異世界領地経営記

ITSUKI

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第2話 福音書5章38-39節 誰かがあなたの右の頬を打つなら、皆で左の頬を袋叩きにしなさい

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知らない世界に飛ばされて2日目。
しっかり栄養と休息をとった俺は、再度ゴブリン軍団を召喚して原生林攻略へと向かう。

メンバーは俺+4ゴブの5人編成。

装備品は食料品と一緒に買った金属バット。
お値段1本6000SP。

召喚時に出てくる薪や下手なナイフより、攻撃力も耐久力も高いはずだ。

後、厚さ4cm程の分厚い板を釘と接着剤で二重に張り合わせて作った盾(手持ちはドアノブ)。
これを、ゴブリンたちに防具代わりにと持たせている。

防御力は未知数だが、体の小さいゴブリンなら身をかがめれば、ほぼ全身を隠すことができる。
1体でダメなら複数体。装備を整えてのリベンジマッチだ。

これが俺の所するSPを半分以上を投資して組んだ編成。

心なしか、昨日召喚した時よりも頼もしく見える。

―――――ガサッ

「盾ぇ、構えっ!」

―――――ストッ

「よしっ、叩き込めっ!」

「「「ギギッ!」」」

先日と同じように藪から飛び出してくるホーンラビット。

お手製の盾にホーンラビットの角が刺さり動きが止まる。
そこを手すきのゴブたちがタコ殴りでとどめを刺す。

――――よしっ。
損害を受けることなく獲物を仕留めることが出来た。

ゴブたちも嬉しそうにバットを掲げる。

って、うおっ。

「おい、嬉しくても振り回すのはやめろ。危ないから」

「………ギイィ」



草をかき分ける音がしたら一斉に盾を構えて相手をいなし、タゲから外れた動けるゴブたちが四方八方から攻撃する。

獲物もホーンラビット以外に、蛇、鶏サイズの鳥、リスが現れた。
危ないところはあったものの、人的被害はなく、現在、盾1個の破損で済んでいる。

獲物も持ちきれなくなるしそろそろ戻ろうかと考えたころ、きらきら光る壁が見えてきた。
近づいてみると、シャボン玉みたいな膜が張られているらしい。

触れてみてもこの膜は破れないらしい。

――――チーン

不意にスマホにメールの受信音が鳴る。


【仮初の御魂の結界 その存在を定着させるまで、現世との関わりを遮る結界】

【何人も神の生誕を邪魔することは出来ない】

【この結界を破棄することで神核が現世に降誕する(自動破棄まで後88日)】

【結界を破棄しますか?   はい
              いいえ】

あー、つまり3カ月くらいはこの結界のおかげで安全ってことか?

いや、ホーンラビットとでかい鳥は結構危ない気はするんだが……。

まぁ、現状この結界を壊すのは自殺行為だろう。

⇒いいえ

「うっし。それじゃ、洞窟に戻りますか」

「「「「ギギィーーーー!」」」」




帰ってからは嬉しい嬉しい売却タイム。
今回、ゴブ軍団に投資した分はしっかり回収できたようだ。

今回のゴブ軍団が壊滅していたら、手持ちのSPがほぼ尽きてたから正直助かった。

ホーンラビットが4000SP。他、ワイルドスネーク(蛇)が2500、シミッドルージュ(鳥)が6500、スモール・スクワーオル(リス)が1200。

今のところ、危険な獲物・大きい獲物のSPが高額になる傾向だ。

ホーンラビットが前回より安かったけど、肉が潰れたり血まみれになったりしたせいだろうか?

コスパ良く、丈夫な金属バットだが、思わぬ欠点となりそうだ。

頑張ったゴブたちにはショップにあったお徳用の鶏肉の塊と、味付けに塩コショウ。
それと、キャンプ用品グッズを一式仕入れて、あやふやな記憶を参考に、火をつけ肉の焼き方を指導する。

最初は生肉をちらちら見ながら何でこんなことをという表情で命令を聞いていたゴブたち。
焼いた肉を一口食べた瞬間、目つきと動きが変わりやがった。

最初は俺の焼き方を真似していたが、しばらくしたらゴブたちの方が上手に肉を焼くようになって、最後にゃ俺はプロの料理を食べるだけ。

ゴブリン謹製の焼き肉が、俺の焼いた肉よりうまいとは……解せぬ。
だが、旨し。

出てきたごみくずは2SPで作れた30㎝程のくぼみに全部捨てる。

そしたらくぼみに住み着いたスラ夫が、肉片・野菜くずからビニール・紙コップとなんでも消化してくれるのだ。

こうして、原生林リベンジに成功した初日は幕を閉じた。
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