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第2話
悪夢、目覚め、幸福
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『どうなってるんだ!? 来週までには納品させろと言ったはずだ!』
『この役立たずが! ろくに頭を働かせられない奴に払う給料など会社にはないんだぞ! いいからさっさとやれ!』
『てめぇこの野郎! 片付けておけと言っただろうが! 誰のお陰で食べていけてると思ってるんだ!』
懐かしい罵声が聞こえてくる、今となっては顔も名前も思い出せない日本にいた頃の会社で世話にもなっていない上司のものだ。
思い出したくもないのに、あんなことあったなぁと笑い話で済ませられる自信が自分にはある。
でもだからといってあの上司を許す気は毛頭ないので、もしまた会えたらそのときは一発殴ってやりたいものだ。
あぁっ、こんなことを考えるだけでも虚しいと思えるなんて、俺は今が一番楽しくて仕方がないんだろう。
家族になったヒューイ、義理の両親であるゼンブルさんとヒュペルさん、厳しくてもきちんと物を教えてくれる爺様、そして村の人達。
信じられないな、こんな俺が、こんなきちんとした家族といえる人たちを得られるなんて。
だから今更すぎるが、俺は俺自身のことがどうしても知りたくなっていた。
「ーーあっ」
「ダイチ、起きた?」
「……おかえりヒューイ、ごめんっいつ帰ってーー」
「あぁっいいよ。 起きなくていいから、そのまま寝てて。 顔色、ホントに良くないね。 それに嫌な匂いがするな、今は休んでなきゃダメだよ」
悪夢から目覚めてみれば、枕元には愛しい彼の姿があった。
目覚めてからの一番最初に見れたのがヒューイなのは、本当に良かったと思える。
不安と絶望で満たされた心に射す光のように、柴犬の柔らかな笑顔を見ているだけで、負の感情は消え去ってくれた。
「ダイチ、どうして急に倒れたの? もしかして、今朝から具合が良くなかったとか?」
「ううん、そうじゃないよ……。 ちょっと爺様とヒュペルお義父さんたちと色々してて、そこで力を使ったから……」
「へぇッすごいじゃん! 力って、魔法のこと? それとも原理かな? ねぇねぇ、どっち使ったの? ダイチはどんなスゴイことができるの?」
「えっと、確かーー」
「ヒューイ、それまで。 寝起きの相手にあれこれ聞くのは失礼だぞ」
「あっヒュペル父さん、早かったね」
心配そうな顔で覗き込んでくる柴犬に、俺は手を伸ばしてその頭を撫でてあげる。
嬉しそうに目を細め、尻尾を振って喜んでくれるヒューイの姿がそこにいるだけで、俺は見た夢など忘れられた。
さて、肝心のどうして寝込んでいるのかについて簡単に説明すると、次から次へと質問が飛んできてどう答えたものかと悩む。
そもそも原理ってなんだろうな、ヒュペルお義父さんも言っていたけどまだ習ってないので、そこを聞こうとした。
その時、狙いすましたタイミングで家の中に入ってきたヒュペルお義父さん本人が現れたので、体を起こして出迎えようとする。
「あぁ、無理に起き上がらなくていいぞ、ダイチ。 初めてであれだけの離れ業をしたんだ。 ゆっくりでいい」
「……ありがとうございます、それじゃあ遠慮なく」
「父さん、ご飯ありがとうね! 何か手伝う?」
「それじゃまずは椅子と机を移動してもらえるか。 軽く温め直すから準備は任せたぞ」
そのままでいいと合図してくれたので、甘えることにする。 正直体がダル過ぎてどうしようもなかった。
原理というものが何か分からないが、空想具現を使ってから今まで感じたことのない疲労感に襲われている。
一眠りしたから多少改善したものの、まだ立ち上がるのは難しいが、空腹には耐えかねるので上半身をゆっくりと起こした。
その間、ヒューイが机と椅子を動かしてベッド側に設置し、作ってきてくれた食事を軽く温め直したお父さんが鍋を置く。
蓋を開けば食欲をそそる香りが漂ってきたので、腹の虫が鳴いてしまうのだが、負けないくらいに大きな音が響いた。
「……ヒューイ」
「あははっごめんなさい! 父さんのスープは美味しいからさ! ところで、ゼンブル父さんは?」
「仕事だ、やることが山程あるからな」
「僕、何にも聞いてないけど手伝わなくていいの?」
「あぁっ。そもそもダイチがこんな状態なのに、お前は仕事なんかできるのか?」
「無理!」
「そうだよなぁ……、ホント素直すぎるくらいに良い子になってくれた……」
音の発生源はヒューイの可愛らしいお腹、と言いたいところだけど、見てくれは俺とさほど背丈が変わらないのにとんでもなくこの子は食べる。
普段は抑えているらしいが、前に一度狩りすぎた獲物の肉を処分することになった時、山ほどあったそれをヒューイは半分以上食べたそうだ。
どこに入ってるのか気になるが、いつまでも幼さが残る息子にヒュペルお義父さんが悩ましげに苦労を感じさせる顔をしている。
本当、お義父さんお疲れ様ですと、愚痴とかあれば今度夜通し付き合ってあげてもいいかもしれないな。
『この役立たずが! ろくに頭を働かせられない奴に払う給料など会社にはないんだぞ! いいからさっさとやれ!』
『てめぇこの野郎! 片付けておけと言っただろうが! 誰のお陰で食べていけてると思ってるんだ!』
懐かしい罵声が聞こえてくる、今となっては顔も名前も思い出せない日本にいた頃の会社で世話にもなっていない上司のものだ。
思い出したくもないのに、あんなことあったなぁと笑い話で済ませられる自信が自分にはある。
でもだからといってあの上司を許す気は毛頭ないので、もしまた会えたらそのときは一発殴ってやりたいものだ。
あぁっ、こんなことを考えるだけでも虚しいと思えるなんて、俺は今が一番楽しくて仕方がないんだろう。
家族になったヒューイ、義理の両親であるゼンブルさんとヒュペルさん、厳しくてもきちんと物を教えてくれる爺様、そして村の人達。
信じられないな、こんな俺が、こんなきちんとした家族といえる人たちを得られるなんて。
だから今更すぎるが、俺は俺自身のことがどうしても知りたくなっていた。
「ーーあっ」
「ダイチ、起きた?」
「……おかえりヒューイ、ごめんっいつ帰ってーー」
「あぁっいいよ。 起きなくていいから、そのまま寝てて。 顔色、ホントに良くないね。 それに嫌な匂いがするな、今は休んでなきゃダメだよ」
悪夢から目覚めてみれば、枕元には愛しい彼の姿があった。
目覚めてからの一番最初に見れたのがヒューイなのは、本当に良かったと思える。
不安と絶望で満たされた心に射す光のように、柴犬の柔らかな笑顔を見ているだけで、負の感情は消え去ってくれた。
「ダイチ、どうして急に倒れたの? もしかして、今朝から具合が良くなかったとか?」
「ううん、そうじゃないよ……。 ちょっと爺様とヒュペルお義父さんたちと色々してて、そこで力を使ったから……」
「へぇッすごいじゃん! 力って、魔法のこと? それとも原理かな? ねぇねぇ、どっち使ったの? ダイチはどんなスゴイことができるの?」
「えっと、確かーー」
「ヒューイ、それまで。 寝起きの相手にあれこれ聞くのは失礼だぞ」
「あっヒュペル父さん、早かったね」
心配そうな顔で覗き込んでくる柴犬に、俺は手を伸ばしてその頭を撫でてあげる。
嬉しそうに目を細め、尻尾を振って喜んでくれるヒューイの姿がそこにいるだけで、俺は見た夢など忘れられた。
さて、肝心のどうして寝込んでいるのかについて簡単に説明すると、次から次へと質問が飛んできてどう答えたものかと悩む。
そもそも原理ってなんだろうな、ヒュペルお義父さんも言っていたけどまだ習ってないので、そこを聞こうとした。
その時、狙いすましたタイミングで家の中に入ってきたヒュペルお義父さん本人が現れたので、体を起こして出迎えようとする。
「あぁ、無理に起き上がらなくていいぞ、ダイチ。 初めてであれだけの離れ業をしたんだ。 ゆっくりでいい」
「……ありがとうございます、それじゃあ遠慮なく」
「父さん、ご飯ありがとうね! 何か手伝う?」
「それじゃまずは椅子と机を移動してもらえるか。 軽く温め直すから準備は任せたぞ」
そのままでいいと合図してくれたので、甘えることにする。 正直体がダル過ぎてどうしようもなかった。
原理というものが何か分からないが、空想具現を使ってから今まで感じたことのない疲労感に襲われている。
一眠りしたから多少改善したものの、まだ立ち上がるのは難しいが、空腹には耐えかねるので上半身をゆっくりと起こした。
その間、ヒューイが机と椅子を動かしてベッド側に設置し、作ってきてくれた食事を軽く温め直したお父さんが鍋を置く。
蓋を開けば食欲をそそる香りが漂ってきたので、腹の虫が鳴いてしまうのだが、負けないくらいに大きな音が響いた。
「……ヒューイ」
「あははっごめんなさい! 父さんのスープは美味しいからさ! ところで、ゼンブル父さんは?」
「仕事だ、やることが山程あるからな」
「僕、何にも聞いてないけど手伝わなくていいの?」
「あぁっ。そもそもダイチがこんな状態なのに、お前は仕事なんかできるのか?」
「無理!」
「そうだよなぁ……、ホント素直すぎるくらいに良い子になってくれた……」
音の発生源はヒューイの可愛らしいお腹、と言いたいところだけど、見てくれは俺とさほど背丈が変わらないのにとんでもなくこの子は食べる。
普段は抑えているらしいが、前に一度狩りすぎた獲物の肉を処分することになった時、山ほどあったそれをヒューイは半分以上食べたそうだ。
どこに入ってるのか気になるが、いつまでも幼さが残る息子にヒュペルお義父さんが悩ましげに苦労を感じさせる顔をしている。
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