公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎

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一章 旅路

王都到着①

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キヴェを早朝に立ったお陰で、昼過ぎには王都に辿りついた。

「早めに発ってよかったな」

風猫亭では早起きしたマールに弁当を持たされ、またキヴェに寄る事があれば待っているから、と念を押されて見送られた。







王都はシエーナという。

内郭に位置する王宮を中心に、花弁が開くように街が外に広がっている。
本宮を守るために、幾重にも城壁が築かれており、それぞれの門には相応しい身分を持つ者しか通れないように厳重に管理されていた。



外郭にある貴族用の通用門を通り、王都の中へと入る。
ここでも騎獣は外郭沿いに置かれた獣舎へと預ける決まりがあるが、一部の貴族には例外的に三の郭まで騎乗したまま入る事が許されている。もちろん、この2人にも許可は出ていた。
外郭の次にある四の郭を通り過ぎ、三の郭を抜けるまでにはかなりの距離がある。
四の郭・三の郭は主に平民の住居や店舗となっており、王国中から人が集まる王都の繁華街としての賑わいをみせていた。
その内側にある二の郭まで、高位の貴族は下乗しないのが常であった。

「士官学校は二の郭の南端みたいだが、こっちであってるのか?」

王都の文化と商業の中心でもある三の郭は、貴族と平民の生活が交わる位置にあることから区画も広く取られている。
あまりの広さに、迷いそうだとセオドアが辺りを見渡した。

「ああ、二の郭だ。南の塔が目印になるはずだ」

四の郭から三の郭への移動は、日中は自由に行える。城門は開け放されており、住人や商人が忙しげに行き交っていた。
彼らも三の郭へと入り、少し進む速度を緩めながら周りを確認する。



ジェイデンも7年ぶりの王都である。
幼い頃は馬車での移動が常で、三の郭より外を自ら移動することはなかった。そのため、記憶は朧げである。

二の郭の南側は、王都の騎士団と魔術師団の本拠地となっており、それぞれの機関の中枢拠点として、南の塔がある。
士官学校は騎士団と魔術師団に属する形で運営されており、そのすぐそばに位置していた。


「この辺りは活気があっていいな」

ここでは騎獣できるのは貴族だけの為、彼らは周囲から注目を集めた。それに加え、大きな一角狼は王都でも珍しく行き交う人々が振り返る。視線を意識しながらも、2人は足を止めずに三の郭を抜け、二の郭への城壁にたどり着いた。

城門の前で下乗し、衛兵に身分証を見せて二の郭へと入る。

三の郭から二の郭へと移ると、街並みは一変した。
二の郭の北側地区は屋敷街である。貴族や、特別な許可を得た裕福な商人が居を構えており、区画整理された立派な邸宅が並ぶ。

「屋敷街を抜けて、あの正面に見えている塔の方向へ行けばいいはずだ」

南の塔は、立ち並ぶ屋敷に隠されて一部しか見えていない。
ジェイデンはそれを指差してセオドアへ告げると、魔狼たちへ声をかけた。

「また小さくなれるか?」

ここから先は騎獣も規制されている。
城門の近くには獣舎が備えてあったが、心得たように二匹は犬の姿に変化した。
呆れたような、感心したような顔でセオドアがそんな二匹を見る。

「堂に入った犬っぷりだな」

揶揄うセオドアに、2匹は素知らぬそぶりで尻尾を振りながらついてきた。

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