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第2話 姫、鬼に喰われる――橋姫――ごはん
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しおりを挟む単姿にされた姫が、湯殿に一人残されていると――。
「失礼致します、あやめ姫」
艶々とした黒髪に、釣りがちな紅い瞳をした女性が現れた。
(冷たそうな雰囲気の女性ね……)
鬼童丸の屋敷に仕えている女房だろうか。
頭の上には二本の角が生えているのが見えた。
あやめと同じく単姿をしている。
(人間の女性のように見えるけれど……油断したらダメ……)
あやめが身構えていると――。
「あらあらあらあら……」
ずいっと接近した彼女に、あやめはぱっと手をとられる。
うっとりとした声音で女性が語りかけてくるではないか。
「鬼童丸様にうかがっていた通り、幼さの残る愛らしい姫様ですわね……!!」
「え?」
相手の想定外の反応に困惑してしまう。
「鬼童丸様ったら、『泥臭いから綺麗にしろ』とか命じてきましたけれど……単に庭いじりをして、土の香りがするだけではございませんか……! 照れ隠しだったのでしょうね、うふふふふ!」
「ええっと……」
冷たい印象とは裏腹に、異様に気分が高揚していて、落差が激しい。
「わたくしのことは『橋』とお呼びくださいませ! あのツンケンした鬼童丸様の元に来てくださって本当にありがとうございます! さあさあ、お身体流して差し上げますわね……! あらあらあら、なんて麗しい、すべすべとしたお肌……お羨ましいですわ……!」
「わわわ……!」
相手の勢いにのまれたまま――今から鬼に喰われる状況だというのも頭からぶっ飛んでしまった状態で、橋と名乗る女性から、あやめは身を清められたのだった。
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