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本編
67ー義輝Sideー
しおりを挟む陽斗の運転でとある場所…目的地に到着した。車を降りると、迷う事なく進んでいく。
カビ臭い牢獄のようなこの場所にソレは居る。
ココは番を失い狂った鬼…殺処分待ちの鬼を一時的に収監しておく場所である。
俺はこの一部…一区画をビジネスパートナーである鬼…上層部から特別に貸してもらって、とある人物をココへブチ込んだ。
ちなみにこの場所は俺の管轄外なので、管理者である彼にこの場所の一区画を貸してもらった。という訳だ…簡潔に言えばそうなる。
上層部の者であり、この場所の管理者である彼は、俺の悪友と言う方がしっくりくる…
その悪友を引き連れ薄暗い廊下を奥へと進んで行く。すると暫くして重苦しい扉が現れた…
その重い扉の施錠を外して陽斗を扉の前に残して中へと入ると、特殊なガラスで作られたガラス張りの部屋が現れる。この重苦しい扉や壁を挟んでの特殊な部屋である。
まるで、見せ物にするような部屋だ。『神木』ではない普通の鬼では破れないソレをただの人間が破れるはずがない。
そんな部屋の中に1人、猿轡を噛まされ壁に拘束されている人間の女が居る。
焦点の合っていなかった女の目が俺を視界に入れると、目を大きく見開き、藻掻き、騒ぎ始めた。
俺は傍に控えていた悪友に視線を向けると、頷いてガラス張りの部屋の中へと続く扉の施錠も外した。
悪友と共に中へ入った。
☆
「やぁ、久し振りー…とは言っても…直接逢うのは今日が初めてだよねぇ」
そう言って微笑んでやると、フガフガと興奮している。猿轡が邪魔で喋れないようだ…まぁ、見れば分かるんだけど…
「ゴミの声を聞いてやるほど僕は寛大じゃないんだよね~。分かってくれるかなぁ?」
クスリと笑って首筋を撫でてやると、分かりやすく震え始めた。目には恐怖の色が浮かんでいる。
「ふふ…あの子の恐怖はそれ以上だったんだよ?本当はもう少し魂に恐怖を刻んでやりたかったところだけど…これ以上、ゴミに関わったところでな~んの得にもならないでしょ?」
「っ!!ん"ーん"ー!」
言葉の意味を理解したのか首を振り何かをしきりに訴えてきている。
「まさか…こんなになってまで生にしがみつくの?ある意味、すごいけど…ソレを聞き入れてやるつもりはないよ…当然だよね?ボロボロの息子を無情にも追い出した親失格女なんだから…えぇっと…なんだっけ?…あぁ…そうだ…『ストーカーするようなクズ息子に育てた覚えはない』だったっけ?あぁ、それから…『しかも危害を加えるなんて以ての外!!反省するまで家には入れないわ…精々、自分の行いを悔い改めなさい!』で合ってる?聞き取り調査の証言通りに言ってみたんだけど?」
ゴミを見れば、フーフーと息を荒くして涙を流している。
「自分の行いを悔い改めるのはどっちなんだろうねぇ…悔い改めるのとは少し違うけど…コレなんだけどー…何か知ってる?」
バカにして笑った後、わざとらしくそう言ってとある資料を見やすいように眼前に晒してやる。すると、ゴミは目を見開き固まった。
「あ…その反応をするって事は~知らなかったんだ~?あのアルファの『運命(笑)』の番の親は君の旦那の愛人なんだよ?ちゃ~んとココにDNA鑑定の結果が記載されてるでしょ…見えてますかぁ??そうとも知らずによくやるよねぇ…怖いなぁ…何も調べず、赤の他人の言葉を鵜呑みにして無実の息子を傷つけて、誤った正義を振り翳した結果がー…コレなんだからさぁ…笑っちゃうよねぇ…」
クスクスとバカにしたように笑う…いや、バカにして笑った。
すると…まぁ、言わずもがな…凄く泣いた。
その姿を見ても『汚い女だな』くらいの感情しか湧かなかった。
*
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