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第8話_2 追手(?)が現れた※
しおりを挟むわたしとシュタインが、あくせくと着替え終わった瞬間――。
ばんっと、寝室の扉が盛大に開かれた――。
「ヴィオレッタ姫、本当に生きておいでとは――」
かなり大勢の騎士たちが、扉の中から次々に部屋の中へと入ってくる。鎧がガチャガチャと音を立てていた。彼らの着用している鎧は、わたしの祖国であるオルビス・クラシオン王国のもので間違いない。
外は雪だからか、泥だらけの靴で侵入してきた騎士たちの身体にはそこかしこに雪の跡が残り、冷たい外の夜の空気の匂いも運んできていた。
平和に暮らしていたわたしの前に、祖国オルビス・クラシオン王国から、追手(?)のようなものが現れてしまった――。
(どうせ、あのおばちゃんの仕業ね……剣の一族は寄越していないところをみるに、継母が買収した騎士達ってところかしら?)
「さあ、こちらに来ていただこうか?」
乱れた白い髪をしたわたしを見て、屈強な男が話しはじめる。
そいつを睨みつけながら、わたしは言い放った。
「いやよ――どうせわたしは死ぬつもりだから、放っておきなさい――だけど、死に方はわたしが決めるわ――痛い目にあいたくなかったら、さっさと屋敷から出ていきなさい!!」
後ろに控えている騎士たちが、それでもひるまずに、わたしとシュタインのいる方に近づいてくる。
「仕方ないわね――」
わたしは、近くに落ちていたシーツを手にとる――。
「――お前、やっぱり姫だったのか――?」
シュタインが蒼い瞳で、わたしの方をまじまじと見つめた。
(やっぱり――? まさかこの人、わたしの正体に最初から気づいて――?)
そんなことを思うのも束の間――。
――なぜか彼は、わたしの背中に隠れた。
「ヴィオレッタ! あいつらをどうにかしてくれ! 小さな部屋で魔術を使うのは危険だ――!」
「――は?」
わたしは唖然としてしまった。
(ここは、実は剣の手練れでしたとかで、姫を護る流れじゃないわけ――? まあ、こいつに期待したわたしが馬鹿だったわ――)
そんなことを思って、わたしははっとする。
(わたしはシュタインに何を期待しているというの――?)
わたしが考え込んでしまっていたのを知ってか知らずか、騎士たちが剣を次々に抜いてきた。
「女のわたしに、どうにかできるわけないじゃない――あなた、ひょろひょろとは言え、剣ダコが出来てるんだから、剣が一応扱えるんじゃないの――? わたし、一応姫なんですけど――なんか適当に攻撃とかできないわけ?」
「実戦経験がないんだよ!」
シュタインが叫ぶ。
(シュタインを見てたら、情けなくて涙が出そうだわ――)
「夜の営みについてもそうだったけど、貴方、やればできる男よ。だいぶ良い感じになってきてる。剣術も出来ないって思いこんでるだけよ――やってみなさい――」
「ぶ、武器がないんだ――!」
「呆れた――もう仕方がないわね――」
私は手に持っていたシーツを持ち直した。
「時間、稼いでやっても良いけど――わたしを動かすのは、高くつくわよ――!」
シーツを手に持つわたしに、まずひとりめの騎士が襲いかかってくる。
騎士の脚にわたしの脚を引っ掛けると、相手は派手にすっころんだ。
(城でいじめられた経験のおかげで、敵を巻いたりするのは得意なのよね――)
シュタインがわたしに叫ぶ!!
「す、すまない、ヴィオレッタ! か、覚悟を決めるから――!」
二人目の騎士たちが襲来すると、わたしは集団目がけてシーツを投げる。
視界が白くなった男たちが、一斉に大声をあげた。
そのすきに、最初に転ばせた男から、わたしは武器をかすめとってシュタインに放り投げた。
そうして、わたしは彼に向かって叫んだ――。
「シュタイン! 本当にわたしがいないとダメなんだから――!」
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