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本編
42ー義輝Sideー
しおりを挟む………時は少しだけ遡る………
白蓮に後を任せ、修兵に見送られてから、とある場所へと向かった。
ある場所へと近づくにつれて、みっともなく喚き散らす男女の声が聞こえてきた。
俺の合図で海斗と陽斗に取り押さえられ連行されて来た愚鈍な輩…劣等種とその番である頭の悪い女のオメガである。
俺は躊躇う事なくその扉を開く。すると、喚いていた声が止み、拘束され床に転がった不様な姿でこちらに注目している。
海斗と陽斗は俺の前に跪き頭を下げる。
「勝手に僕の所有地に入って好き勝手したバカは君たちの事であってる?」
そう言って微笑んでみせると、女のオメガは分かりやすく頬を赤らめた。
「所有地?一体、何を言ってー…」
「証拠もあるよ?見る?」
劣等種の言葉を遮り、海斗と陽斗に目配せをすると、心得たと言わんばかりに頷いて行動に移した。
陽斗はポータブルプレーヤーを準備して劣等種の元へと近づく。そして、海斗は劣等種を踏み付けると顔を乱暴に掴み上げ液晶を見やすくしている。
液晶の画面に写ったのはあの子にしてきた愚行の数々…とは言っても一部にすぎない。
「ねぇ、コレを見てもー…しらばっくれる気?」
そう言って近くにしゃがみ込んでやると怯んだのか少し身体が揺れた。
「突き出しても良かったんだけどねぇ…僕の領域でいろいろとやってくれたみたいだねぇ…調子に乗りすぎたねぇ。」
俺の威圧フェロモンに怯えたのか完全に震え上がっている情けない劣等種を冷たく見下ろしていると、空気の読めない女のオメガが媚びた声を出してきた。
「あ、あのぉ…貴方は誰なの~」
「あぁ、劣等種である彼の番だから分からないんだねぇ」
そう言って鼻で笑ってやると少しムッとしたような顔をする。コレが修兵の表情ならば可愛く見えるのだが…このゴミの表情を見たところで心が動くわけもない…寧ろ萎える。消したくなる。
「ま、上層のアルファだと思っておいてくれればイイよ。君たちに詳しく教えてやる義理もなければ、そんなムダな事に時間を使う気もないからね。」
肩を竦めながら呆れたように喋っていると、何かが気に障ったらしい劣等種が威勢よく吠えた。
「劣等種…まさか俺の事を言っているのか!?」
「君以外にだーれが居るのさ?」
「俺はアルファで、選ばれた存在なんだよ!」
「ぷっ…くくくっ…あはははは!」
劣等種がそう言い切った直後に海斗が吹いた。劣等種は怪訝そうに海斗を睨みつけるが、陽斗が追い打ちをかける。
「ふっ…わ、笑ったら可哀想だよっ…」
「お前だって笑ってんじゃんっ…あぁ、苦しぃ…お腹痛ぇよ」
「いや、だってさぁ…もうネタじゃん?「選ばれた存在なんだよ!」って…イタすぎワロタ」
「つーか、誰も選んでねーよ。世間は広いんだぞ~恥ずかしいヤツ~」
「それな!しかも、この中で誰が1番強いアルファか分かってないらしい…コレは素でヤバいヤツだな!」
「普通は分かるんだけどな!だから劣等種なんだよ。お前は」
なんて言いながら盛大にバカにしてお腹を抱えて笑っている2人に対して、顔を真っ赤にして憤慨している劣等種。
『これじゃ話が進まんでしょ。早く修兵の元に帰りたいんだよ!俺は!!』という意味を込めてわざとらしく咳払いをすると海斗と陽斗は笑うのを止めてフラフラと定位置に戻ってきたが、目尻には笑いすぎて涙が溜まっていた。
*
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