1 / 9
序章
第一話
しおりを挟む
結婚式が終わってから一体何時間たっただろうか。
ふと、私、リズリアはそんな思いを抱く。
私がいるのは、綺麗な部屋の中だった。
その中で一人、私はぽつんと後から来ると言ったまま、現れない夫を待っていた。
「……初夜で一人てどういうことよ」
そう、今は本来であれば私と夫の初夜となるはずだった。
私の実家である伯爵家と、侯爵家当主である夫との結婚、それは突然決まったものだった。
決まってから実行されるまで、一ヶ月もなかったと聞いている。
それどころか、これを逃せば私に婚約の機会がないと言っていた父は、結婚式が始まるぎりぎりまで私に婚約を知らせなかった。
そのせいで私に至っては、この結婚を知ったのが今日である。
「よくも騙したわね、あのくそおやじ……。何が、新しい商売を私に任せるよ……! 帰ったら、残り少ない毛根を引き抜いてやる……!」
一人であることを良いことに私は歯噛みし、脳裏に浮かぶ父へと恨み言を口にする。
「こんな結婚、前代未聞でしょうに……」
そう言いながらも、私は理解していた。
私がそうであるように、夫もまた突然の結婚だったのだろうと言うことを。
今回の一件、間違いなく私の婚期を心配した父の暴走で間違いないだろう。
それで押し切られた夫が何か複雑な思いを抱いているのは容易に想像できることだから。
特に、結婚式でみた夫は中々のイケメンだった。
引く手あまたなところ、私をねじ込まれたのだ。
文句を言いたい気持ちはよく分かる。
「……とは言っても、ここまで待たせるのは失礼とは思わないのかしら」
そう私は小さく呟く。
こちらへと向かってくる足音が響いたのはそんな時だった。
ベッドに寝込んだ状態でその足音を聞いた私は反射的に飛び上がって居住まいを直す。
そして素早く衣服を直し。
がちゃん、と音がなって扉が開いたのは次の瞬間のことだった。
まさかノックもなしに扉が開くなど思ってもいなかった私は、居住まいを正した姿勢のまま固まる。
「ふん、態度だけは愁傷なようだな」
あけ開かれた扉から見えるのは、人間離れした綺麗な顔をした男性。
私の夫、カズタリア・アズリスクがそこに立っていた。
◇◇◇
この作品はリメイク作品になります……!
以前勝手に非公開にしてしまっており、すいません……!
今回は定期的に更新できると思いますので、よろしくお願いいたします!
21時頃にもう一話更新になります。
ふと、私、リズリアはそんな思いを抱く。
私がいるのは、綺麗な部屋の中だった。
その中で一人、私はぽつんと後から来ると言ったまま、現れない夫を待っていた。
「……初夜で一人てどういうことよ」
そう、今は本来であれば私と夫の初夜となるはずだった。
私の実家である伯爵家と、侯爵家当主である夫との結婚、それは突然決まったものだった。
決まってから実行されるまで、一ヶ月もなかったと聞いている。
それどころか、これを逃せば私に婚約の機会がないと言っていた父は、結婚式が始まるぎりぎりまで私に婚約を知らせなかった。
そのせいで私に至っては、この結婚を知ったのが今日である。
「よくも騙したわね、あのくそおやじ……。何が、新しい商売を私に任せるよ……! 帰ったら、残り少ない毛根を引き抜いてやる……!」
一人であることを良いことに私は歯噛みし、脳裏に浮かぶ父へと恨み言を口にする。
「こんな結婚、前代未聞でしょうに……」
そう言いながらも、私は理解していた。
私がそうであるように、夫もまた突然の結婚だったのだろうと言うことを。
今回の一件、間違いなく私の婚期を心配した父の暴走で間違いないだろう。
それで押し切られた夫が何か複雑な思いを抱いているのは容易に想像できることだから。
特に、結婚式でみた夫は中々のイケメンだった。
引く手あまたなところ、私をねじ込まれたのだ。
文句を言いたい気持ちはよく分かる。
「……とは言っても、ここまで待たせるのは失礼とは思わないのかしら」
そう私は小さく呟く。
こちらへと向かってくる足音が響いたのはそんな時だった。
ベッドに寝込んだ状態でその足音を聞いた私は反射的に飛び上がって居住まいを直す。
そして素早く衣服を直し。
がちゃん、と音がなって扉が開いたのは次の瞬間のことだった。
まさかノックもなしに扉が開くなど思ってもいなかった私は、居住まいを正した姿勢のまま固まる。
「ふん、態度だけは愁傷なようだな」
あけ開かれた扉から見えるのは、人間離れした綺麗な顔をした男性。
私の夫、カズタリア・アズリスクがそこに立っていた。
◇◇◇
この作品はリメイク作品になります……!
以前勝手に非公開にしてしまっており、すいません……!
今回は定期的に更新できると思いますので、よろしくお願いいたします!
21時頃にもう一話更新になります。
32
お気に入りに追加
276
あなたにおすすめの小説

罪なき令嬢 (11話作成済み)
京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。
5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。
5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、
見る者の心を奪う美女だった。
※完結済みです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」

お飾り王妃は愛されたい
神崎葵
恋愛
誰も愛せないはずの男のもとに嫁いだはずなのに、彼は愛を得た。
私とは違う人との間に。
愛されたいと願ったお飾り王妃は自らの人生に終止符を打ち――次の瞬間、嫁ぐ直前で目を覚ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる