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事後処理と帰還
しおりを挟むペイル平原での討伐は予想外の魔獣の襲撃を受けたが結果としては大成功だった。
しかし他に同様の魔獣がいないかの調査や、熊型魔獣を恐れて隠れている中型魔獣などがいないかと調査が必要になり、討伐後の方が時間がかかっている。
スープをよそってくれた同僚にお礼を言って受け取り口をつける。
シンプルな塩味のスープは野菜や肉の味が出ていてまあ美味しい。少し飽きたけど。
エイル同様他のみんなも飽きたなという顔をして食事をしている。
ウォルドなんかは3日前くらいから食事中に口を開かない。文句を言わないように黙っているんだろうか。
「隣国の奴らはもう帰ったってのに俺たちはまだ帰れねえのかよ」
「まあ向こうの方が遠いからねえ」
別にいいじゃないと返すとお前はなと言われてしまう。
少し前に隣国の騎士たちは引き上げていった。平原一帯と奥にある森の調査が終わり一段落ついたためだ。
大発生の魔物は掃討でき危険はなくなったが、それに加えて今後のために拠点配備をするかの調査が言い渡されたためエイルたちはまだ帰れていない。
こちらの方が近いし、隣国の騎士たちを関わらせる仕事ではないから仕方ない。
「言い寄られて迷惑そうだったもんな、あいつらいなくなって嬉しいんだろ」
「やだな、そんなんじゃないよ」
面倒だったのは一人だけだ。手合わせの申し出ならいくらでも受けた。
疑わしそうな視線に笑みを向けて違うと主張する。信じてくれないようだけど。
しかし、同僚の言うことも尤もだ。
「そろそろ帰りたいよねえ」
アルヴィスに会いたいな。
もそもそとパンを食べスープで流し込む。
今日の夜は肉を焼いてもらえるようお願いしてみようか。
みんな覇気がなくなってきている。
隊長たちも把握してるだろうから却下はされないんじゃないかな。
そんなことを考えていると隊長が歩いてくるのが見えた。
「おう、だいぶ嫌気が差してる顔だな」
少しは取り繕えよお前ら、そう笑う隊長に笑みを返したのはエイルだけだった。
部下たちの恨めしい視線を受け笑みを深める隊長にもしかして、と期待が浮かぶ。
「喜べお前ら! 帰還が決まったぞ!」
途端歓声が上がる。
喜びのあまり立ち上がって抱き合ったり肩を叩き合ったりし始めた。
大げさなのかノリがいいのか判断しかねるエイルは、巻き込まれないよう食べ終えていた食器を片す口実で同僚から離れる。
帰還を告げて用事が終わったと隊長もついてきた。
「お前も嬉しそうだな。
いつもの笑みより本当っぽいぞ」
恋人に会えるのがそんなに嬉しいか、と言われて当然でしょうと返す。
頬の傷も治ったし心置きなく会いに行ける。
それにしても聞き捨てならないことを言われた気がする。
「でも本当っぽいって失礼ですね。
偽りではないつもりなんですけど」
「まあな、でもお前いつ見ても笑ってるし逆に感情がわかりづらい。
あいつらに怒る時も笑ってるだろ」
そんなに怒ったことないですけどと返したけれど、思い返せば確かにそんなこともあった。
怒ったというかこれ以上は怒るよ、くらいの感じだったけど。
「嘘とか気遣いではないのでご心配なく」
別に気遣いのためで笑顔を心掛けているわけじゃない。
基本的には楽しいと思っているから笑みを浮かべている。
知ってる、と返ってきた。
「お前は他人に興味がなくてマイペースなだけだ」
「え、そんな酷い人間だと思ってたんですか」
さすが隊長。よく見てる。
離れたところでまだ喜びを叫んでいる同僚たち。
ここから遠目で見てる分には陽気で良い仲間たちだと思っている。
あの喜び様がこちらに向かうと少し鬱陶しいけれど。
否定することがないので笑みを深めるに留めた。
それ、と笑う隊長も同じ人種なんじゃないかと思ったけど……。
口に出しても良いことは無さそうなので黙っておいた。
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