公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎

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二章 士官学校

新学期⑥

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「なんだか落ち着かないわね。鬱陶しい」

相変わらず遠慮のないアマーリエである。
始業式を終え、他の生徒とともに教室へ移動した3人だ。
この後はルイスから、教室で今季についての説明を受けることになっている。

「いっそのこと、声をかけてくれたらいいんだけどな」

ジェイデンも苦笑いだ。

20人程の教室の中で、生徒の半数程度は平民出身の者である。
彼らはジェイデン達に自分から声をかけることはないが、興味は隠せないようだ。貴族の生徒も少し遠慮がちに視線を向けている。
その気配に、耐えられないとアマーリエが机に突っ伏した。

「北でも大変だったけど、王都のご令嬢は容赦ないわよ。蜜に群がる蟻みたいなものよ」
「いつも面倒をかけてすまないな」

吐き捨てるアマーリエに、申し訳ないと苦笑顔のジェイデンだ。

「そうよ! いつも貴方の窓口みたいになってたのよ。…今はセオドアさんがいるから全部押し付けるつもりだけど」

士官学校は男にとっては文字通りだが、貴族の娘達にとっては将来有望な結婚相手を見つける場所兼花嫁修行の場所という認識が強い。
貴族女性も、嫁いだ後は夫の領地を守るためにその力を使わなければならないからだ。魔力が強い令嬢は、それだけで有利な立場に立てるのである。

「私とか、ソフィアみたいなのは珍しいのよ」

たまに、貴族の中にもアマーリエのように本気で士官希望の女性がいるが、彼女はすでに婚約をしていながらも、婚約者のメイソンとともに騎士団幹部を目指している珍しい女性だ。
平民からの推薦組は女騎士希望か、卒業後にその才能を見込まれて貴族に士官する者とに分かれており、すでに高位貴族の侍女として付いてきている生徒もいる。

「王国中から貴族の子女が集まっているものね。家から色々言われている子もいるみたい」

ソフィアが言うように、少しでも家柄のいい相手を見つけるようにと送り出されたご令嬢にとっては、ここはある種の戦場のようなものである。同性の友人としても、家同士の派閥や立場で相手を見ていることも多いようだ。

「平民でも、たまに貴族と恋愛する子もいたりするみたいだし」

まれに貴族に見染められる平民もいないわけではなく、そんな機会を狙っている平民出身者も中にはいた。

「早く場馴れすることね。貴方、見た目は女慣れしてそうなのにそうでもないから」
「勘弁してくれ…」
「セオドアさんとか、その辺上手よ。教えてもらいなさい」

容赦ないアマーリエの冷やかしに親友の飄々とした笑みが浮かび、嫌そうな顔をしてジェイデンは口を閉じた。













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