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本編
09
しおりを挟むあの台詞の事もあり、警戒していたにも関わらず…イケメン…もう、義輝で良いや…
義輝は普通に部屋へと入ってきて普通に俺の診察をして出て行った。そして普通に食事を提供してくる。
さらに風呂にまで入れてもらった…至れり尽くせりのこの状況に絶賛、混乱中である。
あからさまに警戒していたのを不審に思ったのか義輝が俺にどうしたのかと聞いてきたので、「『覚悟して?』って言ってたじゃん」というと呆れたようにこう言ってきた。
「え、ナニか期待してたの?流石に重傷者をどうこうする気はないよ?それに言ったでしょ?『先ずは身体を治すところから』って…何?傷めつけてほしかったの?」
そう言って大袈裟にドン引きしたような仕草をする。
「ち、違うし!そんな趣味、俺にはねーよ!」
「ふふ、冗談だよ。じょーだん。」
まるで掴みどころのないこの義輝の扱いをどうしたら良いのか未だに分からない…
「あぁ、そうだ。元の君は鬼籍に入ったから。今の君はその人のそっくりさんってところかな」
サラっと言うから普通に聞き流しかけたけれど、全く聞き流して良い内容じゃなかった。
「え?俺…死んだの?」
「あぁ、うん。そうだよ。キレイさっぱり縁切りするならコレが1番だと思うんだけど?それに、君は今ー…」
「五十嵐 修兵、だろ。分かってる。俺だっていろいろと考えてるんだ」
「ま、例え鬼籍に入っていなかったとしても…もう、君には会えないけどね。」
そう言ってクスリと笑った。許してもらえるという可能性を潰しておいた方が後悔の度合いが違うんだとか…
「あ…それと…」
「え?まだ何かあるの?」
「今、居る場所だけど…鬼の上層部が住まう居住区に近い場所だから…君が元住んでいた場所からだと飛行機の距離だよ。ま、空港からさらに高速に乗らないとダメだから…実質、会うことはかなり難しいだろうねぇ…」
そう言うと義輝は感慨深そうに頷いている。そもそもいつの間にその距離を移動したのか皆目見当もつかない…
俺の疑問を察してか義輝が口を開いた。
「あーそっか…そうだよねぇ。分からないよねぇ…君、人気のない場所を選んだのかもしれないけど…バッチリ俺の所有地の敷地内で倒れてたからね。それに、目覚めるまでに10日は経っているから君を連れて移動するなんて容易かったよ…」
と言って無造作に立ち上がると、部屋の扉を開く。そして、車椅子を押して入ってきた。
「怪我が完治したらコレを使うと良いよ。廊下とかに傷がつかないようにちゃんと対策はしてあるから、室内だけになるけど乗り回してくれて大丈夫だからね~。ま、外に出ようにも俺と一緒じゃないと出られないけどね…」
そう言うと義輝は意味深な笑みを一瞬だけ浮かべた。
*
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