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庭園1
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ウォルポール侯爵邸の庭園は、広さこそそれ程ではないが、夫人の手が行き届いた美しい庭である。
母国では馴染の無かった帝国由来の花々が美しく、春の盛りを迎える今は匂い立つ程である。
「殿下」
不敬かと思われたが、オフィーリアは先に言葉を発した。
「お怒りでいらっしゃいますのね?」
「....何故そう思う?」
やや時間を置いてアンドリューが応えた。
声音は静かなものである。
「私が、貴方様を怒らせたから。」
「....」
「ごめんなさい。」
思わず素の言葉で謝ってしまったオフィーリア。
暫くして、ふっと小さな息が漏れた。
それはアンドリューのものである。
アンドリューはゆっくりと歩みを進めている。
長い脚は歩幅も大きい筈なのに、オフィーリアの歩みに合わせてくれる。
重なる掌は温かくて、ここに確かにアンドリューがいるのだと実感させられた。
「何故謝る?」
「私が貴方との約束を破ったから。」
オフィーリアは知らず知らずのうちに言葉が解れて、年相応の少女のそれになっているのに気付いていない。
「オフィーリア」
ああ、温かな声。私の名を呼ぶ貴方の声。
「本当に謝らねばならないのは、僕の方なんだ。」
「僕は君に何も話していない。何も教えていない。」
「君が不安に駆られる事は承知の上で、君を一人にしている。」
「だけれど、オフィーリア。」
「僕を、愛してくれるかな?」
「こんな不甲斐ない男を好きだと云ってくれるかな?」
母国では馴染の無かった帝国由来の花々が美しく、春の盛りを迎える今は匂い立つ程である。
「殿下」
不敬かと思われたが、オフィーリアは先に言葉を発した。
「お怒りでいらっしゃいますのね?」
「....何故そう思う?」
やや時間を置いてアンドリューが応えた。
声音は静かなものである。
「私が、貴方様を怒らせたから。」
「....」
「ごめんなさい。」
思わず素の言葉で謝ってしまったオフィーリア。
暫くして、ふっと小さな息が漏れた。
それはアンドリューのものである。
アンドリューはゆっくりと歩みを進めている。
長い脚は歩幅も大きい筈なのに、オフィーリアの歩みに合わせてくれる。
重なる掌は温かくて、ここに確かにアンドリューがいるのだと実感させられた。
「何故謝る?」
「私が貴方との約束を破ったから。」
オフィーリアは知らず知らずのうちに言葉が解れて、年相応の少女のそれになっているのに気付いていない。
「オフィーリア」
ああ、温かな声。私の名を呼ぶ貴方の声。
「本当に謝らねばならないのは、僕の方なんだ。」
「僕は君に何も話していない。何も教えていない。」
「君が不安に駆られる事は承知の上で、君を一人にしている。」
「だけれど、オフィーリア。」
「僕を、愛してくれるかな?」
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