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第三話
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「私、この日を首を長くして待ってましたのよ」
私たちを勝ち気な目で見下しながら、イリーナはそう告げる。
「ようやくこれで、貴女達が聖女見習いとして選ばれたのが間違いであったことを示すことができるのだから!」
「……っ」
イリーナの語気に、私の隣のセリナの顔に動揺が走る。
そんなセリナを守るように、私は一歩前に出る。
そして、イリーナに対抗するように勝ち気な笑みを浮かべて見せた。
「あら、以前そう言ってから私にこれまでの試験で勝ったことありましたっけ?」
「っ!」
今まで勝ち気だったイリーナの顔が突然険しくなったのは、その瞬間だった。
こちらをきつく睨みつけてくるイリーナに対し、私はまっすぐと視線を返す。
「……侯爵令嬢のこの私にたてついたことを、今に後悔するわよ」
そう言い残してイリーナは、背を向ける。
そのイリーナの背中が人混みに紛れて見えなって、私はようやく安堵の息をもらした。
何とか、今回もしのげた、そう思って。
しかし、そんな私と対照的にセリナの顔から不安げな表情が消える子とはなかった。
「どうしたの、セリナ?」
「アリア、私たち大丈夫かな?」
セリナはいつも不安げな様子で、イリーナをおそれている。
けれど今回は、いつもよりもさらに不安げだった。
その様子に首を傾げながら、私は告げる。
「大丈夫に決まってるわよ。名目上ではあっても、聖女同士に身分なんてないのよ。適正診査が終われば、これまでのような嫌がらせも減るに決まってるわ」
以前までなら、私がここまで言えば控えめ笑みがセリナの顔に浮かんでいた。
けれど、今日だけはセリナの顔から不安が消えることはなかった。
「でも、もし。……私達が聖女の適正がなかったら、もっとひどくなりそうじゃない?」
それは、私のまるで想像していない言葉だった。
一瞬私は思わず沈黙し、すぐに笑って口を開いた。
「そんなことあり得ないわよ! 私が保証するわ。セリナ、貴女は間違いなく聖女としても才能があるって!」
その言葉は、決して気休めなんかではなかった。
確かにセリナは気は弱い。
けれど、それだけの人間でないことを、これまでの友達づきあいの中で私は確信していた。
それははっきりと言えるものではない。
でも、セリナという少女は何か特別なところがあった。
「アリア……。うん!」
そして、その私の気持ちが伝わったのか、ぎこちなくもセリナも笑みを浮かべる。
それを見ながら、私は改めて内心で呟く。
そう、私たちが才能がなんてないことはあり得ないと。
セリアには、それだけの何かがあって、私は他の聖女見習いに負けない努力を重ねてきたのだから。
ただ、私は適正検査が始まるのが楽しみで。
「聖女見習いは整列しなさい。ただいまから、適正診査を始めます」
「……っ」
待望の言葉が告げられたのはその時だった。
私たちを勝ち気な目で見下しながら、イリーナはそう告げる。
「ようやくこれで、貴女達が聖女見習いとして選ばれたのが間違いであったことを示すことができるのだから!」
「……っ」
イリーナの語気に、私の隣のセリナの顔に動揺が走る。
そんなセリナを守るように、私は一歩前に出る。
そして、イリーナに対抗するように勝ち気な笑みを浮かべて見せた。
「あら、以前そう言ってから私にこれまでの試験で勝ったことありましたっけ?」
「っ!」
今まで勝ち気だったイリーナの顔が突然険しくなったのは、その瞬間だった。
こちらをきつく睨みつけてくるイリーナに対し、私はまっすぐと視線を返す。
「……侯爵令嬢のこの私にたてついたことを、今に後悔するわよ」
そう言い残してイリーナは、背を向ける。
そのイリーナの背中が人混みに紛れて見えなって、私はようやく安堵の息をもらした。
何とか、今回もしのげた、そう思って。
しかし、そんな私と対照的にセリナの顔から不安げな表情が消える子とはなかった。
「どうしたの、セリナ?」
「アリア、私たち大丈夫かな?」
セリナはいつも不安げな様子で、イリーナをおそれている。
けれど今回は、いつもよりもさらに不安げだった。
その様子に首を傾げながら、私は告げる。
「大丈夫に決まってるわよ。名目上ではあっても、聖女同士に身分なんてないのよ。適正診査が終われば、これまでのような嫌がらせも減るに決まってるわ」
以前までなら、私がここまで言えば控えめ笑みがセリナの顔に浮かんでいた。
けれど、今日だけはセリナの顔から不安が消えることはなかった。
「でも、もし。……私達が聖女の適正がなかったら、もっとひどくなりそうじゃない?」
それは、私のまるで想像していない言葉だった。
一瞬私は思わず沈黙し、すぐに笑って口を開いた。
「そんなことあり得ないわよ! 私が保証するわ。セリナ、貴女は間違いなく聖女としても才能があるって!」
その言葉は、決して気休めなんかではなかった。
確かにセリナは気は弱い。
けれど、それだけの人間でないことを、これまでの友達づきあいの中で私は確信していた。
それははっきりと言えるものではない。
でも、セリナという少女は何か特別なところがあった。
「アリア……。うん!」
そして、その私の気持ちが伝わったのか、ぎこちなくもセリナも笑みを浮かべる。
それを見ながら、私は改めて内心で呟く。
そう、私たちが才能がなんてないことはあり得ないと。
セリアには、それだけの何かがあって、私は他の聖女見習いに負けない努力を重ねてきたのだから。
ただ、私は適正検査が始まるのが楽しみで。
「聖女見習いは整列しなさい。ただいまから、適正診査を始めます」
「……っ」
待望の言葉が告げられたのはその時だった。
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