チューベローズ

スメラギ

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本編

08

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 「僕が準備を整えてるっていうのに君ときたら…」

 そう言って溜息をつく。

 「良い子で待ってるとか言っていたくせに、劣等種なんかに引っかかってるし…」
 「俺はベータだよ…しかも男のベータ…アルファとは絶対に結ばれない運命じゃん…」
 「へぇ…それなのにアレ・・とは付き合えたんだ?俺の事は忘れて?」

 ふーん。へー。そう。と繰り返している目の前の男に逡巡する。

 「……一人称変わってるし…」
 「ふふ、こっちが素なんだよ。『俺』より『僕』の方が優しい感じがして早く気を許してくれるでしょ?だから初対面とかには『僕』の方を使ってるんだよね」

 そう言ってクスリと笑ったが目の奥が全く笑っていない。寧ろ怖い。

 「それで?俺の事をすっかり忘れて他の…しかも劣等種と付き合うなんて良い度胸してるね。あまり心の広い鬼じゃないんだよ…特に俺はね。」

 そう言って笑みまで消してしまった為にさらに恐怖が増す。

 「確かに君は被害者だよ?でもさぁ…正直、俺にはそんな事・・・・どうでも良いんだよね。」

 と言うと俺の顎を乱暴に掴み、上を向かせて無理やり視線を合わせてくる。

 「ふふ、怖い?震えてるよ?この数年…俺は君を迎える準備をしていたの…わかるよね?」
 「…っ」
 「君があーんな顔を俺に見せずに前を向いていたならば、諦めていろいろと・・・・・後押しして今後の人生を見守ってあげようかと思っていたんだけど…」

 そう言うと一度言葉を区切る。そして、キスをされるんじゃないかという距離まで顔を近づけてくると再び口を開き続きの言葉を囁きかけてきた。

 「堕としてあげるよ…覚悟して?」
 「おとす?な、に、言って…っ…」
 「君が悲しむ暇もないくらいに…愛シテアゲルヨ。ふふ…いろいろ・・・・と、ね?ふふ、愉しみだねぇ」

 俺の質問には触れずにそう言って笑った目の前のイケメンが得体の知れないナニかに見えて身体が震えた。
 顔が整っている分さらに怖さが引き立った。

 「でも…先ずは身体を治すところから始めないとだねぇ…今は・・ソレだけを考えていれば良いよ。今は・・、ね…あぁ、それと…劣等種とかの処理・・はこちらでやっておくからね。いろいろ・・・・と好き勝手やってくれた礼はしておかないと…でしょ?」

 そう言うと顎から手を離し先程の態度とは異なる優しい手付きで俺の頭を撫でてから部屋を出て行った。
 解放された俺は身体の力が抜けて、冷や汗が背中を流れ、どっと疲れが押し寄せてきた。

 (これから俺…どうなるんだ?)

 という不安が頭の中を支配した…

 
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