2 / 9
序章
第二話
しおりを挟む
人間と言うより彫刻と言っていいような綺麗な顔立ちに、光と反射する金髪と金色の目。
人間とも思えない綺麗な顔をを向けられ、私は呆然と立ち尽くし。
……てるように見せかけ、内心は罵詈雑言を吐き捨てていた。
何が愁傷だ。
そう思うなら、その半分でも敬意を持って謝罪することはできないのだろうか、この人外顔面は。
口にしたら父親がすっ飛んできて土下座しそうなことを内心で考えつつ、表面上はにっこりと私は口を開く。
「改めまして旦那様、私は……」
「旦那様など呼ぶな。怖気がする」
「……は?」
その瞬間、私の顔から仮面が剥がれかけることになった。
咄嗟に直ぐ化けの皮をかぶり治す。
しかし、そんな私を見るカズタリアの顔に浮かぶのは嘲りの表情だった。
それは何より雄弁に旦那が私の皮に気づいたことを物語っていて、私の怒りがさらに増幅される。
それを必死に押し込む私に対し、嘲りを隠さない表情のまま、カズタリアは口を開く。
「アズリヒア伯爵令嬢、お前は俺の寵愛を受けられると思ってここにきたんだろうな。悪いがそんな未来は実現しない」
嘲りの上に僅かな嫌悪感を滲ませながら、カズタリアは告げる。
「俺はお前等のような女が嫌いだからな。表面上そつない表情をしながら、その実俺を誘惑することしか考えてない。悪いが俺はお前に嫌悪感しか感じない。お前の父には金を借りている手前、強くでれずお前をめとった。だが」
そこで初めて笑みを消したカズタリアは私に向けて、嫌悪感を滲ませた表情を浮かべ告げる。
「俺とお前はあくまで政略結婚。お前はただのお飾りの妻でしかない。それだけは理解しておけ」
そのカズタリアの言葉を私は無言で笑顔を浮かべた状態で聞いていた。
にっこりと、笑ったままで。
もちろんその内心は、爆発寸前。
けれど、それを最後の理性で一旦押さえながら、口を開く。
「分かりました。侯爵様の仰ることは理解しました」
「ほう、アズリヒア伯爵令嬢は随分聞き訳がいいな。俺は嫌いではないぞ」
「代わりと言ってはなんですが、私からも少しお話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「ふん、聞くだけは聞いてやる」
「では」
そう許可を取った上で、私は胸にたまっていた怒りを解き放った。
「まずは一発殴らせてもらいますね」
「……は?」
人間とも思えない綺麗な顔をを向けられ、私は呆然と立ち尽くし。
……てるように見せかけ、内心は罵詈雑言を吐き捨てていた。
何が愁傷だ。
そう思うなら、その半分でも敬意を持って謝罪することはできないのだろうか、この人外顔面は。
口にしたら父親がすっ飛んできて土下座しそうなことを内心で考えつつ、表面上はにっこりと私は口を開く。
「改めまして旦那様、私は……」
「旦那様など呼ぶな。怖気がする」
「……は?」
その瞬間、私の顔から仮面が剥がれかけることになった。
咄嗟に直ぐ化けの皮をかぶり治す。
しかし、そんな私を見るカズタリアの顔に浮かぶのは嘲りの表情だった。
それは何より雄弁に旦那が私の皮に気づいたことを物語っていて、私の怒りがさらに増幅される。
それを必死に押し込む私に対し、嘲りを隠さない表情のまま、カズタリアは口を開く。
「アズリヒア伯爵令嬢、お前は俺の寵愛を受けられると思ってここにきたんだろうな。悪いがそんな未来は実現しない」
嘲りの上に僅かな嫌悪感を滲ませながら、カズタリアは告げる。
「俺はお前等のような女が嫌いだからな。表面上そつない表情をしながら、その実俺を誘惑することしか考えてない。悪いが俺はお前に嫌悪感しか感じない。お前の父には金を借りている手前、強くでれずお前をめとった。だが」
そこで初めて笑みを消したカズタリアは私に向けて、嫌悪感を滲ませた表情を浮かべ告げる。
「俺とお前はあくまで政略結婚。お前はただのお飾りの妻でしかない。それだけは理解しておけ」
そのカズタリアの言葉を私は無言で笑顔を浮かべた状態で聞いていた。
にっこりと、笑ったままで。
もちろんその内心は、爆発寸前。
けれど、それを最後の理性で一旦押さえながら、口を開く。
「分かりました。侯爵様の仰ることは理解しました」
「ほう、アズリヒア伯爵令嬢は随分聞き訳がいいな。俺は嫌いではないぞ」
「代わりと言ってはなんですが、私からも少しお話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「ふん、聞くだけは聞いてやる」
「では」
そう許可を取った上で、私は胸にたまっていた怒りを解き放った。
「まずは一発殴らせてもらいますね」
「……は?」
57
お気に入りに追加
274
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
7年ぶりに帰国した美貌の年下婚約者は年上婚約者を溺愛したい。
なーさ
恋愛
7年前に隣国との交換留学に行った6歳下の婚約者ラドルフ。その婚約者で王城で侍女をしながら領地の運営もする貧乏令嬢ジューン。
7年ぶりにラドルフが帰国するがジューンは現れない。それもそのはず2年前にラドルフとジューンは婚約破棄しているからだ。そのことを知らないラドルフはジューンの家を訪ねる。しかしジューンはいない。後日王城で会った二人だったがラドルフは再会を喜ぶもジューンは喜べない。なぜなら王妃にラドルフと話すなと言われているからだ。わざと突き放すような言い方をしてその場を去ったジューン。そしてラドルフは7年ぶりに帰った実家で婚約破棄したことを知る。
溺愛したい美貌の年下騎士と弟としか見ていない年上令嬢。二人のじれじれラブストーリー!
酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。
子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。
ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。
それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。
こういうの「ざまぁ」って言うんですよね? ~婚約破棄されたら美人になりました~
茅野ガク
恋愛
家のために宝石商の息子と婚約をした伯爵令嬢シスカ。彼女は婚約者の長年の暴言で自分に自信が持てなくなっていた。
更には婚約者の裏切りにより、大勢の前で婚約破棄を告げられてしまう。
シスカが屈辱に耐えていると、宮廷医師ウィルドがその場からシスカを救ってくれた。
初対面のはずの彼はシスカにある提案をして――
人に素顔を見せることが怖くなっていたシスカが、ウィルドと共に自信と笑顔を取り戻していくお話です。
【完結】円満婚約解消
里音
恋愛
「気になる人ができた。このまま婚約を続けるのは君にも彼女にも失礼だ。だから婚約を解消したい。
まず、君に話をしてから両家の親達に話そうと思う」
「はい。きちんとお話ししてくださってありがとうございます。
両家へは貴方からお話しくださいませ。私は決定に従います」
第二王子のロベルトとその婚約者ソフィーリアの婚約解消と解消後の話。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
主人公の女性目線はほぼなく周囲の話だけです。番外編も本当に必要だったのか今でも悩んでます。
コメントなど返事は出来ないかもしれませんが、全て読ませていただきます。
もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません
片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。
皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。
もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。
マルフィル嬢の日々
夏千冬
恋愛
第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。
それも王命により屋敷に軟禁状態。肉襦袢を着込んだ肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!
改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットを始めた。そして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することをスタート目標に、更生計画を開始する!
※こちらはアルファポリス様、小説家になろう様で投稿させて頂きました「婚約破棄から〜2年後〜からのおめでとう」の連載版です。タイトルは仮決定です。
婚約者に心変わりされた私は、悪女が巣食う学園から姿を消す事にします──。
Nao*
恋愛
ある役目を終え、学園に戻ったシルビア。
すると友人から、自分が居ない間に婚約者のライオスが別の女に心変わりしたと教えられる。
その相手は元平民のナナリーで、可愛く可憐な彼女はライオスだけでなく友人の婚約者や他の男達をも虜にして居るらしい。
事情を知ったシルビアはライオスに会いに行くが、やがて婚約破棄を言い渡される。
しかしその後、ナナリーのある驚きの行動を目にして──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる