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本編
66ー義輝Sideー
しおりを挟む電話を切ると、椅子の背凭れにググッと凭れかかり一息ついて作業に戻ろうとしたが、とある存在を思い出した。
そして、あの2人が処理されたのだから…ならば、あっちも処理してしまおうと思い立つ。
幸い新薬も完成し、代理人も立ててある。その分、こちらには少しだけ余裕があった。
次のプロジェクトまでの間に清算しておこうと、椅子から立ち上がる。
部屋を出てリビングへ行くと、修兵がテレビを見ていた。真剣にテレビを見ている修兵は俺に気づいた様子もない。
少しだけ悪戯心が生まれた…
俺は迷う事なく実行に移す。
背後から近づき噛み跡に指を這わした。直後、奇声を上げて振り返ってくる。顔は真っ赤だ…
色気の無い声とは裏腹に表情は誘っているかのように可愛らしい…
「っ…義輝!こ、声かけろよな!!」
なんて焦ったように声を上げる。ニンマリと笑うと「これだからイケメンは!」とブツブツ言っていた。
修兵にイケメンだと言われて悪い気はしない…俺に落ちてくれるなら、全てを利用するまでだ…
とは言っても…修兵とセックスする為の手段なんて全く選んでないんだけど…
「ふふ、ごめーんね。」
「悪いと思ってねーな…はぁ…そういう奴だよ。義輝は…」
と言って諦めたような表情を浮かべる…
「というか…もう、仕事は終わったのか?」
「ん~、終わってるか終わってないかと問われれば…終わってはいないねぇ…」
「?…じゃあ、急用?」
作業途中に部屋を出て修兵に会いに来るのは、殆ど急用で出かける時くらいだ。まぁ、稀に顔を見て、触れたくなって出て来る時はあるけれど…殆ど無いからな…
「正解。ちょーっと出かけてくるね~」という俺の言葉に少しだけ寂しそうな、不安そうな雰囲気を出すが…それも一瞬で引っ込める。
(全くこちらの気も知らないで…)
ベッドに押し倒して鳴かせたくなってしまうではないか…と溜め息をつきたくなった。
修兵に近づくと、輪郭をなぞるように指の腹を這わせていくとピクリと身体が動いたのが分かった。
顔を赤らめたまま俺を見上げてくる修兵に理性を壊されかけながらも、なんとか持ち堪え、薄く開いた口に容赦なく深いキスをした。
そして、少し後悔する。くぐもった声で喘ぐものだから、折角持ち堪えた理性が壊れそうになった。
修兵の口内を堪能し、口の端から滴り落ちているどちらのものか分からぬ唾液を舐め取ると、身体を離した。
潤んだ瞳で睨みつけてくる修兵に笑いかけると、「バカ…」と小さく呟いて視線を逸らされた。
その煽ってくる態度に本能を刺激されながらも、何事もなかったかのように装い頭を撫でる。
「白蓮と海斗は残して行くから、何かあれば2人を呼ぶんだよ?」
「っ…わ、分かった。」
ほんのり香る発情のフェロモンに知らず知らずの内に口元がつり上がる。
「続きは帰ってきてからね?」と耳元で囁くと、耳を押さえて顔を真っ赤にし、声にならない悲鳴を上げて身体を離した。
「っ…ばかぁ…分かったからっ…さっさと行け!!」
「良い子でお留守してるんだよ?」
「分かったからっ…」
「俺が帰ってくるまでに訪問者が来ても扉を開けたらダメだよ?庇護鬼である2人なら大丈夫だけど…」
「分かってるから!!」
「それからー…」
「だ~か~ら~、分かってるってば!早く行って早く帰ってこいよ!もう!!」
なんて恥ずかしそうに叫ばれた。
これは早急に用事を済ませて帰ってこなければ…と思い、もう一度、今度は触れるだけのキスをして「行ってくるね」と言ってから部屋を出た。
*
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