公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎

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一章 旅路

再会②

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「もう部屋に戻っちゃうの?」

食事を終えて部屋に戻ろうとするジェイデンの腕に、ディアが抱きついて引き留める。
どうしたものかと困った顔をしているジェイデンに、アマーリエが助け舟を出した。

「いい加減にしなさいな。しつこい男は嫌われるわよ」
「悪いな、まだ部屋が片付いてないんだ」

おやすみ、と挨拶を残して2人は食堂を後にする。
その後ろ姿を見送ってから、ディアが面白そうな表情で切り出した。

「ねえねえ、絶対セオドアさんとタオ先輩って昔何かあったよね!」
「そうねぇ、あのタオ先輩だもの・・・」

アマーリエもタオを思い出して同意した。
山の民出身の先輩には、学校で有名な別名がある。

「東寮の魔性の男だよ!絶対何かあったに決まってる。ふふふ、これで僕にも好機があるかもね」
「お前、まだジェイデンのこと諦めてなかったのか?相手にされてないくせに」
「うるさいな。人の恋路に口挟まないでよ」

この機会を逃すものかと息巻いているディアに、アマーリエはお茶を飲みながら、でも、と口を挟む。

「あの2人、相変わらず仲が良さそうだったけど、恋愛関係って感じじゃないのよね」
「そうだけどさ、セオドアさんより仲良かった相手なんてこれまでいなかったでしょ」
「そうね、ジェイデンが恋愛にさほど興味なかったもの」

ジェイデンとセオドアは昔から親友としてよく一緒にいたが、それぞれに恋人がいた時期もあったようだ。
ジェイデンに親密な相手がいた時には、いつもありとあらゆる手を使って邪魔をしてきたディアは、その恋愛遍歴をよく知っている。

「ジェイデンのこと紹介して欲しいって、何回頼まれたか覚えてないわねぇ」

貴族の付き合いってほんと面倒だから勘弁してほしいわ、とアマーリエが遠い目をした。
ジェイデンの一番近くにいる女友達で、なおかつ婚約者がいるアマーリエの元には、ジェイデンに懸想する令嬢たちが絶えず自分を売り込みに来ていた。小貴族であるアマーリエは自分より身分の高い令嬢たちを無下にはできず、いつも困ってディアに相談していたのである。
アマーリエから相談を受けたディアはその可愛い容姿を武器に、ジェイデンに近づく令嬢たちを蹴散らしていたが、それでも時々ディアの包囲網を飛び越えてジェイデンに近く猛者は少なくなかった。ジェイデンも幾人かと関係を持っていたようだが、不思議と長続きはしなかったようだ。
北での日々を思い出して、ディアが険しい顔をする。

「アマーリエ。きっと王都でも大変なことになるよ」
「やめてよ。ジェイデンは大事な友達だけど、もう巻き込まれるのはごめんだわ・・・」

心底うんざりした顔の婚約者を、メイソンが励ますように慰めた。

「今はセオドアさんが従者としてついてるんだろ?彼がなんとかしてくれるさ」
「はぁ・・・そうかしら」

むしろあの2人がさっさとくっつけば良いのに、とアマーリエは内心考えたが、ディアの前では口が裂けても言えなかった。



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