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気づくまで (ライルハート視点)
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僕の動きを制限していた存在、それはマレシアだった。
僕の外套の裾、それをその細い指が握っている。
その様子に、一瞬起こしてしまったかと罪悪感が僕の胸に浮かぶが、すぐにその考えは否定されることになった。
何せ、マレシアの目は相変わらず閉じられていて、僕の外套を握るその手にはあまりにも軽い力しかこもってなかったのだから。
夢見でも悪かったのだろうか、そんなことを考えながらも、僕はゆっくりとマレシアの指を離そうとする。
「ん、んん……」
「……っ」
マレシアが緩慢に目をあけたのは、そのときだった。
一瞬僕の胸にひやりとしたものがよぎるが、こちらをみるマレシアの顔に浮かぶのは、色濃い眠気だった。
どうやら、まだ完全には眠気からさめていないらしい、そう理解し僕は安堵を覚える。
けれど、それはマレシアが僕の外套を両手で握りしめるまでのことだった。
一瞬僕の胸に焦りが浮かぶ僕をよそに、マレシアは僕の外套を胸に抱え込み、小さく告げた。
「……一人に、しないで」
それだけ告げると、マレシアはそのままの状態で再度眠りについてしまう。
安らかにたてている寝息からは、今なら外套さえ脱げばここからされるだろうことを物語っていた。
しかし、それを理解して僕には逃げる気など存在しなかった。
ゆっくりと僕は安らかに眠るマレシアの頭をなでる。
「……そうだよね、ごめん」
これまで王国に来てもなお、マレシアは一切弱いところを見せなかった。
故に僕はもう振り切りつつあるのかと思っていたのだが、そんなことがあるわけなかったのだ。
何せ、ここはマレシアが全てを奪われた場所なのだから。
何も感じない訳がなかったのだ。
……そこまで気づいたとき、僕の頭には迎えに行ったときの今にも泣き出しそうなマレシアが浮かんでいた。
今にも壊れてしまいそうだったマレシアが。
そのことに気づいた瞬間、僕はマレシアの額へと顔を寄せていた。
そして僕は迎えに行った時、マレシアにしたように……優しく口づけをした。
それは、帝国において家族への親愛を表すとされるキス。
けれど、僕にとってはこのキスは特別なものだった。
──なぜなら、このキスは僕を救ってくれたキスなのだから。
僕の脳裏、忘れる訳ができない記憶がよみがえる。
それは、龍殺しとなる前の記憶。
忌み子として忌み嫌われた僕は、龍討伐なんて名目で殺されるところだった。
あのままでは実際、僕は死んでいただろう。
そのときに現れたのが、マレシアだった。
マレシアは僕に龍と戦うための力をくれた。
そして誰からも、両親にさえ嫌われた僕に、初めて親愛のキスをしてくれた。
「……君はあのとき、謝ってくれたよね。こんなことしかできなくてごめんて」
顔を歪め、そう謝罪するマレシアの顔が浮かぶ。
それに僕は思わず笑ってしまいそうになる。
僕がどれだけその時救われたのか、一切理解していないマレシアがおかしくてたまらなくて。
「そんなことないと、理解できるまで僕はそばにいるから」
この不器用で、泣き虫で……なのにどうしようもなくお節介焼きな頑張り屋。
そんなマレシアを少しでも近くで見守ろうと、僕は誓うようにそう告げる。
そして僕は、音を立てないようにベッドの横に腰を下ろす。
もうそのときには、眠る気など僕の中から消えていた。
どうせ体は強靱なのだ。
二、三日の徹夜も問題ない。
そう覚悟を決めて、僕は小さく笑った。
「まあ、理解したらしたで、逃がしはしないんだけどね」
あの日、救いとともに胸の中を支配する熱。
それを意識しながら僕は小さく笑う。
いつになったら、この鈍感な人は自分の思いに気づいてくれるかと思いながら……。
◇◇◇
更新遅れてしまい、申し訳ありません!
偽聖女に関してはこれで完結とさせて頂きます!
もし、いつか続きを書く時があればその時はよろしくお願いします。
長々とお付き合いありがとうございました!
僕の外套の裾、それをその細い指が握っている。
その様子に、一瞬起こしてしまったかと罪悪感が僕の胸に浮かぶが、すぐにその考えは否定されることになった。
何せ、マレシアの目は相変わらず閉じられていて、僕の外套を握るその手にはあまりにも軽い力しかこもってなかったのだから。
夢見でも悪かったのだろうか、そんなことを考えながらも、僕はゆっくりとマレシアの指を離そうとする。
「ん、んん……」
「……っ」
マレシアが緩慢に目をあけたのは、そのときだった。
一瞬僕の胸にひやりとしたものがよぎるが、こちらをみるマレシアの顔に浮かぶのは、色濃い眠気だった。
どうやら、まだ完全には眠気からさめていないらしい、そう理解し僕は安堵を覚える。
けれど、それはマレシアが僕の外套を両手で握りしめるまでのことだった。
一瞬僕の胸に焦りが浮かぶ僕をよそに、マレシアは僕の外套を胸に抱え込み、小さく告げた。
「……一人に、しないで」
それだけ告げると、マレシアはそのままの状態で再度眠りについてしまう。
安らかにたてている寝息からは、今なら外套さえ脱げばここからされるだろうことを物語っていた。
しかし、それを理解して僕には逃げる気など存在しなかった。
ゆっくりと僕は安らかに眠るマレシアの頭をなでる。
「……そうだよね、ごめん」
これまで王国に来てもなお、マレシアは一切弱いところを見せなかった。
故に僕はもう振り切りつつあるのかと思っていたのだが、そんなことがあるわけなかったのだ。
何せ、ここはマレシアが全てを奪われた場所なのだから。
何も感じない訳がなかったのだ。
……そこまで気づいたとき、僕の頭には迎えに行ったときの今にも泣き出しそうなマレシアが浮かんでいた。
今にも壊れてしまいそうだったマレシアが。
そのことに気づいた瞬間、僕はマレシアの額へと顔を寄せていた。
そして僕は迎えに行った時、マレシアにしたように……優しく口づけをした。
それは、帝国において家族への親愛を表すとされるキス。
けれど、僕にとってはこのキスは特別なものだった。
──なぜなら、このキスは僕を救ってくれたキスなのだから。
僕の脳裏、忘れる訳ができない記憶がよみがえる。
それは、龍殺しとなる前の記憶。
忌み子として忌み嫌われた僕は、龍討伐なんて名目で殺されるところだった。
あのままでは実際、僕は死んでいただろう。
そのときに現れたのが、マレシアだった。
マレシアは僕に龍と戦うための力をくれた。
そして誰からも、両親にさえ嫌われた僕に、初めて親愛のキスをしてくれた。
「……君はあのとき、謝ってくれたよね。こんなことしかできなくてごめんて」
顔を歪め、そう謝罪するマレシアの顔が浮かぶ。
それに僕は思わず笑ってしまいそうになる。
僕がどれだけその時救われたのか、一切理解していないマレシアがおかしくてたまらなくて。
「そんなことないと、理解できるまで僕はそばにいるから」
この不器用で、泣き虫で……なのにどうしようもなくお節介焼きな頑張り屋。
そんなマレシアを少しでも近くで見守ろうと、僕は誓うようにそう告げる。
そして僕は、音を立てないようにベッドの横に腰を下ろす。
もうそのときには、眠る気など僕の中から消えていた。
どうせ体は強靱なのだ。
二、三日の徹夜も問題ない。
そう覚悟を決めて、僕は小さく笑った。
「まあ、理解したらしたで、逃がしはしないんだけどね」
あの日、救いとともに胸の中を支配する熱。
それを意識しながら僕は小さく笑う。
いつになったら、この鈍感な人は自分の思いに気づいてくれるかと思いながら……。
◇◇◇
更新遅れてしまい、申し訳ありません!
偽聖女に関してはこれで完結とさせて頂きます!
もし、いつか続きを書く時があればその時はよろしくお願いします。
長々とお付き合いありがとうございました!
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