ頑張れよ。男の方が単純だしよ。まずはご機嫌取りだな。うちの母ちゃんみたいに、ご機嫌取りにケーキ買ってやったら喜ぶぞ」
「ケーキ、ケーキで喜びますかね」
「甘いのが嫌いなら肉はどうだ」
焼き肉の方が良いって言われたら、バイキングに行こう。食べ放題でないと絶対に財布が悲鳴を上げちまう。
「もしくは寿司かもな。回らないお寿司たべたーいって」
「会社の接待以外で回らない寿司行ったことないと言って、回る寿司に連れて行きます」
「ハッハッハ!ここは奢ってやるから頑張れよ」
おっさんが注文票を手にして立ち上がった。
「あ、ありがとうございました」
俺は頭を下げてお見送りをした。
ユズルは愛が重い。勝手にマーキングなんてしてしまう。
あの整った顔立ちと大きな体なのに14歳。年下のいじらしさが可愛くて、許せてしまうんだ。
日曜は何を食べようか。やっぱり奮発して焼き肉バイキングがいいか。
おっさんについては謎が深まったが、ユズルとのことに光が見えた俺は家路についた。
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