魔法騎士団をクビにされたので犯罪者集団に所属して無双しまぁす

ななこ

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一章

4、GHOST

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「え? 言ってなかったかしら?」

 ハカセはわざとらしく首を捻る。こいつ……確信犯だな。

「聞いてない。それに俺は犯罪者じゃない!!」

「そんなの気にしなくていいのよ。ここで活動してたらいずれは犯罪者になるんだし? まあ、ならないかもしれないし?」
「は!? 聞いていたか!? 俺は功績を立てて、俺を捨てた奴らを見返してやりたいって!! こんな組織なんていても意味がないだろ!! 抜ける!」

「え? 残念だけど逃げても無駄よ?」
「は? どう言うことだよ!?」

「その指輪、探知出来るようになっているのよ。だからどこにいるのかわかるし、裏切り行為なんてしたら……どうなることか!」

 悶え苦しむようにハカセは体をくねらせる。彼が言っていることは嘘か本当かわからない上、それを確かめる術はない。

 ジンは指輪を外そうとしたが、外れなかった。

「ま、諦めなさい。撤回も出来るけど、私たちの事を知られたからには、あなたを殺すしかないしねえ?」

 ハカセが意味深な視線をエルメスに送る。するとエルメスが小瓶をポシェットから取り出した。その小瓶には何も入ってない。

 それが一体何だというのだ。

 しかしエルメスはその小瓶をジンに見せつけるように、ずいっと顔の前に持ってくる。本当に何も入っていない。

 エルメスは不意にニッと笑った。その笑った口元には、牙が生えていた。なんだかその笑みが不気味で、ジンの背筋に悪寒が走る。

「な、何なんだよ……?」

「聞いて? これ猛毒なのよ。でも、もう既に君の体の中を巡ってる。寝ている間に点滴に混ぜさせてもらったから」
「は!?」

「大丈夫、今は無効になっているから。……けれど、私が魔力で毒を有効にしたら、あなたはどうなるかわかるわよね? どうする? それでも契約撤回する?」

 エルメスの目が本気マジだった。おそらく彼女は本当に毒を俺の体内に入れているのだろう。脅すだけの演技だけでは出てこない殺気が、ビンビンに伝わってくるからだ。

 こいつらマジでイカれてる。こんなの生きるか死ぬかの選択肢しかない。というかもうすでに選ぶべき選択肢は一つしかない。

 ジンは、はあ、と溜息をつく。

「わかったよ。GHOSTの一員でいい」
「よかった~♥」

「一見落着ね。じゃ、私は薬売ってくるわ。君も頑張ってね」とエルメスが部屋から出ようとすると、何か思い出したのかこちらを振り返る。

「あ、そうそう。君に飲ませたっていう猛毒、あれ嘘だから。ただの栄養剤。じゃあね~」
「は?」

「エルメスちゃん、ありがとう♥」
「ええ。また必要だったらいつでも呼んで」

 そう言ってエルメスは颯爽と部屋から出て行った。

 何だよ、嘘なのかよ……!! 騙された!! というかあの人、薬売るって言ってたな。絶対にヤバイ薬でも売ってるんだろう……。あの人マジで怖すぎる。絶対に敵に回してはいけない人だ……!

 なんだかどっと疲れた。

「で……俺は何をすればいいわけ?」
「物分かりのいい子で助かるわ。最初のお仕事はね、害虫駆除に行って欲しいのよ」

「害虫駆除??」
「そうそう。本当はあなたを助けた子が行ってた仕事なんだけど、あなたが倒れていたから仕事そっちのけであなたを運んだわけ」

「……だから駆除出来てないって事?」
「その通り! でもあなた一人じゃ分からないかもだから、もう一人の子と一緒に行ってね。詳しくはその子に聞いて」

「その子って誰」
「ジン君をあの現場からここまで運んできてくれた、いわゆる命の恩人だから。あ、会ったらまずは謝った方がいいかもね?」
「謝る? なんで。感謝する、の間違いじゃないのか?」

「それは、まあ、彼を知ったらわかるわ。隣の部屋にいるから時間があったら挨拶でもしたらいいわ」

「は、はあ……」

「大丈夫。少し簡単なお仕事だから、きっとジン君なら出来るわ。セドリック君と二人で頑張ってね。着替えはここに置いておくから」

 ベッドサイドのテーブルに服をそっと置いた。

「じゃ、頼んだわよ」

 ハカセは鼻歌を歌いながら出て行く。ジンはその背を睨みつけてひとちた。

「……クソ、何が慈善事業だよ」
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