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第25話 夢に降り注ぐ光
しおりを挟むお兄さんとの一件以降、一ヶ月も経った。
あれから特になにも連絡はなく、気づけばデビュー番組の撮影が始まった。沢山のスタッフに囲まれ、台本は3話目まで配布されている。
1話目は俺たちの自己紹介とパフォーマンスが中心で、番組の番組宣伝用撮影映像。基本的には音楽を制作しているジウと、ダンスの振り付け担当ハオランが中心で、いい感じにリーダーのソンジュンがみんなを紹介しているという感じ。俺も、唯一の日本人として紹介されたが、特に目立った活躍はなかった。仕方ない、日本人以外に自分の売りを見いだせていない状況なのだから。
だからこそ、即興でピアノで弾き語るジウの凄さに、俺はまた惚れ直した。なんなら、自分のターンなのに、ジウの凄さをスタッフに語ってしまったくらいだ。
「ジウは強い光なんですよ、静かで高貴な光なんです。音楽を可視化したのがジウだと俺は思ってます」
そう語る俺に対して、スタッフは少し苦笑いしたあと、「ジウくんのことが好きなんだね」と言った。
ちなみに、番宣の撮影現場には、ジノ兄さんが来てくれて、少しだけお話する時間があった。
ジノ兄さんと身体のふれあいはなかったが、前に言っていた日本向け番組の企画書を渡される。そこには、しっかりとミニコーナーに俺の名前があり、それだけでも舞い上がりそうな嬉しさだった。
「ちゃんと、この番組でも、頑張っているシグレのために、サプライズを用意してるんだ。私からのプレゼントだよ」
「ありがとうございます! 何から何まで、嬉しいです!」
「これからも頑張ってね、私はシグレのお兄さんだからね」
優しい励ましをしながら俺の頭を撫でるジノ兄さんは、あの縛ったり、鞭叩いたりする人と同じなのだから、世の中不思議である。
今日は流石に明日も撮影があるからか、ご飯の誘いはなかったが、「また少ししたら会えるよ」と去っていった。
翌日の2話目は、宿舎での生活と軽いゲームをみんなでする企画。ここでは、おしゃれな部屋のヒュイル、作業部屋のジウ、そして、家事炊事担当の俺がスポットライトにあたった。
「美味しいご飯作りました、ダイエット向きですが、バランスは考えてますよ」
机に並ぶのは、タットリタン(辛い鶏肉の肉じゃが)、トマトと卵と青梗菜の炒めもの、ケランチム(韓国風ふわふわ茶碗蒸し)、ナスの煮浸し、キャベツとツナの塩昆布和え、蒸し鶏の香味ダレかけ、そして、様々な具が入ったおにぎり。
「今日は、記念すべき撮影なので、みんなの好物並べました」
そう言って、カメラに向かって紹介をし、その後はみんなで食べる。
「ウマい! いつもほんと、シグレには感謝してます!」
「母国の料理も作ってくれて、本当に全部美味しいです」
いつもよりオーバーに褒めるソンジュンや、ハオランを見ながらぽかぽか温かい気分になる。
ちなみにみんなの好物は、ソンジュンの好物はタットリタン、ヒュイルはケランチムとナスの煮浸し。ハオランはトマトの炒めものと蒸し鶏、ジウはおにぎり。俺はキャベツの和え物が好き。また、今日はみんなの嫌いなものは全て無くしてある。
流石にキュウリで騒ぐソンジュンや、酸っぱいものが食べれないヒュイル、パクチーが嫌いなジウ、生魚や魚卵が無理な俺。好き嫌いの殆どないハオランは「臭豆腐とかガンギエイとかはね」とか言ってたが、あれは個人的に好んで食べるものではない。
他にも部屋の片付けや掃除してる光景も撮影された。
ヒュイルは部屋や服のコーディネートをがっつりアピールし、オシャレなところを見せつけていた。
俺の部屋は、必要最低限のものしかないから、映すものはほぼなくすぐ撤退していったのは言うまでもない。
そして、3話目の撮影。
この日は、初めてこの番組でのミッションというものが始まる。そう言われて、連れてこられたスタジオは撮影側は白一面で、反対には撮影機材のみが置かれている。
スタッフの指示で、中に入ったリアクションを撮ったあと、暫し休憩となった。
白側に立ち、小休憩をしつつ、メンバーの皆で目を合わす。全員が全員、今の状況に戸惑ってるのがわかる。
正直、何が起きるか、皆目検討がつかない。
「一体、どんなミッションなのかわかんないな」
「さあな、ただ、何が起きても俺たちなら大丈夫だ」
「俺たち、プレデビューしたんだから、ここまで来たらやりきろう」
ヒュイルの不安そうに溢した言葉に、ソンジュンは肩を叩いてやりながら励ます。その言葉に乗っかるようにハオランもまた闘志を言葉に載せた。
「ジウ、何が起きるんだろうね」
俺はワクワクともドキドキともとれる胸の高鳴りを抑えて、横にいるジウに声を掛ける。
「まあ、どんなことでも、ある程度どうにかできると思いますけどね、シグ兄は不安ですか?」
「そうかも。みんなと違って、俺は……さ」
そうやって力無く笑えば、ジウは少し考えたあと、俺の背中を軽く叩く。
「シグ兄、悪い癖ですよ」
悪い癖。たしかに、そうだ。昔からこの自信のなさは事務所から指摘され続けてきた。
でもまあ、このメンバーの中で自分の強みがないのは確かで、どうしてもそのことが頭から離れることはない。
(だから、セファン兄さんのお陰で、少しでも貢献できてるのが有り難い)
きゅっと、手を握りしめる。
「撮影始まりまーす!」
撮影スタジオ内に、スタッフの声が響いた。
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