23 / 24
部屋にいたのは (ライハート視点)
しおりを挟む
「……固く考えすぎなんだよ」
聖獣の前をさった僕、ライハートの口から思わずそんな言葉が漏れる。
本人に届かないと理解しつつも、僕はその思いを自分の内に押しとどめることができなかった。
これが余計なお節介そのものであるとは理解している。
それでも、全てを見なかったことにするには、聖獣とのつきあいは決死って軽くはなかった。
「不戦勝なんて後味が悪いに程あるでしょ」
といっても、どうすればいいかなんて僕にわかる訳もなかった。
そう簡単にわかるなら、こんなに扱いを悩むことになってはいないのだ。
「……まあ、今回はカイザードを処理できただけでいいとするしかないか」
そう呟きながら、僕は自身に割り振られた部屋へと急ぐ。
龍殺しとなって以来、人間と体の仕組みが大きく変わった自覚はあるが、今日は精神的な疲労が体にたまっていた。
戻ったらすぐに休もう、そんなことを感がえながら僕は扉を開き……部屋の中で眠っていた人に気づくこととなった。
「……え?」
部屋におかれたソファで、眠るその女性。
それは、隣の部屋で休んでいるはずのマレシだった。
まるで想像もしていないことに一瞬僕の思考は止まる。
しかし、僕が心を乱したのは、マレシアの衣装が公務用のものであると気づくまでだった。
「ああ。心配してくれていたのか」
おそらく、マレシアは帰りが遅い僕を心配して待ってくれていたのだろう。
ソファに座った状態で寝ているのも、その証拠だ。
僕のことを心配して待っている内に、寝てしまったというのが、今までの経緯と言ったところだろう。
実のところ、カイザードの処理、第二王子の謝罪、などの諸々の雑務があり、もう深夜と言っていい時間だ。
肘かけに顔を押し当てたせいか、赤くなっている頬に指を沿わせながら、僕は小さく呟く。
「……寝てしまうくらいなら、自身の部屋で待ってくれていればよかったのに」
しかし、そういいながらも僕の口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。
マレシアが僕のことをこうして待ってくれていたということが、どうしようもなくうれしくてたまらない。
そんな自分に苦笑しながら、僕はマレシアを抱え自身のベッドへと移した。
そして、かさばる外套だけを脱がして少しでも寝やすく調整して、僕はマレシアの艶やかな髪に手をのばす。
「お休み、いい夢を」
さすがにマレシアと同じ部屋に寝る訳にはいかない。
そう判断した僕は、仮眠室でも借りようかと立ち上がる。
そして静かに歩き出そうとして……なにかが僕の動きを遮った。
突然のことに驚きながらも、僕はゆっくりと自分の動きを制限してる方向へと振り返った。
「……マレシア?」
聖獣の前をさった僕、ライハートの口から思わずそんな言葉が漏れる。
本人に届かないと理解しつつも、僕はその思いを自分の内に押しとどめることができなかった。
これが余計なお節介そのものであるとは理解している。
それでも、全てを見なかったことにするには、聖獣とのつきあいは決死って軽くはなかった。
「不戦勝なんて後味が悪いに程あるでしょ」
といっても、どうすればいいかなんて僕にわかる訳もなかった。
そう簡単にわかるなら、こんなに扱いを悩むことになってはいないのだ。
「……まあ、今回はカイザードを処理できただけでいいとするしかないか」
そう呟きながら、僕は自身に割り振られた部屋へと急ぐ。
龍殺しとなって以来、人間と体の仕組みが大きく変わった自覚はあるが、今日は精神的な疲労が体にたまっていた。
戻ったらすぐに休もう、そんなことを感がえながら僕は扉を開き……部屋の中で眠っていた人に気づくこととなった。
「……え?」
部屋におかれたソファで、眠るその女性。
それは、隣の部屋で休んでいるはずのマレシだった。
まるで想像もしていないことに一瞬僕の思考は止まる。
しかし、僕が心を乱したのは、マレシアの衣装が公務用のものであると気づくまでだった。
「ああ。心配してくれていたのか」
おそらく、マレシアは帰りが遅い僕を心配して待ってくれていたのだろう。
ソファに座った状態で寝ているのも、その証拠だ。
僕のことを心配して待っている内に、寝てしまったというのが、今までの経緯と言ったところだろう。
実のところ、カイザードの処理、第二王子の謝罪、などの諸々の雑務があり、もう深夜と言っていい時間だ。
肘かけに顔を押し当てたせいか、赤くなっている頬に指を沿わせながら、僕は小さく呟く。
「……寝てしまうくらいなら、自身の部屋で待ってくれていればよかったのに」
しかし、そういいながらも僕の口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。
マレシアが僕のことをこうして待ってくれていたということが、どうしようもなくうれしくてたまらない。
そんな自分に苦笑しながら、僕はマレシアを抱え自身のベッドへと移した。
そして、かさばる外套だけを脱がして少しでも寝やすく調整して、僕はマレシアの艶やかな髪に手をのばす。
「お休み、いい夢を」
さすがにマレシアと同じ部屋に寝る訳にはいかない。
そう判断した僕は、仮眠室でも借りようかと立ち上がる。
そして静かに歩き出そうとして……なにかが僕の動きを遮った。
突然のことに驚きながらも、僕はゆっくりと自分の動きを制限してる方向へと振り返った。
「……マレシア?」
68
お気に入りに追加
3,916
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!
未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます!
会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。
一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、
ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。
このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…?
人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、
魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。
聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、
魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。
魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、
冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく…
聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です!
完結まで書き終わってます。
※他のサイトにも連載してます
わたしを嫌う妹の企みで追放されそうになりました。だけど、保護してくれた公爵様から溺愛されて、すごく幸せです。
バナナマヨネーズ
恋愛
山田華火は、妹と共に異世界に召喚されたが、妹の浅はかな企みの所為で追放されそうになる。
そんな華火を救ったのは、若くしてシグルド公爵となったウェインだった。
ウェインに保護された華火だったが、この世界の言葉を一切理解できないでいた。
言葉が分からない華火と、華火に一目で心を奪われたウェインのじりじりするほどゆっくりと進む関係性に、二人の周囲の人間はやきもきするばかり。
この物語は、理不尽に異世界に召喚された少女とその少女を保護した青年の呆れるくらいゆっくりと進む恋の物語である。
3/4 タイトルを変更しました。
旧タイトル「どうして異世界に召喚されたのかがわかりません。だけど、わたしを保護してくれたイケメンが超過保護っぽいことはわかります。」
3/10 翻訳版を公開しました。本編では異世界語で進んでいた会話を日本語表記にしています。なお、翻訳箇所がない話数には、タイトルに 〃 をつけてますので、本編既読の場合は飛ばしてもらって大丈夫です
※小説家になろう様にも掲載しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。
木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。
朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。
そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。
「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」
「なっ……正気ですか?」
「正気ですよ」
最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。
こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる