3 / 33
一章
2、救済
しおりを挟む目覚めたら、灰色の天井が見えた。
「ここは……。俺、生きている、のか?」
手も足も動く。あの獰猛なケルベロスとやり合って五体満足なのは信じられないが、どうして俺は助かったんだ? 倒したのか? いや、意識を失ってたんだ、それはない。なら、結局あのケルベロスはどうなったんだ?
そんなことを考えながら、ゆっくりと起き上がって周囲を見渡した。ベッドの横に点滴がぶら下がっている以外、この部屋には何もない。窓もない、石畳の簡素な部屋。なんだかまるで牢屋みたいだな。
するとふと自分の腕に視線がいった。
「!? な、なんだこれ……!!」
病衣のような袖から覗く自身の腕に、魔法陣のような見たことのないイレズミが入っている。手にも、体にも、足にもだ。
な、何だよこれ……!! 何かの呪いか……!? やばい気がする。こ、ここから逃げないと……!!
点滴を引きちぎり、ベッドサイドに置いてあった剣を手に取り扉へ向かう。ドアノブをひねったら、鍵はかかっていなかった。
よし。
部屋から出ようとしたら。
「アッラー!? あなた、起きたの!?」
突如目の前に立ちはだかったのは細身のスキンヘッドだ。白衣を着ており、医者のような雰囲気を醸し出しているが、見た目は女か男かわからない。今さっきの話し方と濃い化粧からいえば、女だろうか。
敵か味方かわからない人物の登場に、ジンは臨戦態勢を取る。
「……誰だ!? ここは、どこなんだ!?」
「ちょっとちょっと、剣は仕舞いなさいよ。危ないじゃないのよ」
よくよく聞いたら声は裏声だ。もしかして男なのだろうか。まあどちらでもいい。男は丸腰だ。白衣を着ているということは医者か何かだろう。つまり魔力は無いとみていい。
こちらは魔力は無くても戦える。最悪、この白衣の男を殺して逃げる。
「もう、仕舞いなさいって言っているでしょう!」
フッと白衣の男が目の前から消えた。
「は!?」
気づけば足払いをされて、ジンは尻もちをついていた。その衝撃で手から離れた剣を白衣の男に思いっきり蹴り飛ばされて、ジンは丸腰になってしまった。それでもジンは立ち上がり際に、白衣の男の足へ一撃を入れる。メキッと骨にヒビが入ったような音がしたが、態勢を整えたジンは構わずに二撃目の蹴りをぶち込む。
「いい加減にしろっつってんだろ!! この病人がっ!!」
脇腹めがけて伸びる足を力の限り掴んだ白衣の男が、そのままジンをぶん回してベッドへと投げた。
「うわっ!!」
ごん、と後頭部を打ったが、見事にジンの体はベッドに収まった。それを確認した白衣の男は深いため息をついた。
「もう、ここは安全だから安心して。野良猫でもそんなに暴れないわよ……って、あれ?」
ジンは返事をしない。どうしたのだろうかとのぞき込めば、先ほどのぶつけた衝撃でジンの頭から大量に出血していた。
「きゃーっ!! 誰か!! 医者を呼んで!! って、私だわっ!! もう、いやぁねぇ!! あなたが暴れるからよぉ!!」
頭の付近で大声で叫ばれても、もはやジンには聞こえていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
追放されたので辺境でスローライフしてたら、いつの間にか世界最強の無自覚賢者になっていて元婚約者たちが土下座してきた件
uzura
ファンタジー
王都で「無能」と蔑まれ、婚約破棄と追放を言い渡された青年リオン。
唯一の取り柄は、古代語でびっしり書かれたボロ本を黙々と読み続けることだけ。
辺境で静かに暮らすはずが、その本が実は「失われた大魔導書」だったことから、世界の常識がひっくり返る。
本人は「ちょっと魔法が得意なだけ」と思っているのに、
・竜を一撃で黙らせ
・災厄級ダンジョンを散歩感覚で踏破し
・国家レベルの結界を片手間で張り直し
気づけば、訳あり美少女たちに囲まれたハーレム状態に。
やがて、かつて彼を笑い、切り捨てた王都の貴族や元仲間たちが、
国家存亡の危機を前に「助けてくれ」と縋りついてくる。
だがリオンは、領民と仲間の笑顔を守るためだけに、淡々と「本気」を解放していくのだった——。
無自覚最強×追放×ざまぁ×ハーレム。
辺境から始まる、ゆるくて激しいファンタジー無双譚!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
勇者パーティを追放された地味な器用貧乏は、 魔王軍の女騎士とスローライフを送る
ちくわ食べます
ファンタジー
勇者パーティから「地味、英雄譚の汚点」と揶揄され追放された器用貧乏な裏方の僕。
帰る場所もなく死の森を彷徨っていたところ、偶然にも重傷を負った魔王軍四天王で最強の女騎士「黒鉄剣のリューシア」と遭遇する。
敵同士のはずなのに、なぜか彼女を放っておけなくて。治療し、世話をし、一緒に暮らすことになった僕。
これは追放された男と、敗北を重ね居場所を失った女の物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる