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第三章

赤鷲の団と仲良くなる!

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 一通りの解体が終わると、お昼休憩がてらお話をすることに。
 そこで、クッキーを貰った!
 現世で初のクッキーだ!
 携帯食だからパサパサしていていまいちだけど、ちょっと感動した。
 わたしは取ったばかりのクマ肉をご馳走してあげた。
 一度冷凍してから解凍する手順には驚かれたり、呆れられたりしたけど、白いモクモクを鉄板の様に使い、ステーキにしてあげたら、喜んでくれた。
 味付けは岩塩だけだったけど、美味しいんだよね、弱クマさんは。

 食後、一服してから赤鷲の団団長ライアンさんにわたしのことを聞かれた。
「ずいぶん変わった格好をしているし、あそこまで強いから有名になりそうなものだが、俺はおまえを知らなかった。
 ひょっとして、よその町から来たのか?」
 だから、すぐそこの森の奥で住んでいると教えてあげたら三人とも驚いていた。
「おいおい、この森の奥は上級冒険者でも足を踏み入れない危険な場所だぞ!
 人が住めるのか!?」

 ……そんなに危険な場所かな?
 あ、山を越えると確かに危ないかも。

 だから、そのことを教えてあげた。
 あの山の手前は、せいぜい弱クマさんぐらいしかいないって。
 でも、三人は微妙な顔をした。
 そして、ボソボソと話し出す。
「弱クマって”森の悪魔”か?」
「い、いや、あんなのがいるだけで人は住めないでしょう?」
「でも、この女の子、蹴りの一撃で倒してるから」

 え、本当に弱いよ?

 ほかにも色々話も聞けた。

 この国は帝国だということ。
 貴族はクズが多いこと。
 平民は貧乏で、継ぐ物の無い者が成り上がるには冒険者になるしかないこと。
 赤鷲の団はその中で、新進気鋭の冒険者集団とのこと。
「弱クマにやられそうになっておきながら??」
とジト目で見ると、ライアンさんは一生懸命弁明した。

 あのクマは弱くない!
 正騎士や魔術師が二十人がかりでやっと倒せる相手だ!

 などなどだ。
 ……そういうことにしてあげよう。
 わたしが生温かい目になると、赤鷲の団団長ライアンさんは「本当なんだってばぁ」と落ち込みだした。
 分かったって!

 赤鷲の団団長ライアンさんから、「今から町に行くか?」って訊ねられた。

 入場料が無いって言ったら、助けてくれたお礼に払ってやるって言ってくれる。
 町かぁ~
 行ってみたい気持ちもあるけど、例の門番さんがちょっと怖い。
 それを我慢してまで、町に入る動機も無い。
 だから、丁重にお断りをした。
 え? お礼?
 気にしなくてもいいのに……。
 でも、あえて言えば……。
「野菜とかの種が欲しい!
 あと、種芋とか」
 赤鷲の団の皆が不可解な顔をする。
 赤鷲の団団長ライアンさんが代表して訊いてくる。
「農業でもするのか?」
 そこで、種さえあればすぐに育てられる魔法があると説明、三人とも目を丸くしていた。
 そんなに珍しいのかな?
 赤鷲の団団長ライアンさんが苦笑しながら言う。
「サリー、植物育成魔法それはあまり公言しない方がいいぞ。
 たちの悪い商人や貴族に絡まれるからな」
 あ、そういえばママがそんなことを言っていた!
 わたしが慌てて口を押さえると、赤鷲の団団長ライアンさんが笑いながら「これから気をつけろ」とわたしの頭を撫でてきた。
 そこで、ふと思いついたように団長さんの袋をあさり始める。
 そして、小袋を取り出すとわたしに差し出してきた。
「これはコショウの種だ。
 今回の礼にこれをやろう」
「コショウ!
 本当に!?」
 わたしは袋を受け取ると、中を覗いてみた。
 茶色っぽい種が三粒ほど入っている。
 以前、エルフのお姉さんに貰ったものと同じだ。
 赤鷲の団のマークさんが慌てた感じで言う。
「お、おい団長!
 それ、無茶苦茶高いんだろう!?
 いいのか?」
 赤鷲の団アナさんも目を丸くしている。
 それに対して、赤鷲の団団長ライアンさんは豪快に笑いながら言った。
「そりゃそうだが、命に比べりゃ安いものだ!
 それに、高いって言っても貰い物だ。
 ここら辺じゃあ育たないしな。
 嬢ちゃんの魔法なら育てられるんじゃないのか?」
「やってみる!」
と気合いを入れていると、赤鷲の団団長ライアンさんはハハハっと笑った。

 それから、弱クマさんの素材は高く売れるらしいので、渡しておいた。
 そのお金で種を色々買ってきて貰うのだ。
 受け取りは明後日の朝、町の門から少し行った辺りで待ち合わせとなった。
 一瞬、そのまま持って帰られるかな? 何て思ったけど、所詮、弱クマさんの素材、その時は、授業料だと思って諦めることにした。
「あ、体を拭いたりする布が欲しいな。
 あと、大中小色んな種類の袋も買ってきて欲しいなぁ。
 背負える籠とかがあれば、それも欲しい!」
 そう頼むと、赤鷲の団アナさんが任せておいて、と大きめの胸を叩いて請け負ってくれた。
 ……胸、密かに大きいね。
 形が変わったそれを、男二人が食い入るように見ている。
 団長さん、何やら悔しそう。
 男の人って本当に、しょうもない!
 ちなみにわたしのは……将来に期待って感じだ。

――

 持って帰るのも面倒だったので、爪や牙など素材だけでは無く、お昼で食べた分以外の肉も、赤鷲の団の三人にあげることにした。
 だけど、どうも鍛え方が足りないのか、良い部位のみ選別したにも関わらず、袋詰めにしたそれを担ぐその足取りは、とてもおぼつかなかった。
 重い、重い、とうるさかったので、わたしが持ってあげようか? って言ったら拒否された。

 男の沽券の問題らしい。

 さようですか……。
 でも、こんな状態で魔獣に襲われたら大変なので、町の門の近くまで護衛としてついて行ってあげた。

 すると、例の怖い門番さんがまた立っていて、わたしを見ると何かを言おうとした。
 怖い!
「じゃあこれで!」
と叫びながら、ダッシュでその場から退散した。


 に帰ると、妖精ちゃんたちが待ち構えていたかのように殺到してきた。
 何事!?
 言われるままついて行くと、え!? わたしの家の隣に小屋ができていた。
 妖精姫ちゃんが何やら身振り手振りをする。
 え!?
 作ってくれたの!?
 昨日切り出した木材を勝手に使ってごめんなさい?
 それは全然かまわないけど、え!? 妖精ちゃん、そんなに小さくてよく作れたね。

 中は八畳ぐらいの、前世の自動車すら収納できる広さがある。
 物置としてなら、十全と使えるだろう。

 感心していると、何人かの妖精がわたしの前に立ち、自慢げに胸を反らした。
 皆、羽が無い代わりに他の妖精ちゃんと比べて一回り大きく、体長の半分ぐらいはありそうな木槌を抱えていた。
 その中の一人がずいっと前に出て、任せろと言わんばかりに胸を叩いた。
 三角帽子を被り、灰色の口ひげ、顎ひげ共に長い、おじいちゃんな妖精さんだった。
 頼もしい!
 わたしは物作り妖精のおじいちゃんに棚とかをお願いしておいた。
 そこに、妖精姫ちゃんが供回りを連れて近寄ってくる。
 お供の人達はそれぞれ種を持っている。
 ん?
 ああ、育てればいいのね。
 もちろん、構わないよ。
 え?
 花壇エリアを作りたいと。
 場所も決めた?

 ……そこは、一番、日当たりの良さそうな所なんだけど……。

 いや、物を作ってくれるんだから、仕方が無い!
 綺麗な花を咲かせましょう!
 ついでに、一番最初に育てた薔薇も移してあげた。

 妖精姫ちゃんがくるくる飛び回り、大喜びしてた。

 可愛い!
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