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第2話 姫、鬼に喰われる――橋姫――ごはん

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 そのまま寝殿へと向かうのかと思ったのだが――渡殿わたどのの途中の一角にある湯殿ゆどのへと連れて行かれた。

「ちょっと離してください、なんで湯殿に……きゃっ……!」

 唐突に、相手が腰紐をしゅるしゅる解きはじめるではないか。

「な、な、な、何するんですか……ちょっと、やめてっ……」

 貞操の危機を感じたあやめの口から怯えた声が漏れ出る。

「ああ、良いから黙って俺の言うこと聞いておけよ」

「さすがに、ちょっとそれは……!」

「お前、貴族の邸宅にいたんだから、一応姫のはずだよな?」

「そ、そうですけど……!」

「そのわりには泥臭い」

「え?」

 脱がされながら、あやめ姫はぽかんと口を開いた。

「もっとこう、着飾った女たちが多かった気がするんだがな……なんとなくみすぼらしいし……連れてくることで頭がいっぱいいっぱいになっちまってたな……」

「それは……貧しかったからで……やあっ……」

 あれよあれよという間に、ひとえ姿にされてしまった。

(裸同然の格好にされてしまったわ……!)

 あやめ姫は両腕で胸を隠して必死に抗議の姿勢を示す。

「いくら今から貴方に食べられるんだとしても、さすがに殿方の前でこんな格好にされるのは……!」

 すると、相手の手がぬっと伸びてくる。

「きゃっ……!」

 びくつくあやめを見て、鬼童丸がはあっとため息をついた。

「色気のねぇガキに手を出すほど、俺も暇じゃねぇ……」

 そうして、ひょいっとそのまま浴槽の方へと姫は放り投げられた。

「とにかく、女の割には土臭いから、さっさと泥を落とせ。せっかくの甘い香りが台無しだぞ。女房達には言っておくから」

「つ、土臭いって……あっ……ちょっと……!」

 湯殿の板扉が閉められたかと思うと、彼は姿を消した。

 菖蒲姫の胸の内には、勝手に勘違いした気恥ずかしさが残ったのだった。


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