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第一章
王女付きメイドのサラ
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「ティターニア様は最近楽しそうにされていますね。」
王女付きのメイドのサラはティターニアの艶やかな漆黒の髪を梳かしながら、鏡に映るティターニアに向かって微笑む。
ティターニアが忌み嫌われてきた原因である黒髪を優しく慈しむように梳かしていくサラ。
魔女だ、悪憑きだとティターニアを疎み遠巻きにする者が多い中で、サラは数少ないティターニアの理解者だ。
そんなサラにティターニアも心を許している。
「…そうかしら?」
「はい、少し明るくなられたように思います。…最近よくティターニア様のお話しの中に出てくる騎士様のおかげでしょうかね?」
「…っ!そう…かも、しれませんね…。」
からかうようなサラの問いかけに、ティターニアは頬を赤く染めて答えた。
そんなティターニアの様子にサラは「あらまぁ…これは…。」という呟きを漏らしながら嬉しそうにクスクスと笑う。
もうすぐ成人を迎えるティターニアだが、サラは今まで一度もティターニアから色恋の話など聞いたことがなかった。
自分は恋など出来ない、してはいけないと思い込んでいるようにさえ感じたティターニアに訪れた遅い春の兆しに、サラは心から喜んでいた。
王城でのお茶会の日の図書室での一件以降、アロンダイトは度々図書室を訪れティターニアに話しかけてくるようになっていた。
話の内容はたわいもないものばかりであったが、両親か自分に近い使用人としか話すことの無かったティターニアにはそれはとても新鮮で楽しい時間であった。
「今日もいらっしゃると良いですねぇ…騎士様。」
サイドに流れる髪を左右から少しずつすくい、後ろでバレッタで留める。
アンティーク調のバレッタはシンプルなデザインながら、ティターニアの艶やかな漆黒の髪の美しさを引き立てている。
(…前髪が顔を覆っているのが勿体ないわね。ティターニア様はとても美しくていらっしゃるのに…。)
皆ティターニアの黒髪や長い前髪にばかり目がいっているが、ティターニアは人形のような美貌の持ち主だった。
濡羽色の髪に陶器のように白く滑らかな肌…、長いまつ毛に縁取られた左右の色の違う瞳はキラキラと宝石のような輝きを放っている。
それもそのはず、ティターニアの母も父もかなりの美形なのである。その血を受け継ぐティターニアは美形のサラブレッドという訳だ。
しかしティターニアは自身の人と違う容姿にコンプレックスを抱いてしまっている。実際、その容姿が原因でまわりから奇異の目で見られたり、口さがない者たちにいわれのない中傷をされたりしてきているのだ。
昔、それが原因でティターニアが自室に籠って出てこなくなってしまったことがあった。引きこもっている間に、前髪が伸び顔の半分が隠れるようになったことで自室から出れるようになったのだ。
それでもティターニアが行き来するのは図書室などの城内のほんの一部だけだが。
それを知っているサラは先ほどの思いは心に留め、前髪のことには何も触れずにティターニアの身支度を終えた。
「…はい、終わりましたよ!今から図書室でしたね、いってらっしゃいませ。騎士様にお会い出来るよう祈っております!」
茶化すようにそう言って、サラはティターニアを送り出したのだった。
王女付きのメイドのサラはティターニアの艶やかな漆黒の髪を梳かしながら、鏡に映るティターニアに向かって微笑む。
ティターニアが忌み嫌われてきた原因である黒髪を優しく慈しむように梳かしていくサラ。
魔女だ、悪憑きだとティターニアを疎み遠巻きにする者が多い中で、サラは数少ないティターニアの理解者だ。
そんなサラにティターニアも心を許している。
「…そうかしら?」
「はい、少し明るくなられたように思います。…最近よくティターニア様のお話しの中に出てくる騎士様のおかげでしょうかね?」
「…っ!そう…かも、しれませんね…。」
からかうようなサラの問いかけに、ティターニアは頬を赤く染めて答えた。
そんなティターニアの様子にサラは「あらまぁ…これは…。」という呟きを漏らしながら嬉しそうにクスクスと笑う。
もうすぐ成人を迎えるティターニアだが、サラは今まで一度もティターニアから色恋の話など聞いたことがなかった。
自分は恋など出来ない、してはいけないと思い込んでいるようにさえ感じたティターニアに訪れた遅い春の兆しに、サラは心から喜んでいた。
王城でのお茶会の日の図書室での一件以降、アロンダイトは度々図書室を訪れティターニアに話しかけてくるようになっていた。
話の内容はたわいもないものばかりであったが、両親か自分に近い使用人としか話すことの無かったティターニアにはそれはとても新鮮で楽しい時間であった。
「今日もいらっしゃると良いですねぇ…騎士様。」
サイドに流れる髪を左右から少しずつすくい、後ろでバレッタで留める。
アンティーク調のバレッタはシンプルなデザインながら、ティターニアの艶やかな漆黒の髪の美しさを引き立てている。
(…前髪が顔を覆っているのが勿体ないわね。ティターニア様はとても美しくていらっしゃるのに…。)
皆ティターニアの黒髪や長い前髪にばかり目がいっているが、ティターニアは人形のような美貌の持ち主だった。
濡羽色の髪に陶器のように白く滑らかな肌…、長いまつ毛に縁取られた左右の色の違う瞳はキラキラと宝石のような輝きを放っている。
それもそのはず、ティターニアの母も父もかなりの美形なのである。その血を受け継ぐティターニアは美形のサラブレッドという訳だ。
しかしティターニアは自身の人と違う容姿にコンプレックスを抱いてしまっている。実際、その容姿が原因でまわりから奇異の目で見られたり、口さがない者たちにいわれのない中傷をされたりしてきているのだ。
昔、それが原因でティターニアが自室に籠って出てこなくなってしまったことがあった。引きこもっている間に、前髪が伸び顔の半分が隠れるようになったことで自室から出れるようになったのだ。
それでもティターニアが行き来するのは図書室などの城内のほんの一部だけだが。
それを知っているサラは先ほどの思いは心に留め、前髪のことには何も触れずにティターニアの身支度を終えた。
「…はい、終わりましたよ!今から図書室でしたね、いってらっしゃいませ。騎士様にお会い出来るよう祈っております!」
茶化すようにそう言って、サラはティターニアを送り出したのだった。
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